
デジタルプラットフォームの法律問題と実務
- 編・著者渡邊涼介・梅本大祐・今村敏 編著
- 判型A5判
- ページ数456頁
- 税込価格6,270円(本体価格:5,700円)
- 発行年月2021年08月
- ISBN978-4-417-01821-6
- 在庫
有り
■解説
デジタル・プラットフォーム(PF)に関する最新法制解説書!!
●「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」を
はじめ,消費者法,競争法,個人情報保護法などPFに関わる法律とそのポイン
ト,紛争対策の実務について具体的に解説。
●PF事業者と取引企業・消費者の間の法律問題・トラブル対策の実務も収録。
はしがき
Amazon.co.jpや楽天市場で買い物をする,App Storeからアプリケーションをダ
ウンロードする,Google検索をする,LINE・Facebookで友達とやりとりをする,メ
ルカリで買い物をするというように,デジタル・プラットフォーム(PF)の利用は
,多くの人の日常生活に組み込まれています。それぞれの利用時に,PFの利用規約
に同意していることになりますが,それぞれの規約の内容について,完全に理解し
ているという人は極めて稀です。
企業が物品を販売する際も,Amazon.co.jpや楽天市場といったオンラインモール
を利用することが一般的であり,自社のホームページでしか販売をしていないとい
う事業者は例外的になっています。企業がオンラインモールを利用する場合も,Am
azon.co.jpや楽天市場の利用規約に従うことが一般的であり,これらのサービスの
運営事業者との間で,何らかの特約を締結するということは例外的です。
このように,PFを運営するデジタル・プラットフォーム事業者(PF事業者)は,
自らが定める利用規約を通じて,個人や企業に対して,大きな影響力を及ぼしてい
ます。EUでは,影響力が大きすぎることが認識され,2010年代後半から,具体的な
対応が進められてきました。
日本でも,近年になり,PF事業者への対応について,政府の研究会を中心に検討
がなされ,立法にも反映されています。①「特定デジタルプラットフォームの透明
性及び公正性の向上に関する法律」(取引透明化法)が成立して,2021年2月から
施行され,②消費者関係においても同年4月に「取引デジタルプラットフォームを
利用する消費者の利益の保護に関する法律」が成立したほか,③競争法関係では,
2019年12月に「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者
との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」が公表され,
④2020年5月には,外国法人等に対する法執行の実効性強化を含む電気通信事業法
の一部を改正する法律が成立するなど,個人情報・プライバシー保護,インターネ
ット上の情報の取扱いなどについても,検討が進められています。
さらに近時では,国家も,デジタル通貨の発行などにより,PF事業者に自らの役
割を奪われることに危機感を持っているように見受けられます。
本書では,このような状況を踏まえ,①PF事業者について(総論),②PFに関係
する法律,③PFと消費者関係,④PFと取引透明化法,⑤PFと競争法,⑥PFと個人情
報・プライバシー保護という観点から,PF事業者及びPFとの関係で問題となるポイ
ントを整理し,分析を試みています。
また,近年検討が非常に進んでいる上記の各問題について,最新の情報に基づき
,検討に必要となるPF事業者についての説明や,PF事業者に関連する規律・約款を
含めた説明をすることで,PF事業者の法律問題に関して網羅的に解説することとし
ています。さらに,PF事業者と取引をしている企業,消費者からの視点も取り入れ
ています。
その上で,本書では,紛争事例や法的課題も取り上げ,設問形式で具体的に記述
しています。
さらに,執筆者は執筆分野の専門家として執筆内容に精通しているとともに,全
員任期付公務員を経験しており,自らが関わった事案を踏まえ,政府の動きを的確
に把握して執筆しています。
なお,本書に記載されているうち,意見にあたるものは,すべて執筆者の私見で
あることを念のため付言しておきます。
PFについては,人々や企業を媒介する場を提供するという,社会インフラとして
評価される重要な役割を果たす反面,その運営主体であるPF事業者があまりにも強
大になっていることから弊害も大きくなってきています。日々,諸外国を含め,PF
事業者に関する多くの問題が報道されています。
私自身は,GAFAと総称される4つの企業が日本を含めた国・地域でグローバルに
事業を展開する反面,現時点で日本企業がグローバルに展開することは限定的と考
えています。本書が日本企業の発展の一助となれば幸甚です。
最後となりますが,本書の出版にあたり,コロナ禍にもかかわらず,企画段階か
ら積極的に各執筆者をサポートいただくなど献身的にご尽力いただいた青林書院編
集部の森敦氏に,厚く御礼申し上げます。
令和3年6月
編者代表 渡邊 涼介
編集・執筆者
渡邊 涼介:弁護士 光和総合法律事務所
梅本 大祐:弁護士 ブレークモア法律事務所
今村 敏:弁護士 池田・染谷法律事務所
執筆者
石田 健:弁護士 アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
岡本 健太:弁護士 光和総合法律事務所
■書籍内容
第1章 PF事業者について
《第1節 概 説》
PF事業者について
《第2節 PF事業者に関する法律関係》
設問1 オンラインモールに関する法律関係
設問2 オンラインフリーマーケット,インターネットオークションに関する
法律関係
設問3 アプリマーケットに関する法律関係
設問4 飲食店ポータルサイトに関する法律関係
設問5 シェアリングエコノミーPFに関する法律関係
設問6 電子決済サービスに関する法律関係
設問7 検索サービス・SNSにおける広告サービスに関する法律関係
第2章 PF事業者とユーザーとの間の規律・約款
《第1節 概 説》
PFに関係する法律
《第2節 契約締結及び代金決済等に関する規律》
設問8 PFにおける契約方式
設問9 PFにおける代金決済
《第3節 個別法の規制に対応する契約条項》
設問10 PF事業者の責任限定
設問11 PFにおける消費者保護関連法規
設問12 PFと古物営業法
第3章 場の提供者としてのPF事業者の法的責任
《第1節 取引型(マッチング型)PFにおけるPF事業者の法的責任》
PF事業者・消費者間における法律関係
設問13 モール運営者に対する責任追及(名板貸責任等)
設問14 PF事業者・消費者間の契約に消費者契約法が適用される場合
設問15 ユーザーの行為によるトラブルが生じた場合のPF事業者の責任
《第2節 非取引型(非マッチング型)PFにおけるPF事業者の法的責任》
プロバイダ責任制限法
設問16 削除請求
設問17 発信者情報開示請求
第4章 PFとデジタルプラットフォーム取引透明化法
《第1節 概 説》
特定デジタルプラットフォームの透明性及び公平性の向上に関する法律の解説
《第2節 総 論》
設問18 取引透明化法とは
設問19 デジタルプラットフォームの範囲
設問20 特定デジタルプラットフォームの範囲
設問21 特定デジタルプラットフォーム提供者の指定・解除
《第3節 特定デジタルプラットフォーム提供者の負う義務》
設問22 特定デジタルプラットフォーム提供者が負う義務
設問23 提供条件の開示義務(開示事項)
設問24 開示義務が履行されない場合
設問25 手続・体制の整備義務
設問26 モニタリング・レビュー
《第4節 PF規制の今後の動向》
設問27 デジタル広告市場への取引透明化法の適用について
第5章 PF事業者と独占禁止法
《第1節 概 説》
独占禁止法の概要
《第2節 独占禁止法上問題となるプラットフォーマーの行為》
設問28 PF事業者の行為に関する独占禁止法の基本的な考え方
設問29 PF事業者と優越的地位の濫用①(概説)
設問30 PF事業者と優越的地位の濫用②(事例)
設問31 PF事業者と優越的地位の濫用③(消費者優越)
設問32 PF事業者と違法な排除行為①(概説)
設問33 PF事業者と違法な排除行為②(事例)
設問34 PF事業者と違法な拘束行為①(概説)
設問35 PF事業者と違法な拘束行為②(事例)
《第3節 PF事業者間の企業結合・提携》
設問36 PF事業者と企業結合
《第4節 有事の際の対応》
設問37 公正取引委員会の調査・処分
設問38 PF事業者と審査対応(確約手続)
第6章 データ利活用と利用者情報の保護
《第1節 個人情報・プライバシー情報等の保護(概要)》
データ利活用と利用者情報の保護⑴
《第2節 個人情報保護法》
設問39 「個人情報」とは(委託先の監督等)
設問40 利用目的の特定・変更(事業譲渡等)
設問41 漏えい時の対応
設問42 プライバシーポリシー(利用規約等)
設問43 個人関連情報とは
《第3節 電気通信事業法》
データ利活用と利用者情報の保護⑵
設問44 電気通信事業法の名宛人
設問45 外国法人等に対する規律
設問46 「電気通信事業者の取扱中」とは
設問47 「通信の秘密」①――保護の範囲
設問48 「通信の秘密」②――侵害について
設問49 「通信の秘密」③――同意について
設問50 「通信の秘密」④――正当化根拠について
コラム
コラム[1] PF事業者と国家
コラム[2] 日本におけるPF事業者に対する執行
コラム[3] PFサービスの開発方式(アジャイル開発)
コラム[4] 法規制に対応した決済スキームの変更
コラム[5] 非取引型PFの違法・有害情報対応
コラム[6] 令和2年改正個人情報保護法の訂正等請求権と
最高裁平成29年1月31日決定の関係
コラム[7] 発信者情報開示と通信の秘密の関係
コラム[8] 「通信の秘密」と「取引デジタルプラットフォームを利用する
消費者の利益の保護に関する法律案」の関係
コラム[9] 階層構造化している発信者情報開示
コラム[10] EUにおけるPF規制の状況
コラム[11] 法執行に向けた行政側の体制整備
コラム[12] フェイクニュース
コラム[13] 確約手続と競争政策
事項索引/判例索引
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