プロバイダ責任制限法と誹謗中傷の法律相談

プロバイダ責任制限法と誹謗中傷の法律相談

最新青林法律相談

  • 編・著者中澤 佑一 著
  • 判型A5判
  • ページ数342頁
  • 税込価格4,950円(本体価格:4,500円)
  • 発行年月2023年12月
  • ISBN978-4-417-01868-1
  • 在庫

    有り

■解説

■社会問題化するネットの誹謗中傷問題に適切・迅速に対応するためのQ&A62問
■新たな裁判手続が増設される等大改正されたプロバイダ責任制限法に対応
■事件の全体像を適切に把握し,プロバイダ責任制限法による発信者情報開示手続,
 記事の削除請求を迅速に行うための方策を明示
■ネットの権利侵害対応に取り組む弁護士必携


はしがき
 インターネットは,日常生活の隅々まで広く普及し,我々の生活にはなくて
はならないものになりました。インターネットのおかげで,誰もが自由に世界
中の情報にアクセスでき,また全世界に向けて情報を発信することもできるよ
うになりました。
 インターネットの利用が広がるにつれ,情報のやり取りを原因とする法的紛
争も増加しています。中でも誹謗中傷については,社会問題ともなっていま
す。
 また,誹謗中傷と一口に言っても,その単語が意味するところは様々です。
情報の発信力や伝播力が高まった結果,自分と違う意見や,自分にとって不快
な表現に触れる機会も増えており,自分に対する不快な表現や批判的意見を誹
謗中傷だと受け取ってしまう例も珍しくありません。インターネット上の誹謗
中傷が社会問題として認知されるにつれ,逆に正当な発言に対して誹謗中傷だ
との指摘がなされる例も増えています。
 裁判所が公表している統計などでも事件数は近年急増しており,弁護士に対
する法律相談として持ち込まれる例も年々増加しています。何かしらの機会に
この種の相談に触れたことのある弁護士の方々も多いのではないでしょうか。
インターネットは非常に自由なメディアです。インターネット全体の管理者も
存在しません。この自由に伴う当然の結果として,誹謗中傷の問題をはじめと
する多くの紛争や権利侵害が発生しています。自由を維持するためには,仮に
被害が発生してしまった時には,適切な事後救済が機能することが必要です。
司法は被害が発生した場合の事後救済の側面からインターネット空間の安全性
と自由を支える存在だといえるでしょう。
 私は10年ほど前に出版した書籍で,今はまだ積極的に手掛けているのは一部
の弁護士のみだが,10年後には多くの弁護士が手掛ける基礎的な分野になるは
ずでしょうと述べました。10年の間に,プロバイダ責任制限法の解説書籍や,
裁判例を収集した書籍なども多数出版され,各地の弁護士会で研修も多数行わ
れるなど,知識を習得するための環境は整いました。その結果か,ネット誹謗
中傷に対応した弁護士保険商品も開発されるなど,10年前とは比べ物にならな
いくらいに積極的に取り組む弁護士は増えてきました。
 しかし,インターネット空間で発生する法的紛争の対処には,インターネッ
トに対する知識も少しだけ必要になることや,独特な作法のようなものもあ
り,弁護士にとっては比較的とっつきにくい分野であることは依然として変わ
っていません。加えて,取り組む弁護士が増えた結果として,裁判例などが積
み重なり分野としての専門性も高まり,把握すべき基礎知識も増えました。ま
た,何より2022年には,旧法から大幅に改正され,新たな裁判手続まで創設す
るプロバイダ責任制限法が施行され,実務上の検討枠組みが大きく変わった部
分があり,専門家として求められるハードルは高まっています。
 体系的な知識として全体像を把握したうえで,具体的な事件や個別の論点を
把握するのが望ましいのは当然ですが,多くの分野の知識を習得しなければ
ならない弁護士にとってすべての分野でこれを行うのは不可能です。そこで本
書では,とりあえず目の前の事案を何とか解決するためのきっかけとして,法
律相談でおおよその見通しが立てられるように,具体的な状況に焦点を当て
たQ&A 方式にて,必要となる法律知識や実務的なポイントを解説いたしまし
た。そのため,頭から通読することなく関連しそうな項目だけを読んでいただ
いても,前提知識を含めた必要知識が把握できるように意識しています。ま
た,法律の体系や手続の流れを解説する書籍では,分かりやすさの観点からそ
ぎ落とさざるを得ない論点や項目があります。本書ではQ&A 方式ということ
を生かし,最新実務で問題となり得る個別の論点についても取り上げていま
す。
 インターネット上での誹謗中傷の問題は,プロバイダ責任制限法による発信
者情報開示手続や,記事削除のための削除請求などが必要であり,全体を把握
し適切に解決することができるのは弁護士にしかできない仕事です。弁護士以
外の対策業者による非弁行為も未だ存在していますが,この分野に精通した弁
護士が少なく,需要に応えきれてないことの表れともいえます。
 この分野に取り組む弁護士の数がより一層増えるよう期待して本書を出版い
たします。
  
                       令和5年11月 中澤 佑一


執筆者紹介
中澤 佑一(なかざわ ゆういち)
弁護士法人戸田総合法律事務所代表/弁護士
  
〔経歴〕
埼玉弁護士会所属
2006年 東京学芸大学環境教育課程文化財科学専攻 卒業
2009年 上智大学大学院法学研究科法曹養成専攻 修了
2011年 戸田総合法律事務所設立
日弁連や各地の弁護士会でネット上の権利侵害への対処法に関する研修講義を多数実施
  
〔主な著書〕
2023年5月『令和3年改正法対応 発信者情報開示命令活用マニュアル』(中央経済社)
2022年11月『最新事例でみる 発信者情報開示の可否判断』(新日本法規出版,共著)
2022年3月『 インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル〔第4版〕』
      (中央経済社)
2020年12月『 ケース・スタディ ネット権利侵害対応の実務―発信者情報開示請求と削
       除請求―〔改訂版〕』(新日本法規出版,共著)

■書籍内容

第 1章 総  論
Q 1 ■ インターネット上で誹謗中傷を受けた場合の対応策
 インターネット上で誹謗中傷を受けてしまいました。発言者は匿名で誰なのかはわ
かりません。被害の回復と今後の再発防止のためにできること,すべきことを教えて
ください。
Q 2 ■ 匿名の発信者が特定できる仕組み
 インターネット上の匿名の投稿について,なぜ発信者の身元がわかるのですか。わ
からない場合もあるのでしょうか。
Q 3 ■ 権利侵害の証拠化
 インターネット上で権利侵害を受けたとき,法的手続をとるためにはどのような形
で証拠を残せばよいでしょうか。また既に削除されてしまっているページの内容を確
認する方法はありますか。
Q 4 ■ 請求の相手方の調査
 インターネット上で誹謗中傷の被害を受けていますが,記事が掲載されているウェ
ブサイトは初めて見るサイトであり,誰が管理しているサイトなのかわかりません。
記事を削除するためにサイト管理者に連絡をしたいのですが,管理者をどのように調
べればよいのでしょうか。

第 2章 発信者情報開示請目求
Q 5 ■ プロバイダ責任制限法の基本概念
 プロバイダ責任制限法が定める発信者情報開示制度について,制度を理解するため
の基本的な概念について教えてください。
Q 6 ■ 一般発信者情報開示の要件
 一般発信者情報の開示請求が認められるためには,どのような要件を備える必要が
ありますか。
Q 7 ■ 特定発信者情報の開示請求権
 特定発信者情報の開示請求が認められるための,法律上の要件について教えてくだ
さい。
Q 8 ■ 関連電気通信役務提供者に対する開示請求権
 関連電気通信役務提供者に対する発信者開示請求が認められるための,法律上の要
件について教えてください。
Q 9 ■ 侵害関連通信の範囲
 発信者情報開示請求の対象となる侵害関連通信が定義されたことで,旧法下のよう
な一定期間になされた多数のログイン記録を開示してもらうことは不可能になってし
まったのでしょうか。
Q10■ 発信者特定までの手続の流れ1【掲示板タイプ】
 匿名掲示板上で名誉毀損などの権利侵害の被害を受けた場合に,発信者情報開示請
求権を駆使して,実際に匿名の発信者を特定するまでの手続の流れを教えてくださ
い。
Q11■ 発信者特定までの手続の流れ2【SNS タイプ】
 SNS で名誉毀損などの権利侵害の被害を受けた場合に,発信者情報開示請求権を
駆使して,実際に匿名の発信者を特定するまでの手続の流れを教えてください。
Q12■ 発信者特定までの手続の流れ3【サーバタイプ】
 大手企業が運営するプラットフォームのドメインではなく,独自ドメインを利用し
て運営されているウェブサイト上に,自分の顔写真や個人情報が掲載されてしまいま
した。サイト上に記載されている運営者情報を見ても,サイト運営者のハンドルネー
ムが記載されているだけでどこの誰かはわかりません。顔写真と個人情報を掲載して
いる記事を作成したと思われる運営者を調べることはできますか。
Q13■ 裁判管轄
 ウェブサイト上で権利侵害の被害を受けました。記事の削除と発信者情報の開示を
求めるために違反報告フォームから連絡しても対応がなされません。もはや裁判をす
るしかない状況ですが,どこの裁判所に提起することになるのでしょうか。サイトの
運営者が外国法人の場合でも日本の裁判所で裁判は可能なのでしょうか。
 また,ウェブサイト管理者に対する発信者情報開示請求に引き続き,アクセスプロ
バイダ(AP)に対する発信者情報開示請求を行う場合の管轄裁判所はどこになるの
でしょうか。
Q14■ 発信者情報開示命令
 現行プロバイダ責任制限法で新たに創設された「発信者情報開示命令」「提供命
令」「消去禁止命令」とはどのような制度なのでしょうか。従来からある手続とどの
ような点が違うのでしょうか。
Q15■ 手続の比較
 発信者情報開示請求を行う場合,どのような手続が利用できるのでしょうか。また
手続を選択する際の考え方を教えてください。
Q16■ 特定不能
 コンテンツプロバイダ(CP)に対し,名誉権の侵害を理由に発信者情報開示請求
を行ったところ,投稿に用いられたIP アドレスが開示されました。引き続きアクセ
スプロバイダ(AP)に対して発信者情報開示請求を行ったのですが,発信者を特定
することができないと言われてしまいました。これはどのような状況なのでしょう
か。発信者を特定する方法はないのでしょうか。
Q17■ 秘匿制度の活用
 私は本名を公開せずにインターネット上で言論活動をしています。先日,私がネッ
ト番組に出演した際に述べた意見に絡み,多数の匿名の第三者から「死ね」「殺す」
といった誹謗中傷を受けています。発信者の特定をしたいのですが,私の本名や住所
が相手にも知られてしまうとさらなる被害を受ける可能性もあり躊躇しています。本
名や住所を相手に知られずに発信者情報開示請求や損害賠償請求は可能でしょうか。
Q18■ 電話番号を利用した発信者特定
 IP アドレスの開示請求をするのではなく,電話番号や電子メールアドレスから発
信者を特定する方式があると聞きました。具体的にはどのような場合に可能なのでし
ょうか。また,この方式で発信者を特定する場合の手順を教えてください。
Q19■ 開示後の調査
 インターネット上に投稿された名誉毀損記事について発信者情報開示請求を行い,
プロバイダから投稿に用いられたインターネット通信回線の契約名義が開示されまし
た。ところが,開示された名義は法人となっており発信者は依然として不明な状態で
す。この先の対応はどのように進めていけばよいでしょうか。
Q20■ 請求を受けたコンテンツプロバイダ(CP)の対応
 弊社で運営しているクチコミサイトに投稿されたクチコミに関して,権利を侵害さ
れたと主張する方から,発信者情報の開示請求がありました。どのように対応すれば
よいでしょうか。
Q21■ 請求を受けたアクセスプロバイダ(AP)の対応
 発信者情報開示請求を受けたアクセスプロバイダ(AP)としては,どのような対
応が必要でしょうか。
Q22■ 発信者の意見聴取
 先日,あるウェブサイトに他人を批判する内容の投稿を行いました。批判された相
手は気分を害したようで,発信者情報開示請求をして損害賠償請求をするといってい
ます。私としては,権利を侵害する違法な投稿だとは思ってはおらずトラブルに巻き
込まれるのも避けたいので発信者情報を開示されたくありません。発信者情報開示の
手続に発信者は関与することはできるのでしょうか。
Q23■ プロバイダの開示義務違反
 電子掲示板に私に対して「きちがい」という中傷が投稿されました。発信者情報開
示請求を掲示板の管理者に対して行ったところ,発信者情報として投稿に用いられた
IP アドレスとタイムスタンプが開示されました。引き続きIP アドレスを管理するア
クセスプロバイダ(AP)に対して発信者情報開示請求を行ったのですが,権利を侵
害していることが明白とはいえないと開示を拒否されています。一見して権利を侵害
していることはAP にもわかるはずなのに,開示を拒否するのは不当ではないでしょ
うか。プロバイダに対する損害賠償請求をしたいです。
Q24■ 改正法令の適用関係
 プロバイダ責任制限法や総務省令が改正された場合,改正法施行前に発信された権
利侵害記事に対して,改正後の法令に基づく発信者情報開示請求を行うことは可能で
しょうか。それとも法令の遡及適用になってしまい許されないのでしょうか。
Q25■ 開示の強制執行
 誹謗中傷記事について発信者情報開示を命じる仮処分命令が発令されました。しか
し,債務者はなかなか情報開示をしてきません。アクセスログの保存期間も限られて
いるため,早期に情報開示を受ける必要があるのですが,開示義務を早期に履行させ
るためにはどのような手続をとればよいでしょうか。また,仮処分ではなく,発信者
情報開示命令が発令されている場合,違いはありますか。
Q26■ ディスカバリーを利用した情報開示
 アメリカ合衆国の企業が運営するウェブサイトに,当社に対する誹謗中傷が多数投
稿されています。アメリカ企業に対しては,日本の発信者情報開示制度ではなく,ア
メリカ合衆国の情報開示制度を利用した情報開示請求も可能と聞きました。日本の制
度との違いなどを教えてください。

第 3章 削除請求
Q27■ 削除請求の要件
 インターネット上で誹謗中傷を受けた場合,その誹謗中傷記事の削除は可能でしょ
うか。どのような場合に認められるのでしょうか。
Q28■ 検索エンジンに対する削除請求
 過去に事件を起こしてしまい,実名報道もされたため,インターネット上で自分の
名前で検索をすると事件関係のウェブページが多数見つかります。私の名前で検索し
たときに,事件関係のウェブページが検索されないように検索エンジンに請求するこ
とはできないのでしょうか。
Q29■ 削除の範囲
 ある会社に対する批判を発信することを目的とするブログがあります。ブログ記事
の中には,明らかに事実に反して名誉を毀損するようなものもありますが,概ね事実
に沿っており違法とはいいがたい記事もあります。このような場合,ブログ全体を削
除することはできるのでしょうか。
Q30■ キャッシュの削除
 電子掲示板に開設されたスレッドに名誉を毀損する投稿がなされたため,弁護士に
削除請求を依頼しました。その結果,対象の投稿が削除されたと依頼した弁護士から
報告があったのですが,こちらで見る限りはまだ削除されていないようです。これは
どういうことなのでしょうか。
Q31■ 削除の手続
 インターネット上に名誉を毀損する記事が公開されているため,この記事を削除し
たいと考えています。どのような手続で行えばよいでしょうか。
Q32■ 削除仮処分の審理
 インターネット上に存在する誹謗中傷記事を削除するために削除仮処分を行う場合
に,主張すべき事項や手続の流れについて教えてください。
Q33■ 自分の投稿の削除
 先日,電子掲示板に知人の悪口を投稿してしまいました。今は反省しており,でき
れば本人が気がつく前に削除したいのですが,どのようにしたらよいでしょうか。
Q34■ ウェブサイト管理者の免責
 インターネット上の電子掲示板に,私に対する名誉毀損発言が大量に書き込まれて
います。何度か削除依頼をしているのですが,掲示板運営者は削除をしてくれませ
ん。掲示板運営者に対して損害賠償請求をすることはできないでしょうか。
Q35■ 削除の強制執行
 誹謗中傷記事について,記事削除の仮処分命令を申し立てたところ,削除仮処分命
令が発令されました。しかし,仮処分の債務者は,記事の公開をいまだ継続していま
す。強制的に削除させるためにはどのような手続をとればよいでしょうか。
Q36■ 削除仮処分の担保回収
 クチコミサイトに投稿されたクチコミの削除と発信者の特定のために,サイト管理
者に対する仮処分を行いました。仮処分の発令のために,保証金を供託したのです
が,この供託金は回収することができるのでしょうか。

第 4 章 権利侵害
Q37■ ネット上で問題となる権利
 インターネット上で問題となる権利侵害について,代表的なものを教えてくださ
い。また,発信者情報開示請求,削除請求,損害賠償請求の場面で主張可能な権利に
違いはありますか。
Q38■ 同定可能性
 実名は書かれていないのですが,私に対する悪口が多数インターネット上でなされ
ています。実名が書かれていない場合には,権利侵害は認められないのでしょうか。
 また,本名ではなく源氏名や芸名を名指しして名誉毀損表現がなされた場合,名誉
毀損は成立するのでしょうか。SNS で利用しているハンドルネームに対する表現の
場合はどうでしょうか。
Q39■ 名誉毀損の判断基準
 インターネット上で誹謗中傷を受けました。言われた側としては非常に嫌で私の社
会的信用を傷つけられたと感じるのですが,裁判において名誉権の侵害になるか否か
はどのように判断されているのでしょうか。
Q40■ 事実摘示型と意見論評型
 社会的評価を低下させる事実を摘示した場合と,社会的評価を低下させる意見を表
明した場合の名誉毀損の成否について,どのような違いがありますか。
Q41■ 真実性の抗弁・相当性の抗弁
 ある団体の不祥事を告発する記事をブログに掲載したところ,その団体から名誉毀
損であるとして損害賠償請求訴訟を提起されてしまいました。しかし,私がブログで
公開した内容はすべて真実です。このように真実を記載した場合でも損害賠償が認め
られてしまうのでしょうか。
Q42■ 謝罪広告
 私の名誉を毀損する記事を公開した相手に対して,記事の内容が間違っていたこと
を認める謝罪文の掲載を求めたいのですが,謝罪広告の請求はどのような場合に認め
られるのでしょうか。
Q43■ 名誉感情の侵害
 インターネット上で私に対して「バカ」「ババア」「アホ」「クズ」「カブトガニの裏
側みたいな顔」「ゴキブリ」などという書込みがなされています。このような書込み
は権利侵害にならないのでしょうか。
Q44■ プライバシー権侵害の判断基準
 インターネット上で誰でも閲覧できる電子掲示板に,何者かが私の氏名と住所,電
話番号を公開しました。それ以降,いたずら電話などの嫌がらせがあり困っていま
す。被害者としてどのような対応がとれるのでしょうか。また公開者はどのような法
的責任を負うのでしょうか。
Q45■ 前科情報の削除と忘れられる権利
 10年以上前に傷害事件を起こしてしまい,容疑者として私の氏名が実名報道されま
した。執行猶予付きの有罪判決となりましたが,事件後反省し問題を起こさず執行猶
予期間を満了しています。最近,転職活動をしているのですが,私の名前で検索をす
るとまだ事件に関する記事が多数表示される状況で,そのせいか転職活動もうまくい
きません。事件に関する記事を削除することはできないでしょうか。
Q46■ 死者に関する情報
 昨年亡くなった私の子どもの社会的評価を著しく低下させる誹謗中傷の記事やプラ
イバシーに関わる事実を悪趣味に書き立てる記事がインターネット上に投稿されてい
るのを発見しました。記事の削除や発信者情報開示請求は可能でしょうか。

第 5章 損害賠償請求
Q47■ 慰謝料の金額
 インターネット上で名誉毀損やプライバシー侵害,名誉感情侵害を受けた場合,加
害者に対してどの程度の慰謝料が請求できるのでしょうか。慰謝料額の算定にはどの
ような事情が影響するのでしょうか。
Q48■ 発信者情報開示や削除に要した弁護士費用の請求
 匿名の誹謗中傷に対して,発信者情報開示請求を行い発信者の特定に成功しまし
た。この発信者情報開示と記事の削除のために弁護士に依頼することになり,それな
りの弁護士費用を負担しました。これは発信者が誹謗中傷をしなければ負担する必要
がなかった費用ですので,発信者に対して請求したいのですが可能でしょうか。
Q49■ ネット誹謗中傷の時効
 7年ほど前,仲の悪い同業者が実名で公開しているブログに,事実誤認に基づくひ
どい悪口の記事が公開されました。その記事が公開された直後に直接事実誤認を指摘
して抗議をしたのですが,記事を削除することもなく,さらには私が抗議したことを
非難する記事を投稿するなどし始めたため,もう相手にしないことにしました。それ
以後,しばしば私の悪口がブログに投稿されてはいたようなのですが,最近になりだ
んだんとエスカレートしている状況です。このままではよくないと思い,昔の記事も
含めて名誉毀損で損害賠償請求をしたいのですが,もう古い記事に関しては時効にな
ってしまっているのでしょうか。

第 6章 刑事事件
Q50■ ネット誹謗中傷と刑事罰
 インターネット上で誹謗中傷の被害を受けています。これらは犯罪にならないので
しょうか。ネット誹謗中傷において問題となる犯罪類型について教えてください。
Q51■ 刑事告訴
 インターネット上で私の名誉を毀損する事実無根の記事が大量に掲載されたブログ
があります。悪質であり刑事処罰を求めたいのですがどのように対処したらよいでし
ょうか。

第 7章 個別の論点
Q52■ なりすましの被害
 SNS 上で,私になりすまして情報発信を行っているアカウントがあります。この
ような行為に違法性はないのでしょうか。また,なりすましアカウントを削除するこ
と,なりすましをしている者に対して損害賠償請求をすることは可能でしょうか。
Q53■ クチコミサイト
 クチコミサイトに多数のクチコミが投稿されています。肯定的な評価をしてくれる
クチコミが中心なのですが,なかには事実に反して社会的評価を低下させるようなク
チコミや,単なる個人的な不満を書き立てるようなものもあります。クチコミサイト
の運営者に対して,悪いクチコミについて削除請求をしたところ,賛否両論の意見が
自由に交換されるのがクチコミサイトの価値であり,悪いクチコミを受けたとしても
それは受忍限度の範囲だとして,削除を拒否されています。削除することはできるの
でしょうか。
Q54■ 掲載の拒否
 飲食店を経営しています。最近,クチコミサイトや地図サイトに勝手に当店が掲載
されており,匿名のクチコミも多数なされています。明らかに事実に反するクチコミ
についてはサイト運営者に対して削除依頼等もしているのですが,そもそも当店とし
ては掲載してほしいと頼んだわけでもなく,勝手に掲載しておいて,こちらに削除依
頼等の手間が押しつけられていることに不満があります。クチコミサイトへの掲載自
体をやめさせることはできないのでしょうか。
Q55■ リンクと権利侵害
 事実無根の記載をして私の名誉を毀損しているブログ記事があります。この記事に
ついては,それほど目立っていなかったためこれまで気にしていなかったのですが,
何者かがこのブログ記事を広めようとしているのか,SNS や掲示板にこのブログ記
事へのリンクテキストやブログ記事のURL を多数書き込むようになりました。ブロ
グ記事は削除請求をする予定ですが,これに加えて掲示板等に掲載されたブログ記事
へのリンクやURL が含まれる投稿記事について,削除や投稿者の発信者情報開示は
可能でしょうか。
Q56■ リポスト(リツイート)・いいね
 X(旧Twitter)上で誹謗中傷の被害を受けました。私に対する悪口の投稿が多数
リポストされ拡散されています。また,悪口投稿に対して多くの「いいね」がついて
しまっています。もともとの投稿を行っただけではなく,リポストや「いいね」をし
たアカウントの使用者に対しても損害賠償請求をしたいのですが可能でしょうか。
Q57■ 批判と著作権侵害
 X(旧Twitter)上で私が過去に投稿したポストのスクリーンショットを掲載し
ながら,私を非難する人物がいます。この私のポストは既に削除しており,X(旧
Twitter)の正規の機能であるリポストであれば見られなくなるはずなのですが,そ
の方法を用いずにこのような無断で作成したスクリーンショットを引用する行為は著
作権侵害ではないでしょうか。
 また,著作権侵害を主張して批判する相手を訴えたところ,今度は裁判所から送達
された訴状を裁判が始まる前にインターネット上に公開されました。これも著作権侵
害になるのではないでしょうか。
Q58■ VTuber に対する誹謗中傷
 私は素顔や名前を公開せずに,「海」という名前のキャラクターのアバターを使用
してYouTube に動画を投稿するバーチャルユーチューバー(VTuber)として活動
しています。「海」のアバターは外見上は10代中頃の女性をイメージしてオリジナル
で作成したものです。なお,私自身は男性です。
 最近,「海」に対する誹謗中傷がなされるようになりました。VTuber に対する悪
口は違法にならないのでしょうか。
Q59■ 予測検索・関連検索
 検索エンジンで私の名前を検索しようとすると,検索窓に表示される予測検索に
「詐欺」「逮捕」といった不穏なキーワードが表示されます。また,検索結果上にも,
関連キーワードとして同様のキーワードが表示されてしまいます。
 非常に印象が悪いのでこのような表示がなされないようにできないでしょうか。
Q60■ 婉曲表現
 SNS 上で私に対して誹謗中傷を繰り返しているアカウントがあります。しかし,
一部を伏字にしたり,疑問形にしたりと婉曲的な表現を用いており,明確に名誉毀損
に当たるかよくわかりません。例えば,次のような投稿をしているのですが,違法性
は認められるのでしょうか。
 ⑴ 氏ね 〇ね
 ⑵ 糖質 基地外
 ⑶ ヤク中みたいな顔 万引きとかしてるんじゃね?
Q61■ 誹謗中傷者の個人情報の利用
 弊社の顧客が,勘違いからかインターネットに公開されたSNS で弊社に対する事
実無根の誹謗中傷を繰り返しています。SNS は実名でなされており,弊社の顧客デ
ータベースと照合して相手の住所氏名は特定できています。相手に対して記事の削除
と損害賠償を求める訴訟を提起したいのですが,弊社の顧客データベースに登録され
ている個人データを活用してもよいのでしょうか。
Q62■ 削除請求と非弁行為
 弁護士(弁護士法人)以外の多数の企業が,他人の依頼を受けてインターネット上
に掲載された記事を削除するサービスを行っていますが,これは非弁行為ではないの
でしょうか。また削除ではなく,コンサルティングサービスを提供している企業が多
くありますが,このような範囲であれば非弁行為にならないのでしょうか。
  
キーワード索引
判例索引