青林書院



判例からひも解く実務民事訴訟法


判例からひも解く実務民事訴訟法
 
編・著者近藤昌昭 著
判 型A5判
ページ数320頁
税込価格4,620円(本体価格:4,200円)
発行年月2023年07月
ISBN978-4-417-01858-2
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■解説
民事訴訟法の主要な論点を判例の考え方に基づき実務的に解説

●元裁判官が,民事訴訟法を理解するうえで
 必要な判例を用いて簡潔にわかりやすく解説
●設例の解説を通じて,民事訴訟全体の考え方や論点相互の位置づけを明確化
 
 法律実務家及び法律実務家をめざすロースクール生のために,
 民事訴訟手続の大きな流れや実務の考え方の理解が深まる一冊



はしがき
 民事訴訟の捉え方について,大きくは二つの立場が考えられる。一つは,対
立当事者が主体となって双方の主張を戦わせ,第三者たる裁判所が客観的立場
から両者の主張の是非を判断するという当事者主体型の構造の立場である。も
う一つは,訴訟手続の中で,できるだけ事実を解明し,当事者に対し納得性の
高い判決を言い渡すべきであるとし,そのために当事者と裁判所との協働によ
る事案解明を図る立場である。前者は,英米型のモデルであり,後者は大陸型
のモデルといえようか。
 どちらの立場に立脚して民事訴訟法を解釈すべきかは,あるべき民事訴訟の
捉え方,すなわち訴訟観によるといえる。私は,代理人の力量により勝敗が左
右されることを是とする考え方は日本の法感情には馴染まず,勝つべき者が勝
つという訴訟を目指すべきであると考えている。すなわち,後者の考え方であ
る。これまでの民事訴訟の運営も基本的には,そのように運営されてきたもの
と信じているし,最高裁の判例も,そのような観点で民事訴訟法全体を統一的
に解釈してきていると考えている。実例を若干挙げれば,訴訟資料の収集を当
事者の責任とする弁論主義について,その中身である第1テーゼ(当事者が主
張しない「事実」を判決の基礎にすることができない。)において,「事実」
は主要事実に限り,証拠と同様の作用のある間接事実や補助事実は入らず,裁
判所の自由心証を優先させ,事案解明を図っているほか,自白の撤回の要件と
して反真実を要件の一つに挙げ,公序良俗違反の事実については,当事者の主
張を不要とするのも,このことと関係している。また,裁判所の釈明権を広く
認め,当事者に事案解明協力義務を認め,当事者と裁判所との協働主義を採用
し,できるだけ事実を解明しようとしている。また,民事訴訟は,当事者の訴
えで始まり,当事者の意思を尊重することも当事者の納得を得る手続とするた
めには必要であり,明示の一部請求を認め,当事者の予備的併合か選択的併合
の意向も尊重するなど,当事者の意思をできるだけ尊重する立場を採用する一
方,いったん訴訟が係属し,審理が始まると,裁判所が事案解明に向けて手続
を重ねるので,当事者主導による主観的追加的併合などを認めず,職権進行主
義が採用されている。これらによって,早期の事案解明を図ることが意図され
ている。本書は,このような観点から,最高裁判例を題材としながら,民事訴
訟法の主要な論点について,実務的な観点から解説をしている。
 民事訴訟は,公法に属しながら,扱う内容が私人間の紛争であるから,私的
自治の原則や民法等の実体法との関係の規律も重要であるが,手続法であるの
で,利用者にわかりやすく,公平な基準が要請される。そのため,利益衡量が
前面に出ることは控えるべき法分野である。その意味で,概念設定を前提とし
て論理的な解釈が要請される学問でもある。民事訴訟法が,一般の人にとって
わかりにくいと感じさせる要因もそこにある。そのため,本書は,姉妹書の『
判例からひも解く実務民法』と同様の手法で,設例を設けて解説を加えながら
,民事訴訟全体の考え方や論点相互の関係にも言及する手法を採用した。この
ような体裁の方が,具体的なイメージを持ちやすく概念的な説明を重ねるより
も,はるかにわかりやすいと考えたからである。
 本書を通じて,法律実務家はもとよりこれから法律実務家を目指す者にとっ
て,民事訴訟における実務の考え方や大きな流れについて,理解が深まる一助
になれば望外の幸せである。
 最後に,青林書院編集部の皆様には,本書の企画・校正等に当たって尽力し
ていただいた。心より御礼申し上げる。
  令和5年6月
                             近 藤 昌 昭

■書籍内容
第1章 序  論
 1 基本構造の単純化
 2 民事訴訟の目的論
  1 訴訟観と紛争の法的解決
  2訴権論との関係
  3訴訟行為論の解釈
  4審理と弁論主義との関係
  5訴訟と実体法との関係(判決の効力との関係)

第2章 訴訟行為の解釈(私法上の効果との関係)
 1 問題の所在
 2 訴訟外の行為(訴え取下げの合意)の訴訟上の効果
  1 判例の判断
  2 問題の所在
  3 訴訟外の訴訟上効果を有する行為について
 3 訴訟行為の私法上の効果
  1 訴訟行為の考え方
  2 設例⑴について
  3 設例⑵について
  4 設例⑶について
 4 訴訟行為と実体法規の適用
  1 総  説
  2 具体的検討
  ⑴ 訴訟代理権の調査について  ⑵ 設例⑴について
  ⑶ 設例⑵について  ⑷ 設例⑶について

第3章 処分権主義
第1節 処分権主義
  1 意  義
  2 処分権主義の内容
  1 合理的意思解釈の仕方
  ⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
  ⑶ 設例⑶について  ⑷ 設例⑷について
  2その他の一部認容判決が容認される具体例
  ⑴ 引換給付判決  ⑵ 責任限定判決
  ⑶ 求償権の限度表示
  3 訴訟物の解釈
第2節 訴訟物について
 1訴訟物理論
  1訴訟物とは何か
  2旧訴訟物理論と新訴訟物理論との論争
 2訴訟物の実際例
  1 訴訟物理論と訴訟物の把握
  ⑴ 旧訴訟物理論(旧説)  ⑵ 新訴訟物理論(新説)
  ⑶ 旧訴訟物理論(旧説)採用の理由  
  ⑷ 旧訴訟物理論による訴訟物の捉え方
  2登記請求権
  3法的性質
  4消極的確認訴訟
  ⑴ 消極的確認訴訟の問題点  
  ⑵ 消極的確認訴訟の訴訟物の特定・請求原因を主張する者
  ⑶ 消極的確認訴訟の一部認容判決
  ⑷ 一定金額を超える債務の不存在確認訴訟の訴訟物
  5 証書真否確認訴訟
 3訴訟物の特定
 4申立事項と訴訟物ないし裁判事項(一部認容の是非)
  1 申立事項にはどのような内容のものが含まれるか
  2 申立事項と訴訟物との関係
  3 一部認容の可否
  ⑴ 同時履行の抗弁,留置権の抗弁  
  ⑵ 建物買取請求権の行使  ⑶ 立退料の支払  
  ⑷ 限定承認  ⑸ 不執行の合意
 4 釈  明
第3節 一部請求
 1総  説
 2基本的な視点
  1 明 示 説
  2 消極的確認訴訟の場合
  ⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
 3明示された一部請求かどうか
  ⑴ 最判平20・7・10の事案
  ⑵ 前訴時に予想できなかった後遺障害請求を後訴で請求し得るか
 4一部請求と時効完成猶予
  ⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
 5一部請求の場合の過失相殺等
  ⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
 6一部請求が棄却された場合の残部請求の可否
第4節 予備的請求

第4章 既 判 力
第1節 実体法上の権利義務と判決効との関係
1 主文に包含するもの
2 既判力の本質
1 実体法説と訴訟法説
2 既判力による拘束を正当化する根拠
3 既判力の作用
1 消極的作用と積極的作用
2 既判力が作用する3つの場面
⑴ 3つの場面  ⑵ 同一訴訟物  ⑶ 先決関係
⑷ 矛盾関係
4 既判力の時的限界
1 既判力の時的限界の意義
2 問 題 点
⑴ 時点限界と形成権の行使  ⑵ 取 消 権  
⑶ 相  殺  ⑷ 建物買取請求権  
⑸ 判断基準(その1)  ⑹ 判断基準(その2―限定承認)
3 賃料増減請求と賃料額確認請求訴訟
⑴ 賃料額確認請求訴訟の訴訟物
⑵ 賃料額確認請求訴訟の賃料額の基準時  ⑶ 設例の回答
5 既判力の客観的範囲
1 既判力の客観的範囲
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
⑶ 訴え提起時に予想できなかった後遺障害請求
2 相殺の抗弁
⑴ 相殺の抗弁に既判力が生じる理由  
⑵ 既判力が生じる範囲  ⑶ 設例に対する回答
4 争点効と信義則
6 既判力の主観的範囲
1 判決効が及ぶ第三者
2 口頭弁論終結後の承継人の範囲の問題
⑴ 紛争の主体たる地位の移転  ⑵ 設例の検討
⑶ 設例⑴について  ⑶ 設例⑵について
3 訴訟承継(口頭弁論終結前の承継)の場合の効力
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
⑶ 建物の登記について
4 反射効について
⑴ 反射効の内容  ⑵ 反射効の是非

第5章 審  理
第1節 審理の原則
1 第1回口頭弁論期日前
2 当事者の欠席
1 当事者双方の欠席
2 当事者の一方の欠席
3 審理に関する原則
1 双方審理(審尋)主義
2 口頭主義
3 直接主義
4 公開主義
5 審理(弁論権)と弁論主義の関係
第2節 弁論主義
第1項 総  論
1 弁論主義の根拠
2 弁論主義の内容
1 弁論主義の第1テーゼ
2 弁論主義の第2テーゼ
3 弁論主義の第3テーゼ
3 争点整理における裁判所の役割ないし釈明権の位置づけ
4 法的主張の位置づけ
第2項 弁論主義の内容について
1 主張責任(弁論主義の第1テーゼ)
1 主要事実と間接事実
⑴ 別口の貸金の弁済(認定事実)の位置づけ
⑵ 間接事実には弁論主義第1テーゼは及ばない
2 主要事実か間接事実か
3 所有権取得の経過来歴の事実
⑴ 所有権取得の経過来歴の要件事実  ⑵ 考え方の変遷
4 事実のふくらみの程度
⑴ 総  説  ⑵ 設例⑴について  
⑶ 設例⑵について  ⑷ 設例⑶について  
⑸ 設例⑷について
5 公序良俗違反の事実
⑴ 最高裁の判旨  
⑵ 公序良俗違反を基礎づける具体的事実
⑶ 過失相殺を基礎づける具体的事実
2 自白(弁論主義の第2テーゼ)
1 自白の要件
2 証明責任説と敗訴可能性説
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
⑶ 設例⑶について
3 裁判上の自白の効果
4 権利自白
⑴ 意  義  ⑵ 判例の見解
3 職権証拠調べの禁止(弁論主義の第3テーゼ)
第3節 審  理
1 審理における当事者と裁判所との協働
2 事案解明義務ないし事案解明協力義務
3 釈明権について
1 釈明権の範囲
⑴ 釈明権の位置づけ
2 釈明権と裁判官の忌避事由
3 時効の援用についての釈明
4 釈明義務について
1 釈明義務違反について
⑴ 釈明義務について  ⑵ 判例の検討
2 上告理由となるか
3 法的観点指摘義務について
⑴ 法的観点の釈明義務不存在  
⑵ 法的観点の釈明義務を肯定した事例
第4節 事実認定
1 総  論
1 事実認定の基本構造
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
2 間接反証
⑴ 間接反証とは  ⑵ 間接反証の具体例
⑶ 立証責任と間接反証
2 個別的問題
1 民事訴訟法248条
⑴ 自由心証主義の例外規定  ⑵ 事例の紹介
2 証明妨害について
第5節 証  拠
1 証拠共通の原則
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
2 書  証
1 書証の申出
⑴ 書証の申出  ⑵ 文書送付嘱託を命じる裁判の法的効果
2 文書の作成者
⑴ 文書の作成者  ⑵ 代理人の場合の作成者
2 二段の推定について
⑴ 文書の成立の真正の意義と推定規定
3 原本と写し
⑴ 原本とは何か  
⑵ 原本に代えて写しを提出する場合の要件
4 書証の撤回
5 証言の拒絶
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
⑶ 設例⑶について
6 文書提出命令
⑴ 自己利用文書(民事訴訟法220条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供す
るための文書」)の判断枠組み
⑵ 職業の秘密(民事訴訟法220条4号ハの「技術又は職業の秘密に関する事項
で,黙秘の義務が免除されていない文書」)の判断枠組み
⑶ 即時抗告権者について
3 そ の 他
1 違法収集証拠
⑴ 問題の所在  ⑵ 2つの裁判例
2 専門委員の説明
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
⑶ 設例⑶について

第6章 訴訟要件
第1節 訴えの利益
1 総  論
1 訴訟要件とされるもの
2 訴訟類型と「訴えの利益」
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
⑶ 設例⑶について
3 訴訟要件と本案判決との関係
2 確認の利益
1 設例⑴について
2 設例⑵について
3 設例⑶について
4 設例⑷について
5 設例⑸について
6 設例⑹について
7 設例⑺について
第2節 重複訴訟の禁止
1 趣旨及び要件
2 具体的検討
1 設例⑴について
2 設例⑵について
3 設例⑶について
4 設例⑷について
3 審理の方法及び効果
4 相殺の抗弁と重複訴訟の禁止
1 基本的視点
2 具体的検討
3 裁 判 例
⑴ 別訴先行型について(設例⑴)  
⑵ 抗弁先行型について(設例⑵)
⑶ 本訴反訴型について(設例⑶〜⑸)  ⑷ 弁論の分離
第3節 第三者の訴訟担当
1 意  義
2 法定訴訟担当
1 意  義
2 債権者代位訴訟
⑴ 訴訟告知の位置づけ(設例⑴について)
⑵ 債務者の地位(設例⑵について)
⑶ 自白の効力(設例⑶について)
3 遺言執行者
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
⑶ 設例⑶について
3 任意的訴訟担当
1 任意的訴訟担当の是非
2 任意的訴訟担当と具体的な授権の要否
3 権利能力なき社団の代表者
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
⑶ 設例⑶について

第7章 多数当事者に関する問題
第1節 固有必要的共同訴訟
1 固有必要的共同訴訟の概要
1 主観的共同訴訟における固有必要的共同訴訟の位置づけ
2 訴訟物の管理処分権
2 固有必要的共同訴訟の選別基準
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
⑶ 設例⑶について  ⑷ 設例⑷について
⑸ 設例⑸について  ⑹ 設例⑹について
⑺ 設例⑺について  ⑻ 設例⑻について
⑼ 設例⑼について  ⑽ 設例⑽について
⑾ 設例⑾について
3 非同調者に対する措置
4 審理の方法
第2節 類似必要的共同訴訟
1 類似必要的共同訴訟
1 民事訴訟法40条の適用
2 上訴人の地位について
第3節 通常共同訴訟
1 通常共同訴訟と証拠共通の原則(設例⑴前段)
2 通常共同訴訟と主張共通の原則(設例⑴後段)
3 主観的追加的併合・弁論の併合(設例⑵)
4 任意的当事者変更(設例⑶)
第4節 当事者主導による共同訴訟の実現
1 総  説
2 主観的予備的併合・主観的追加的併合の是非
1 主観的予備的併合
2 主観的追加的併合
第5節 補助参加
1 補助参加の制度の概要
1 定  義
2 補助的な立場で関与
3 補助参加の裁判
2 参加的効力
1 意  義
2 具体的検討
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
3 補助参加の要件
1 他人の訴訟係属の存在
2 法律上の利害関係(補助参加の利益)
4 法律上の利害関係(補助参加の利益)
1 法律上の利害関係の大枠
2 具 体 例
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について
⑶ 設例⑶について  ⑷ 設例⑷について
⑸ 設例⑸について
5 共同訴訟的補助参加

事項索引
判例索引
〔コラム〕
Column 大陸法系の訴訟物と英米法系の訴訟物
Column 適格承継説及び紛争主体地位移転説について
Column 独立当事者参加の「権利主張参加」の両立性について
Column 任意的訴訟担当に関する学説

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