
学校事故の法律相談
- 編・著者古笛 恵子 編著
- 判型A5判
- ページ数412頁
- 税込価格4,950円(本体価格:4,500円)
- 発行年月2016年06月
- ISBN978-4-417-01685-4
- 在庫
品切れ
■解説
〔学校・教師〕〔親〕〔組体操〕〔騎馬戦〕〔部活動〕〔熱中症〕〔いじめ〕
〔子どもの声〕〔危機管理〕ほか―
事故の責任はどこにあるのか?―児童生徒等の安全を確保するためには?
事件・事故災害の未然防止とともに事故発生時の適切な対応を,最新の判
例から50のQ&Aに集約!
はしがき
学校保健安全法1条は,「学校における教育活動が安全な環境において実施さ
れ,児童生徒等の安全の確保が図られるよう,学校における安全管理に関し
必要な事項を定め,もつて学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資する
ことを目的とする」として,国,地方公共団体,学校の設置者の責務を定め,
学校が実施すべき事項を定めています。また,最高裁も,「学校の教師は,
学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき
義務を負っており,危険を伴う技術を指導する場合には,事故の発生を防止
するために十分な措置を講じるべき注意義務があることはいうまでもない。」
とか,「学校の教師は,学校における教育活動によって生ずるおそれのある
危険から児童・生徒を保護すべき義務を負っているところ」とくり返し判示
しています。学校は,安全な場所でなければならないのです。しかし,「安
全」という概念もまた難しいと実感しています。スポーツにけがはつきもの
といっても,命を落としたり重大な障害が残りかねないような危険なものが
許されないことはいうまでもありません。しかし,どんな些細なけがでも避
けなければならないとなると,スポーツも工作も理科の実験もできなくなっ
てしまいます。近年,マスコミでも大きく取り上げられている組体操,さら
には,騎馬戦,ムカデ競争などのあり方については,学校関係者の間でも,
保護者の間でも,子ども達の間でも意見が分かれる難しい問題です。どこで
バランスをとるべきかです。また,いじめ防止対策推進法も制定され,体罰
に関するガイドラインも公表されていますが,決して許されるべきでないい
じめや体罰もなくなっていないのが現実です。くりかえしになりますが,学
校は,安全な場所でなければなりません,そして,楽しく充実した生活を送
る場でなければならないのです。
法律家として,親として,大人として,子どもたちが,安全に楽しく学校生
活を送り,笑顔で卒業してくれるための一助になればとの思いから本書の刊
行に至りました。スケジュールも内容も無理なお願いをお受けいただいた執
筆者の先生方,青林編集部の長島晴美様,加藤朋子様,学校現場の実情につ
いてご指導いただきました先生をはじめとする教育関係者のみなさま方には
心より感謝申し上げます。
2016年4月
編著者 古笛 恵子
編著者
古笛 恵子:弁護士(コブエ法律事務所)
執筆者(執筆順)
本多 直:弁護士(内田・本多法律事務所)
益本 誠一:弁護士(萬年総合法律事務所)
原 志津子:弁護士(萬年総合法律事務所)
奥津 啓太:弁護士(はる総合法律事務所)
大西 洋一:弁護士(弁護士法人大西総合法律事務所)
木谷 京子:弁護士(弁護士法人大西総合法律事務所)
志和 謙祐:弁護士(志和綜合法律事務所)
早川 和孝:弁護士(横浜仲通り法律事務所)
渡邊 健司:弁護士(弁護士法人愛知総合法律事務所)
檀浦 康仁:弁護士(弁護士法人愛知総合法律事務所)
米山 健太:弁護士(弁護士法人愛知総合法律事務所)
横井 優太:弁護士(弁護士法人愛知総合法律事務所)
水野 憲幸:弁護士(弁護士法人愛知総合法律事務所)
上禰 幹也:弁護士(弁護士法人愛知総合法律事務所)
勝又 敬介:弁護士(弁護士法人愛知総合法律事務所)
梅村 明男:弁護士(弁護士法人愛知総合法律事務所)
森下 達:弁護士(弁護士法人愛知総合法律事務所)
森田 祥玄:弁護士(弁護士法人愛知総合法律事務所)
中内 良枝:弁護士(弁護士法人愛知総合法律事務所)
■書籍内容
第1章 学校事故とは
Q1学校事故・学校災害
学校事故とは,どのような意義を有するのでしょうか。学校事故については,
学校が責任を負うのでしょうか。
Q2学校の責任
学校事故において,学校が民事責任を負うのは,どのような根拠によるので
しょうか。
Q3教師の責任
学校事故において,教師も民事責任を負うのでしょうか。
Q4児童生徒等,保護者の責任
学校事故において,加害行為に及んだ児童生徒等やその保護者も民事責任を
負うのでしょうか。
Q5被害児童生徒等の損害
学校事故において,被害を被った児童生徒等に対する損害賠償額については,
被害者側の事故に至るまでの事情,損害発生に至る事情なども斟酌されるの
でしょうか。
第2章 体育授業中の事故
Q6水泳中の事故
高校2年生であるAくんは,体育の授業中,Y教師の指導のもと,プールに設置
されたスタート台から逆飛び込み(両手先を伸ばし,体ごと斜めに入る動作)
をする練習をしていました。Aくんは,小学校1年生から2年生までスイミング
スクールに通っており,水泳を含めてスポーツは得意でしたが,高校に入学す
るまで逆飛び込みの指導を受けたことはありませんでした。Y教師は,逆飛び
込みのお手本を見せた後,逆飛び込みができない場合は水中スタートをしても
いいと説明しました。Aくんは,Y教師のお手本に従い逆飛び込みを行いました
が,通常よりもやや高く飛び上がり,深く潜り込むような姿勢で入水したため,
プールの底に頭を激突させ,脊髄損傷による完全四肢麻痺等の障害を負ってし
まいました。Aくんの損害について,学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q7特別支援学校(旧養護学校)の水泳中の事故
自閉症により特別支援学校高等部2年生に在学中のAくんは,体育授業の一環と
して,担任のY教師から,マンツーマン方式の水泳訓練を受けていました。
その際,Y教師は,水に浮く訓練をするため,Aくんの胸部に2個,両大腿部に
各3個,両足首に3個のヘルパーを装着させ,Aくんをうつ伏せに水に浮かせ,
その左側から横抱きにするような格好で泳がせました。
しばらくすると,Aくんの胸部に装着したヘルパーが背部に回ってしまい,
呼吸確保が困難になりましたが,Y教師はそのまま訓練を継続したところ,Aく
んは疲労のためヘルパーの浮力に逆らって鼻孔部を水面上に保ち続けることが
できなくなり,呼吸困難によるけいれんを起こしました。
Aくんの異常に気づいたY教師は,プールサイドにAくんを上げ,保温のための
マッサージを行いましたが,Aくんは意識を失ったまま病院に搬送され死亡し
ました。Aくんの損害について,学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q8組体操中の事故
高校の体育大会の種目として3学年共同で,同校の体育コースの選抜メンバー
による8段人間ピラミッドの組体操を実施することになりました。ピラミッド
の規模は,Aくんら生徒側から8段の提案があり,それを学校側が了承したも
のでした。体育の授業中にその練習をし,事故当日までに練習は何度か行わ
れていました。事故当日の練習の際,崩落に備えて前方に4名の教師と後方
に12名の補助者(生徒)が配置されていました。Aくんはピラミッド最下段の
土台の役割で,5段目がほぼ完成したところで,2,3段目の中心部分がバラン
スを崩して崩壊し,Aくんはその下敷きになって,頸椎脱臼骨折及び頸髄損傷
の傷害を負い,その結果,四肢麻痺の後遺障害が残りました。
Aくんのけがについて学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q9騎馬戦中の事故
高校の体育大会において騎馬戦が実施されました。この騎馬戦は,一騎打ち
に限定され,競技時間のなかで勝ち残った騎馬数の多い方を勝ちとするもの
でした。体育大会当日までに,騎馬戦に出場する選手ら及び関係する教師ら
に対し,ルール説明のほか,具体的な事例を示して騎馬戦の危険性について
の説明もなされました。そして,体育大会当日,組み合う2騎の騎馬1組ごと
に教師1人が審判員として配置されましたが,騎手であるAくんは相手の騎手
と組み合ううちに審判員のいる方と反対側に落馬しました。その際,Aくんは,
相手の騎手にしがみついたまま手を放さなかったため,首や頭を地面で強打
してしまい,頸椎骨折及び頸髄損傷の傷害を負って,四肢完全麻痺の後遺障
害が残りました。Aくんの傷害について学校側の責任は認められるのでしょう
か。
Q10柔道中の事故
中学3年生のAくんは,運動が苦手で,柔道の経験もまったくなく,3年生に進
級して初めて柔道の授業を受けました。Y教師は1回目の授業で柔道につき説明
した後,受け身の練習を20分ほど行い,2回目の授業でも同様に受け身の練習
を行った後,前回り受け身ができるかどうかを一人ずつ試し,指導しました。
その後,3回目の授業において受け身の練習をした後,実践的な受け身を身に
つけさせるため,柔道部員のBくんに,Aくんを含めた6名の生徒に対して大内
刈りを掛けさせました。すると,生徒らは受け身を失敗したことから,Y教師
はAくんらやBくんに言葉で指導した後,再びBくんに大内刈りを掛けさせました。
するとAくんは受け身を失敗して後頭部を打ち,意識不明となり後遺症が残りま
した。Aくんのけがについて学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q11サッカー中の事故
小学校6年生のAくんは,体育授業でのサッカーの試合中,至近距離から蹴られ
たサッカーボールで顔面右眼部を直撃されました。その際,Aくんには出血や
眼の充血等外観上の異常は見られず,その場にしゃがみ込んだもののすぐに
立ち上がりました。そこで,指導していたY教師が,「大丈夫か。保健室に行
ったらどうか。」と声をかけたところ,「眼は大丈夫だから試合ができる。」
と答えて試合を続け,試合終了後や,その後の授業開始時も「大丈夫。」と
答えました。その後も,Aくんは卒業まで1日も休まず登校しましたが,実は,
Aくんは試合の終わった頃から時折右眼に稲妻が走るのに似た感覚を覚えるよ
うになり,1か月後には右目の焦点がぼける症状が生じていました。ところが,
サッカーができなくなることをおそれたAくんは,それを誰にも言いませんで
した。1年余後,Aくんは手術を受けたものの回復せず,外傷性網膜剥離により
失明しました。Aくんのけがについて学校側の責任は認められるのでしょうか。
第3章 授業中の事故
Q12理科の実験中の事故
中学校1年生のAくんは,Y教師の指導のもと,理科の授業として,過酸化水素
水を入れた試験管をアルコールランプで加熱して酸素を取り出すという実験を
行っていました。教科書に掲載された写真等には,必ずアルコールランプと
試験管との間にノンアスベスト金網が設置されており,「水を熱する場合は
ノンアスベスト金網を取りはずしてよい」との説明が付されていましたが,
Y教師は,加熱に時間がかかり授業時間内に実験を終えられないことを懸念し,
生徒に対して,ノンアスベスト金網を使用せずに実験を実施するよう指導した
ので,生徒がそのとおり行っていたところ,試験管内の温度が急上昇し,過酸
化水素水の沸騰が生じたことにより,試験管が破裂し,Aくんは,ガラスの破片
が当たり,左目を負傷しました。
Aくんのけがについて,学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q13自習中の事故
小学校3年生のAくんは,登校後朝の会までの15分間に行われる朝自習の時間,
児童らの席の最後列の後ろにあるロッカーから,自分のジャンパーが落ちてい
るのに気づき,これを拾って上下に振りましたが,ホコリが取れなかったため,
ジャンパーの襟首部分を掴んで頭上で振り回したところ,ちょうど最後列の自
席を立ち,後ろを振り向いたBくんの右眼に,Aくんが振り回したジャンパーの
ファスナーが当たり,Bくんは,右眼を負傷しました。そのころ,Y教師は,
教壇において,他の児童らに応対しており,Aくんの行動は見ていませんでし
た。また,Aくんが日常的に乱暴な行動をとるなどといった事情はありません
でした。なお,クラスでは,朝自習の時間中は用もないのに自分の席を離れな
いとの取決めがありました。Bくんのけがについて学校側の責任は認められる
のでしょうか。
Q14校外写生授業中の事故
Y教師は,担任する小学校6年生のクラスにおいて,図画工作の授業として,
校外写生を実施することとしましたが,児童らに対して,小学校の校門を出
たあたりに設置されている電柱を1つ選んで写生するよう指示し,自動車や自
転車などの車両に注意するようにとのみ指導して,児童らを校外へ行かせま
した。校門前には,歩道を挟んで車道があり,車道の反対側に公園がありま
す。この車道には,校門側にのみ歩道が設置されており,公園側には歩道は
設置されておらず,公園の外郭に沿って側溝が設けられていました。
Y教師のクラスのAくんは,公園側の側溝より内側の車道上にシートを引いて
座り,写生を行っていたところ,同所を通行中であった自動車がAくんの存
在に気づくのが遅れ,Aくんは,この自動車に轢かれ,死亡しました。Aくん
の死亡について,学校側の責任は認められるのでしょうか。
第4章 授業前後の事故
Q15授業開始前の事故
授業開始前の時間,中学校1年生の教室内で,Bくん(13歳)が,Aくんに対
し約3mの距離からやり投げのように箒を投げたところ,箒がAくんの右目部
分に当たり,Aくんは,かけていた眼鏡の破片で右目を大けがしました。
Aくんのけがについて,誰が責任を負うのでしょうか。
Q16休み時間の事故
小学校の昼休み中,全学年児童に開放していた体育館内で,ソフトバレー
ボールで遊んでいた低学年女子児童であるAさんが,ボールを拾うために腰
を曲げてかがみ込んだところ,別グループでバスケットボールをして遊んで
いた高学年男子児童が勢いよく後退してそのAさんに衝突し,Aさんは頭を打
って後遺障害が残りました。当時,体育館内には様々な学年の男女児童が40
名程度おり,それぞれのグループで様々な遊びをしていました。Aさんのけが
について,学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q17清掃中の事故
中学校の大掃除の際,2年生のAくんが校舎3階の窓の外側を手で拭くため,
窓の外に出ようとしたところ,足を滑らせて転落して大けがをしました。
この中学校では,これまで生徒が窓の外に出た例はありませんでしたが,
学校側は,大掃除前に掃除方法や清掃用具の使用方法を具体的に指導し,
窓ふきは外側は手やモップが届く範囲でよいと指示を与えていました。
Aくんのけがについて学校側の責任は認められるのでしょうか。
また,掃除方法や掃除用具の使用法の指導や,危険防止のための指示を
与えていなかった場合はどうでしょうか。
Q18放課後の事故
小学校3年生のAくんが,放課後,帰り支度をして教室から出て昇降口ま
で来たところ,同級生Bくんとすれ違いました。Bくんは他の友人と口論
をしていた直後で,たまたまAくんと目が合ったことが気に入らず,いき
なりAくんを突き飛ばしたため,Aくんは転倒し,腰部打撲,頭部打撲等
の傷害を負いました。Aくんの傷害について,誰が責任を負うでしょうか。
Q19休日の事故
休日に,Z市立小学校4年生(9歳)のAくんが,他の児童ら数名と,Z市立
小学校の体育館に入り,かくれんぼをしていたところ,Aくんが体育館
の天井裏に入ってしまい,天井板が破れて約5m下に転落して死亡しました。
この体育館の入口は施錠されておらず,控え室の壁に固定されている鉄ば
しごを登り,天井改め口から容易に天井裏に立ち入ることができました。
また,天井板は重量物を支えることができない材質でした。なお,学校
側は,児童らに対し「勝手に体育館内の控え室に入ってはいけない」と
注意していました。
Aくんの死亡について,学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q20寄宿舎の事故
高校の寄宿舎で生活していた寄宿生19名(うち3年生3名,2年生4名,
1年生12名)が,学校休業日に漁港に行きました。3年生らに指示された
1年生らが,高さ約10mある堤防から外海に飛び込みましたが,高波に
巻き込まれ,4名が水死・行方不明となりました。寄宿舎内では従前か
ら3年生が1年生に対しいじめやしごきを行っており,堤防からの飛び
込みは,新入生に対する寄宿舎の恒例行事として行われたものでした。
このように寄宿舎の自由時間に外出先で発生した事故に関し,誰が責
任を負うのでしょうか。
Q21生徒の体調管理
小学校1年生のAくんは,病弱で風邪をよくひいていました。1月16日,
Aくんは学校に登校しましたが,給食の時間に嘔吐したため,担当教
師が短パンに着替えさせ,5時限目が終わり短パンで下校しました。
下校時は雪が降っており自宅までは約700mの距離でした。Aくんは翌日
夜に発熱し,その後18〜20日欠席,22日早退,23日も欠席しました。
25日,担当教師はAくんに体操着,セーター,短パンで体育の授業を
受けさせたところ,同日夜から発熱が続き,急性脳炎により死亡して
しまいました。Aくんの死亡について,学校側の責任は認められるの
でしょうか。
第5章 給食中の事故
Q22アレルギー児童の事故
小学校6年生のAくんは,幼少の頃から気管支喘息の持病をもっていて,
7歳の時にそばアレルギーに罹患しました。Aくんの両親は,Aくんの担
任に児童調査票を提出し,そのなかで担任に知っておいてほしいことと
して,「給食で注意すること」に「そば汁」と記載し,欄外に「小児ぜ
んそくがありますのでご迷惑をおかけする時もあるかと思います」と付
記していました。
ところが,Aくんは給食で出されたそばの3分の1程度を食べてしまい,口
の周りが赤くなったことをAくんの担任に申し出たところ,担任はAくんの
母親に連絡をしたうえでAくんを帰宅させましたが,Aくんは帰宅途中に
アレルギー発作に起因する呼吸困難,異物誤飲により窒息死してしまいま
した。児童Aくんの死亡に関し学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q23食中毒事故
小学校6年生のAくんが学校給食を食べたところ,その3日後に発熱の症状
を訴えました。Aくんを含む児童の多数が同様の症状を訴え,同じ市内の
他の小学校の児童の多数も,Aくんが発熱の症状を訴えた日と同じ日に,
下痢,血便を主な症状として病院を受診するなど,集団食中毒が発生し,
児童の便からは腸管出血性大腸菌O157(以下「O157」という)が検出され
ました。O157感染症に罹患したAくんは,学校給食を食べた38日後に,
溶血性尿毒症症候群による敗血症により死亡してしまいました。学校と
しては,調理師が調理室で給食の調理を行い,調理器具や食器の消毒も
行い,食中毒防止のための措置をとっていました。Aくんの死亡について,
学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q24食器破損による事故
小学校3年生のAくんが,学校給食用食器として使用した強化耐熱ガラス
製の食器を片付ける際に誤って床に落下させ,食器は割れて飛び散りま
した。Y教師はAくんが右目の痛みを訴えているのでAくんの右目を目視し
て異物混入がないことを確認したために,Aくんがその後も右目の痛みを
訴えていたにもかかわらず,すぐに病院に連れて行くことはしませんで
した。Aくんは病院で外傷性白内障の診断を受け,目に後遺障害が残って
しまいました。事故当時,割れた食器は全国的に導入されていましたが,
当該食器は他の強化陶磁器製の食器に比べて,落下等の衝撃に強く,
壊れにくい長所をもつ反面,三層からなるガラス層を圧縮形成する構造
上,一度壊れてしまうと破片は鋭利かつ細かく多数生じ,高く広範囲に
飛散する性質をもっていることが判明しました。Aくんのけがについて,
学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q25誤嚥による事故
小学校3年生のAくんが,学校給食を食べていたところ,Aくんは,おかず
に入っていたこんにゃくを喉に詰まらせてしまいました。Aくんの異常に
気づいた担任教師はAくんに対しタッピングを行い,それでも何も出てこ
なかったため,口腔内に指を差し入れ,Aくんの喉からこんにゃくを1個取
り出しました。Aくんは意識不明の状態のままだったので,担任教師はその
場で救急救命措置を行って救急車の到着を待ち,病院に搬送しました。
Aくんは,病院に搬送された際,チアノーゼがみられ,脈が触れず,瞳孔が
開いていて,呼吸停止の状態でした。病院の医師はAくんの喉からこんにゃ
くを1個取り出し,その後も懸命の治療を続けましたが,翌日,Aくんは死
亡してしまいました。Aくんが死亡したことについて,学校側の責任は認め
られるのでしょうか。
第6章 校外活動中の事故
Q26林間学校中の事故
小学校4年生を対象とする2泊3日の林間学校に参加したAくんが,林間学校
bの初日,移動途中の休憩場所となったP公園の広場で昼食をとった後,
広場から抜け出して公園内の展望台付近で走り回って遊び始めたところ,
誤って高さ約5mの高台から転落し,頭部を打撲したことにより死亡しま
した。Aくんの死亡について林間学校を主催した学校側の責任は認められ
るのでしょうか。また,仮に休憩場所が海岸付近であり,浅瀬に立ち入っ
たAくんが現場特有の海流に流されて溺死した場合はどのように考えるべき
でしょうか。
Q27学旅行中の事故(生徒間の事故)
中学校3年生を対象に実施される修学旅行に,かねてから素行の悪い不良
グループの生徒達も参加していました。この不良グループは,旅行の途中
で団体行動の経路から無断で外れて観光をしたり,教師・学校側が行った
宿泊施設の部屋割りを無視して大部屋を独占したりするといった行動に出
ていましたが,その行動はさらにエスカレートし,就寝時刻を過ぎても宿
泊施設内を徘徊し,他の部屋で寝ている生徒達に対して順次暴行を加えま
した。このような不良グループによる暴行の結果,生徒Aくんは右目網膜
剥離の傷害を負ってしまいましたが,このような生徒Aくんの損害について,
学校側の責任は認められるのでしょうか。また,昼間の団体行動の途中で,
生徒が他校の不良グループから暴行を受け負傷した場合,学校側の責任に
ついてはどのように考えるべきでしょうか。
第7章 クラブ活動中の事故
Q28柔道部の活動中の事故
Aくん(身長164cm,体重52kg)は,それまで柔道の経験がありませんで
したが,高校に入学してすぐ柔道部に入部しました。入部して1週間ほど
した頃,練習中投げられた際に頭痛を自覚し,病院を受診しましたが,
頭部CT検査でも異常がなく,脳しんとうと診断されましたので,そのこと
を顧問のY教師に報告して,その後も練習に参加し,翌月の大会に帯同し
ました。Aくんは,大会会場で,同校の中心選手として出場する予定のB
くん(身長170cm,体重105kg)の投げ技の練習相手となりました。Aくん
はBくんに投げられた後,その場に倒れ込み,救急車で搬送されましたが,
急性硬膜下血腫により,意識障害,四肢麻痺により食事,入浴,用便,
更衣について常時介護を要する後遺症が残ってしまいました。Aくんの損
害について,学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q29ハンドボール部の活動中の事故(部活動練習中の熱中症)
中学校男子ハンドボール部の顧問のY教師は,1,2年生の部員に,ランニ
ング,40mダッシュ等の運動強度の大きい練習をさせていました。当日は,
中学校3年生が引退した後,新チーム発足2日目の真夏日で,練習開始約1
時間半後の午前10時頃に外気温が31度を超えました。そうしたところ,
ダッシュの練習に参加していた身長約177cm,体重約86kgの中学校2年生A
くんの様子がおかしいことに気づいたことから,Y教師はAくんに対して
休憩を指示しました。Y教師はAくんに水を飲ませようとしましたが,Aく
んは飲むことができず,そのまま倒れてしまいました。Y教師らは,氷や
担架を用意して熱中症発症時に備えており,Aくんの身体を冷やしたうえ
で病院に連絡し,Aくんを病院に連れて行きましたが,治療の甲斐なく,
約1か月後に,Aくんは亡くなってしまいました。Aくんの死亡について,
Y教師及び学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q30剣道部の活動中の事故
中学校2年生のBくんは,放課後,剣道部の練習場所に移動する途中,
体育館にある部室から竹刀を持ち出して,友人と竹刀でパック代わりの
鍔を打って飛ばすホッケー遊びを始めました。Bくんが強く竹刀を振っ
たところ,竹刀がBくんの手からすっぽ抜け,15m離れたところに立って
いたAくんの左目を直撃し,失明する事故が発生しました。剣道部顧問
のY教師は,剣道部の練習に立ち会うことはまれで,本件事故時もY教
師は職員会議に参加していました。また,Y教師は部員に対し練習以外
の目的で竹刀や鍔を使用しないよう指導したことはなく,練習の開始
前や終了後の部員の行動を監視したこともありませんでした。Bくんは
本件事故発生前にも度々ホッケー遊びをしていましたが,Y教師が来る
とすぐにやめていたため,Y教師は部員のホッケー遊びに気づいていま
せんでした。Aくんの損害について,Y教師や学校側の責任は認められる
のでしょうか。
Q31ボクシング部の活動中の事故
Aくんは,ボクシングの経験はありませんが,高校入学と同時にボクシ
ング部に入部しました。その翌年の1月のスパーリング練習中に倒れて
しまい,CTスキャンでは脳に異常は認められませんでしたが,以後は
頭痛を訴えていました。数日後Aくんは,当時3年生でインターハイ出
場経験のある部員Bくんとマスボクシング(グローブを着け2人1組で
互いに一定の距離を保ち,パンチを当てずにタイミングを計りなが
ら攻撃や防御を繰り返す練習方法)を行いました。AくんとBくんは,
マウスピースを付けていましたが,ヘッドギアは付けていませんで
した。練習中,顧問のY教師は,レフェリー役を務めていました。練習
開始後,Aくんは,Bくんのパンチの方向を読み誤って頭部に打撃を受け,
腰を後ろに引く形で床に膝を付き,前方にかがむように倒れ,3日後,
Aくんは硬膜下出血により死亡しました。Aくんの死亡について,学校
側の責任は認められるのでしょうか。
Q32陸上部の活動中の事故(棒高跳)
高校2年生のAくんは,陸上部に所属していましたが,中学校2年生の
頃から棒高跳を始め,インターハイに出場するほど高い能力,技能を
有していました。試合で棒高跳競技に出場し,その跳躍の踏み切りの
際,通常より前方に一足か二足前に入り込んだため,空中でバランス
を崩し,頭を下にして肩からマットに落下し,そのまま後頭部から滑
り落ちるようにボックスに落ち,第6頸椎を脱臼骨折し,両上下肢機
能障害及び神経因性膀胱直腸障害が残る重傷を負いました。Aくんは,
試合の約3週間前に左足首を捻り,治療を受けており,直後の試合へ
の出場は棄権したうえ,所属する陸上部の他の選手とは異なる練習を
行っていたため,顧問のY教師と相談のうえ,出場予定であった幅跳
及びリレーを棄権して,棒高跳のみに参加したものでした。Aくんの
傷害について,Y教師及び学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q33陸上部の活動中の事故(ハンマー投げ)
高校の陸上部に所属するAくんは,サークル内から,ハンマーの投擲
練習を開始しましたが,回転動作中に前方に移動しサークル外に出
てしまい,その位置から西方向に大きく逸れてハンマーを手放して
しまったため,ハンマーは,防護ネットに当たらずに開口部から飛
び出してしまいました。その結果,投擲用サークルから西へ30m離れ
た地点で,短距離走のスタートの練習の順番待ちをしていたBくんを
[直撃し,Bくんが死亡する事故が発生しました。Aくんが通う高校の
陸上競技場のトラック外の南東隅には,ハンマー投げ練習用の投擲
用サークルが配置されていました。そして,このサークルには,40
度の開口部を除いて,その周囲を囲う防護用ネットが設置されてい
ました。しかし,開口部付近に,誤った方向への飛び出しを防ぐ移
動パネルが設置されていませんでした。Bくんの死亡について,
学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q34化学部の活動中の事故(文化祭における爆発事故)
Aくんの所属する高校の化学部では,文化祭において,公開実験の
一つとして,模擬火山噴火の公開実験(以下「本件実験」)を行う
ことになりました。Aくんが文化祭の直前に,塩素酸カリウムと,
文化祭で使用しない硫黄の購入について化学部顧問のY教師に許可
を求めたところ,Y教師は昨年と同じ方法で本件実験を行うよう指
示し,購入を許可しました。Aくんは,購入した塩素酸カリウムを
酸化剤として用いて黒色火薬を製造し,薬品の量を増やす等,実
験を昨年とは違う方法で行うことにしました。本件実験の際,
Aくんが黒色火薬,テルミット,ピクリン酸等を,模擬火山に注入
したところ,突然模擬火山が爆発し,Aくんは爆風で吹きとばされ,
角膜裂傷等の重傷を負いました。Y教師は,火薬の作成と本件実験
のいずれにも立ち会っていませんでした。Aくんの傷害について,
Y教師及び学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q35サッカー部の活動中の事故(落雷事故)
高校のサッカー部に所属しているAくんは,夏休みに,サッカー部
監督のY教師の引率のもと,屋外運動場で開催されたサッカーの大
会に参加しました。午後1時50分頃は,小雨が降り始め,時々遠雷が
聞こえる程度でしたが,午後2時55分頃からは,暗雲が立ちこめて
豪雨となり,午後3時15分頃には気象台から雷注意報が発令されま
した。午後4時30分直前頃には,雨は止み,上空の大部分は明るく
なり始めましたが,運動場南西方向の上空には黒く固まった暗雲
が立ち込め,雷鳴が聞こえ,雲の間での放電が目撃されました。
ただ,雷鳴は大きな音ではなく,遠くの空で発生したものと考え
られる程度でした。午後4時30分に試合が開始されましたが,午後
4時35分頃,試合に出ていたAくんが落雷を受けました。救命救急
センターに救急車で搬送されましたが,重い後遺障害が残ってし
まいました。Aくんの傷害について,Y教師及び学校側の責任は認
められるのでしょうか。
Q36山岳部の活動中の事故
高等専門学校の山岳部で学校行事として4泊5日の雪山合宿が開催
され,教師であり引率者のY教師及びZ教師,山岳部のOBであるXの
ほか,山岳部員7名の計10名が参加しました。合宿の4日目に天候が
急変して吹雪となってしまい,下山するか,もしくは天候が回復す
るまで山荘で待機するか決断しなくてはならなくなりました。当時
の情報からは,翌日以降も降雪を伴う荒天が続く見込みでしたので,
下山を決定しました。下山決定後,登山経験豊富なY教師及びXが安
全な下山ルートの確認に行き,その状況をもとに下山ルートを決定
しました。下山中は,Xが先頭,Y教師及びZ教師が最後尾となり,
ラッセル(雪を払いのけて道を開きながら進行)しつつ,掛け声を
かけながら進行していたところ,突如発生した表層雪崩に巻き込ま
れ,Y教師,Z教師及び部員1名を除く7名が死亡してしまいました。
引率者のY教師,Z教師及び学校側の死亡事故の責任は認められるの
でしょうか。
Q37大学生の自主活動中の事故
Aくんは,大学に入学し,アニメ研究会に所属し活動をしていました。
この研究会は,大学でサークル活動として公認され,大学からサー
クル室の使用を認められていました。夏休みに,アニメ研究会では
初めてとなる,3泊4日の夏合宿が行われ,クラブの顧問である法学部
Y講師も参加しました。なお,Y講師は大学からも学生からも顧問料な
どの手当てはもらっていません。合宿2日目は合宿所近くを台風が通過
したため,屋内でのスケジュールを消化した後,Y講師は帰宅しました。
3日目はまだ台風の名残で波が荒く,午後2時ころ,合宿の行事として
スイミングが行われましたが,Aくんは波にのまれ,溺死しました。
Aくんの死亡について,Y講師と大学側の賠償責任は認められるので
しょうか。
Q38大学生の飲酒中の事故
大学1年生のAくんは,大学入学後にバスケ部に入部し,新入生10名と
ともに新入生歓迎コンパに参加しました。新入生歓迎コンパは,新入
生との親睦を深めるために毎年行われている行事であり,部長である
Y教授も参加し,上級生から新入生に対して飲酒を勧めたり,焼酎等の
早飲み競争が行われることが恒例となっていました。新入生は,飲酒
経験が浅く,多量に飲酒して酔いつぶれる者が多いため,上級生は,
あらかじめ宿泊場所としてアパートを用意していました。Aくんは,
二次会が開始されてまもなく,上級生らと早飲み競争をして,短時間
でビール3杯,焼酎4杯を飲み,酔いつぶれてしまいました。そこで,
上級生らが宿泊場所にAくんを運んで寝かせていたところ,翌日,Aく
んは死亡していました。Aくんの死亡について,誰が責任を負うので
しょうか。
第8章 いじめ・体罰
Q39いじめ防止対策
小学校3年生のAくんは,転校してきた直後から,同じ組のBくんから
殴る,蹴るなどの暴力を繰り返し受けていました。Aくんの母は,
4年生の4月にクラス担任のY教師に,Bくんの暴力の話を伝え,やめさ
せるように対策を講じてほしいと強く訴え,Y教師もBくんに注意を
したり反省会を開くなどしたのですが,その後もBくんの暴力は止ま
りませんでした。そして,その年の11月に,Aくんは放課後,学校の
廊下でBくんから暴力を受け,前歯2本を折る傷害を負わされました。
Aくんの損害について,誰が責任を負うのでしょうか。
AくんやBくんが高校生だった場合,責任は変わるのでしょうか。
Q40いじめによる損害
中学校2年生のAくんは,同学年のBくんたちから長期間にわたり集団
的な暴力や侮辱等の嫌がらせによるいじめ行為を受け,不登校となり,
妄想,不眠が生じ,統合失調症と診断されました。Aくんの担任のY教
師は,Aくんの保護者から,Aくんがいじめに遭っているので助けてほ
しいと相談を受けていたにもかかわらず,Bくんたちの行為を単なる
じゃれ合い程度のものと思い込み,何も注意しないで傍観していまし
た。Aくんは,BくんとBくんの保護者,Y教師及び学校に対して,どこ
までの範囲で損害賠償を請求することができるでしょうか。
Aくんがいじめを苦にして自殺してしまった場合はどうなりますか。
Q41不適切な指導
小学校3年生を担任するY教師が,だだをこねる3年生の児童をなだめ
ていたところ,2年生のAくんが,Y教師の背中に覆いかぶさるように
して肩をもみ,離れるように言っても離れなかったのでふりほどいた
ところ,今度は,そこに通りかかった6年生の女子児童数人をじゃれ
つくように蹴り始めました。Y教師が,それを制止して注意のうえ職
員室に向かおうとしたところ,AくんはY教師の臀部付近を2回蹴って
逃げ出したので,Y教師はAくんを追いかけて捕まえ,洋服の胸元を
つかんで壁に押し当て,大声で,「もう,すんなよ」と叱りました。
Aくんは,自宅で母親に,暴力をされたと訴え,その日から,夜中に
泣き叫び食欲が低下する等の症状が現れ,通学にも支障を生じました
が,回復しました。
Aくんの症状について学校側の責任は認められるのでしょうか。
Q42不適切な行為
先天性で進行性の難病であるムコ多糖症のため知的障害がある6歳の
Aくんが入学した特別支援学校において,小学部低学年の担任であるY
教師は,5月の連休明け頃から体調が優れず苛ついていたことから,A
くんの頬を2回両手で叩き,日常的に暴言を吐いていました。これに
気づいた同校の介護職員は,5月末には教頭に報告,6月末から7月初
めには,Aくんが叩かれて泣いている場面の音声記録を聞かせており,
校長もAくんへの暴行に関し他の児童の保護者が面談を希望していた
ことを認識していましたが,十分な対策を講じませんでした。Aくんは,
入学後から,行動が暴力的になり夜泣きの回数が増え,「やめて」
「先生が」と言うこともあり,外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され,
睡眠薬を服用するに至りました。
Aくんの損害について,学校側の責任は認められるのでしょうか。
第9章 学校施設による事故
Q43学校プールの事故
県立高校3年生で大柄なAくんは,Y教師の指導による水泳の授業の際,
Y教師の指導と違う方法でプールに飛び込んだところ,プールの底に
頭をぶつけ,頸髄損傷等により死亡してしまいました。高校のプール
は,満水時でも飛び込み台から前方2mの地点で水深が1.14mしかなく,
財団法人日本水泳連盟が定めるプールの規格等に関する事故当時の
公認規則には適合していたものの,改定後の規格は満たしていません
でした。Aくんの死亡について,プールを設置・管理していた県の責任
は認められるのでしょうか。
Q44サッカーゴールの転倒事故
昼休み中,学校法人の運営する私立小学校の運動場にあるサッカーゴ
ールに,1年生のAくんら数名の児童がぶら下がるなどして遊んでいた
ところ,サッカーゴールが突然倒れてきて,Aくんの頭に強く当たり,
Aくんは脳挫傷により亡くなりました。サッカーゴールは数日前の運動
会の際にいったん移動し,その後元の位置に戻していたのですが,杭
打ちなど転倒防止の措置を十分に講じず放置していたことが判明しま
した。Aくんの死亡について,サッカーゴールを設置管理していた学校
法人側の責任は認められるのでしょうか。
Q45玄関ポーチの衝突事故
市立小学校1年生のAくんは,昼休みに校庭において同級生と鬼ごっこを
していたところ,転んでしまい,玄関ポーチの角に頭をぶつけて裂傷を
負ってしまいました。その玄関ポーチはレンガ製で,角が尖ったままに
なっており,校庭と玄関ポーチとは約15cmの段差がありました。
Aくんのけがについて,玄関ポーチを設置・管理していた市の責任は認
められるのでしょうか。
第10章 その他の事故
Q46保護者間のトラブル
小学校1年生のAくんの母親であるBさんは,「Aの母へ」と宛名が記載
された脅迫状が郵送された後,何度も無言電話がかかってくる,小学校
の児童の母親数人のグループに嫌がらせ的な行為を受けているなどと訴
えるに至り,不眠,極度のうつ状態から,脅迫状が届いて2か月後にはA
くんを伴って自殺してしまいました。この小学校では,2年ほど前に,
児童を誹謗中傷する手紙が学校や児童に届くという脅迫事件が生じてお
り,警察署に届け,職員間では当該児童を注意して見守ることにしまし
たが,他の保護者には公表しませんでした。また,Bさんに脅迫状が届く
3か月ほど前に,別の児童の母親に対してもBさんに届いた脅迫状とよく
似た手紙が送られてきたこともありましたが,他の保護者には公表しま
せんでした。過去の脅迫事件を知らされることなく,特段の対応もして
もらえなかったBさんの精神的苦痛に対して,学校側の責任は認められる
のでしょうか。
Q47近所の子どもの被害
5歳の幼稚園児Aくんが,家の近所にある町立中学校のテニスコートに設
置してあった審判台に前部階段から昇った後,その座席部分の背当てを
構成している左右の鉄パイプを両手で握って審判台の後部から降りよう
としていたところ,審判台が後方に倒れてAくんが下敷きとなり,後頭部
を地面に強打して,脳挫傷により死亡しました。Aくんの死亡について,
審判台を設置・管理していた町の責任は認められるのでしょうか。
Q48近隣住民に対する加害行為(騒音)
小学校に隣接して居住する夫婦から,学校に対し,運動場で遊ぶ子ども
らの声が騒音であるとして,子どもらに運動場を使用させて午前8時か
ら午後6時までの間は50dB,午後6時から午後9時までは45dBを超える騒
音を到達させるべきではない,との申立てがなされました。
小学校は昭和56年に設置され,当時は周りに住宅がほとんどなく緑の多
い地域でしたが,15年後に夫婦が隣接地を購入して住宅を新築,居住す
るようになり,子どもの声について苦情を申し立てるようになりました。
その要望に応じて遊具の一部を撤去したりしましたが,それでも日中は,
騒音条例で規制されている50dBを超えることもある状況ではありました。
学校側は,夫婦の申立てを受け入れなければならないのでしょうか。
Q49通行人に対する加害行為
小学校6年生(11歳11か月)のAくんが,放課後,校庭でサッカーボール
を用いてフリーキックの練習をしていたとき,ゴールに向けて蹴ったボ
ールがそれて,ゴールの後方の外の道路に転がり出てしまいました。
ちょうど,自動二輪車で通りかかった85歳のBさんは,これを避けよう
として転倒して負傷しました。Bさんのけがについて,Aくんの保護者は
責任を負うのでしょうか。
Q50教師の被害
中学校の休み時間,B教師が3年生のAくんを廊下に呼び出し,授業態度
が悪いなどと注意したところ,Aくんが逆上して,日ごろから持ち歩い
ていたナイフをポケットから取り出してB教師の腹部を刺し,B教師は
死亡してしまいました。B教師の死亡について,誰が責任を負うのでし
ょうか。
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