青林書院



労働関係訴訟恐訂版


リーガル・プログレッシブ


労働関係訴訟恐訂版
 
編・著者渡辺 弘 著
判 型A5判
ページ数290頁
税込価格3,960円(本体価格:3,600円)
発行年月2021年12月
ISBN978-4-417-01827-8
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■解説
ますます充実 労働関係訴訟の基本がわかる決定版!
●労働専門部に所属した元裁判官が,労働法上の論点に応じた,具体的な裁判例
 を題材にした設例を用いて解説!
●設問事例を解析し,労働法上の問題点と紛争解決のための視点を提供し詳解!


本書は,法曹実務家で, これまでに労働法をあまり勉強したことがない人を読者
として想定した労働事件の実務解説書である。この文章は,本書初版のはしがきの
書き出しである。このたび,改訂版を上梓するについて,この点は寸毫も変更はな
い。本書が想定する読者は,法科大学院の院生,司法修習生,若手の弁護士がメイ
ンである。つまり,実務家の立場から法律をある程度勉強し,要件事実論について
もその基本的知識は身に付けているが,これまで労働法についてまとまった勉強を
したことはなかったものの,現状として具体的な労働事件の事案を目の前にして,
労働法の基本から勉強する必要に迫られているという法律家を主な想定読者として
いるのである。この姿は,まさしく約20年前に,初めて東京地方裁判所の労働専門
部に配属された私自身にほかならない。筆者は,このような問題意識をもったうえ
で,初版執筆当時,派遣されていた東京大学法科大学院の教え子や,東京地方裁判
所に配属された司法修習生の希望により労働法の初心者を対象にした勉強会を実施
し,労働専門部に係属していた労働関係訴訟の事件をもとにして設例を創作し,そ
れを題材にして労働法の基本から説き起こす勉強会にしたのである。本書の初版は
,このときの説明用のレジュメと講義ノートをもとにして執筆した。その執筆方針
は,労働関係訴訟について初学者である法律実務家の立場に立って,事案の中から
労働法上の問題点を分析して抽出し,それに関する労働法の基本的知識を一から説
き起こして検討の視点を提供し,あわせて,労働関係訴訟の現状を説明し,また,
多くの裁判例の分析を通して,その問題点に向けての考え方の一端を解説しようと
いうものであった。
 このような執筆の考え方のもとに本書の初版を出版したところ,予想以上に,法
律家を中心として巷間に受け入れられ,刷数を重ねることとなり,私としては,望
外のことであった。そして,その後,本書の改訂版を出版するというお話をいただ
いた。私としては,初版で取り上げていた事例が,全体として労働関係訴訟の事件
としては古くなりつつあると感じており,改訂版出版の意味はあると考えていた。
もっとも,筆者は,初版発刊後,東京地方裁判所の労働専門部から転出しており,
その後も民事事件担当裁判官として,多くの民事事件の中の一部として労働事件
を担当する機会も少なくなかったものの,おのずから労働事件に関する情報量が,
労働専門部に在籍していた当時と比較して圧倒的に小さくなっていたため,いさ
さか逡巡していた。ところが,東京地方裁判所立川支部在籍当時,修習していた司
法修習生有志の希望もあって,労働事件の素材を使用した勉強会を行うこととなり
,その席には,当時の同僚裁判官の有志も参加してもらい,多角的に意見交換をす
ることができた。その意味で,初版を刊行した当時と同様のきっかけが生じたので
ある。
 以上のように,この改訂版は,上記の司法修習生有志による勉強会をきっかけに
して成立した。感謝の意を込めて,勉強会参加者を以下に掲げることとする。
現在は,判事補,検察官及び弁護士となって活躍しておられる諸氏のご協力をいた
だいて,本書の内容が形づくられているからである。 
内野真,沖佑里乃,木村航晟,小貫雄太郎,末永太郎,永井美羽,中島麻子,深澤
俊,本多浩史,水村優太 (五十音順)
 以上のように,この改訂版は,初版と同様のきっかけに始まり,基本的な執筆の
方針はまったく変更はない。それでも,執筆当時の筆者の置かれた状況から,初版
とはいささか変化した面がある。
 第1には,取り上げた事例についてである。本書は,具体的な事例を取り上げて,
その事例に含まれた労働法上の問題点を指摘し,労働法の基本に立ち帰って説明を
するというスタイルを採っている。筆者が初版を執筆した当時は,東京地方裁判所
の労働専門部で,周りには様々な類型の労働関係事件が,数限りなく存在していた
。そこで,どのような論点であれ,周りの事件を題材にして,論点を組み合わせて
事例を創作することができた。ところが,労働専門部を離れると,事件の絶対数も
少なくなり,係属する事件類型も限られたものになった。そこで,筆者としては,
次善の策として,説明する労働法上の論点に応じて,その頃に判例雑誌に掲載され
ていた労働関係訴訟の裁判例を題材に選び,その事例を適宜簡略化して設例を創作
し,論点を付加するために創作した部分も交えて題材を作成した。そして,可能な
限り裁判例の事例を簡略化したものの,取り上げた事例の処理のあり方に議論が及
ぶ場合が多かったことから,事例の簡略化に難渋した。そして,その分析結果を文
献として公刊することを意識すると,どうしても事案に沿った考え方に筆が進みが
ちになる(判例評釈のような側面をもってしまう。)ため,ある程度,事案の内容
を詳しく紹介する必要が生じた。そのため,設例の記載が全体に長いものになった。
 第2に,以上の点と関係するが,このように執筆した改訂版の解説部分を見れば,
初版の記載に比較して,一つ一つの記載が,事案の解析という観点からやや突っ込
んだ内容が多くなっていると思われる。そして,初版以来の本書の基本的方針から
,労働法の基本知識から解き起こし,どの点を押さえておけばよいのかを粘り強く
説明するという側面は,まったく変更がない。そのため,この改訂版は,全体とし
て大部となってしまい,上下巻の 2 分冊となってしまった。ご不便をおかけする
かもしれないが,この点は,切にご容赦願いたい。
 毎度のことながら,改訂版の出版が遅れたのは,筆者の怠慢な性格による。労働
専門部を離れてからは,改訂版の出版を断念せざるを得ないと何度考えたか分から
ないほどである。そして,その間に,平成29年法律第44号民法の一部を改正する法
律が成立し(原則的な施行日は,令和2年4月1日),本書の基本となる民法の改正
があったうえ,平成30年法律第71号働き方改革を推進するための関係法律の整備に
関する法律が成立し,やはり本書の基本となる労働基準法等が改正され(労働基準
法の原則的な施行日は,平成31年4月1日),大幅な加筆が必要となった。これらの
法律については,若手の裁判官や同僚から,様々な刺激を受けながら,自分なりに
勉強することができ,今となっては大変に助かったと考えている。そして,いささ
か負け惜しみのようであるが,これらの新しい法律をこの改訂版に盛り込むことが
できて,かえってよかったと思う。さらに,少なくとも第一稿は裁判官在職中に執
筆したのであるが,この間,筆者自身が裁判官を退職したこともあって,諸般の事
情から,出版がさらに遅れてしまった。それでも,筆者としては,この改訂版が,
文字どおりの「幻の本」にならなかったことをせめてもの救いと考えている。
 本書が成立するにつけて,引き続き,青林書院編集部の長島晴美氏には,文字ど
おり粘り強いご協力をいただいた。改めて,感謝申し上げる次第である。また,現
在,東京地方裁判所判事の池上裕康氏からは,最新の労働関係の法律をめぐる情報
の提供を受け,さらに最近の労働関係訴訟の経験を踏まえた助言をいただく等,ひ
とかたならないご協力を受けた。重ねてお礼を申し上げたい。
 現在は,労働契約関係を中心に,大きな変革のときであると思われる。そうする
と,今後,裁判所に持ち込まれる事件にも,大きな変化が表れる可能性が高いので
はないかと考えられる。本書が,これらの労働事件の紛争解決に,わずかでも寄与
するものになれば,筆者としては,この上ない幸せである。
  令和3年10月
  渡辺 弘


執筆者
渡辺 弘:東京法務局所属 公証人(勤務地 向島公証役場)

■書籍内容
第 7 章 退 職 金
蟻狄Χ眄禅畍△遼‥性質と法的根拠
饗狄Χ眄禅畛件の請求原因事実
   1.一般的な退職金請求事件の請求原因事実
   2.自己都合退職か会社都合退職かの判断
   3.中小企業退職金共済(いわゆる中退共)について
径狄Χ睇垰抖觧由, 減額事由の主張(抗弁)
限狄Χ睇垰抖觧由の合理性
肱働者に対する違法な退職勧奨
宰槎篁例への当てはめ
   1.請求の趣旨282
   2.請求原因282
退職金請求の請求原因について
損害賠償請求の請求原因
   3.抗  弁
退職金不支給規定の適用
権利濫用の成否
コラム7 アメリカの労働仲裁

第 8 章 時間外手当
技間外労働に関する労働基準法の規制及び時間外手当請求の基本的考え方
   1.時間外労働に対する法規制
   2.労働基準法の労働時間に関する規制の枠組み
   3.時間外手当の計算の概要
   4.労働契約上の労働時間の1時間当たり単価
時間外手当の算出の方法
労働契約に基づいて支給される1か月ごとの給与
月当たりの所定労働時間の計算と労働単価の算出
   5.労働時間に関する争い
胸間外手当に対応する手当(固定残業代)についての考え方
   1.基本的考え方
   2.判別要件
   3.金額適格性要件,その他の要件
   4.日本ケミカル事件
   5.本問事例への当てはめ,実際の裁判例
靴修梁召了間外手当請求に関する問題点
   1.管理監督者について
   2.消滅時効
   3.付 加 金
   4.遅延損害金
コラム8 時間外労働事件

第 9 章 うつ病自殺と労災保険制度
杵災補償制度の基本構造
   1.労働基準法上の労災補償制度
   2.労災保険制度
   3.民法上の損害賠償請求権
   4.労働協約等による上積み補償
僅災の保険給付の手続
系災の保険給付のための要件
原般馨紊亮隻
慌畚塗蕾戮砲茲訐鎖西祿欧龍般概因性に関する通達
   1.はじめに
   2.対象となる精神障害
   3.精神障害発症の機序―ストレス脆弱性説
   4.業務上の心理的負荷について
   5.業務外の心理的負荷について
   6.専門家意見の聴取
   7.認定基準の判断指針からの改良点,留意点
宰槎篁例に沿った検討
   1.総  論
   2.対象疾病の認定について
   3.心理的負荷の程度について
コラム9 うつ病

第 10 章 不当労働行為
杵働組合法,不当労働行為について
   1.はじめに
   2.不当労働行為の類型
   3.不当労働行為の要件
労働組合法上の「使用者」について
職制上の上司等の行為を使用者の行為と評価できるか
労働関係との近接性
   4.不利益取扱い
不利益取扱いの意義
不当労働行為意思
理由の競合
   5.団体交渉拒否
   6.支配介入
局堙労働行為の救済方法
   1.労働委員会による救済方法
労働委員会による救済
労働委員会による行政上の救済方法
救済命令の効力
抽象的不作為命令(救済命令の類型1)
ポスト・ノーティス(文書の掲示)(救済命令の類型2)
バックペイ(救済命令の類型3)
損害賠償命令
   2.私法上の救済
私法上の救済の可能性
法律行為の無効
団体交渉を求め得る地位の確認
損害賠償請求権
桂槎篁例に即した検討
   1.本件言動が支配介入に該当するか
   2.本件雇止めが不利益取扱いに該当するか
   3.団体交渉拒否の成否について
コラム10 労働審判

第 11 章 労働審判制度(労働審判手続申立書・答弁書)
杵働審判制度
僅働審判手続の概要
   1.労働審判手続の申立て・管轄
   2.期日の指定と当事者の呼出し
期日の指定と当事者の呼出し
不適法な申立て
期日の変更に関する取扱い
代理人について
   3.第1回期日
   4.第2回, 第3回期日
   5.労働審判
啓蠡柿択
限緲人としての労働審判手続の事前準備
   1.当事者の言い分を労働審判委員会に理解させるという観点
   2.話合いの姿勢についての基本的なスタンスを考えておくべきであること
肱働審判手続申立書
   1.「申立ての趣旨」について
総  論 
割増賃金の付加金請求
労働審判独特の請求の趣旨の記載について
時間外手当の請求を行うことの適否
申立費用
   2.「申立ての理由」について
総  論
申立ての理由に記載することが必要な事項
   3.「予想される争点とそれに対する申立人の主張」について
相手方から出されることが予想される争点への反論
必要な法的分析を行うことの重要性
書証の記載 
   4.申立てに至る経緯の概要について
催 弁 書
   1.答弁書作成の基本的な考え方
   2.答弁書の記載事項(総論)
   3.答弁及び事実の認否について
   4.答弁を理由づける具体的な事実及び予想される争点に関連する重要な事実
    について
   5.陳述書の要否ないしその役割
   6.申立てに至る経緯の概要について
   事項索引・判例索引

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