青林書院



労働関係訴訟飢訂版


リーガル・プログレッシブ


労働関係訴訟飢訂版
 
編・著者渡辺 弘 著
判 型A5判
ページ数292頁
税込価格3,960円(本体価格:3,600円)
発行年月2021年12月
ISBN978-4-417-01826-1
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■解説
ますます充実 労働関係訴訟の基本がわかる決定版!
●労働専門部に所属した元裁判官が,労働法上の論点に応じた,具体的な裁判例
 を題材にした設例を用いて解説!
●設問事例を解析し,労働法上の問題点と紛争解決のための視点を提供し詳解!


 本書は,法曹実務家で, これまでに労働法をあまり勉強したことがない人
を読者として想定した労働事件の実務解説書である。この文章は,本書初版
のはしがきの書き出しである。このたび,改訂版を上梓するについて,この
点は寸毫も変更はない。本書が想定する読者は,法科大学院の院生,司法修
習生,若手の弁護士がメインである。つまり,実務家の立場から法律をある
程度勉強し,要件事実論についてもその基本的知識は身に付けているが,こ
れまで労働法についてまとまった勉強をしたことはなかったものの,現状と
して具体的な労働事件の事案を目の前にして,労働法の基本から勉強する必
要に迫られているという法律家を主な想定読者としているのである。この姿
は,まさしく約20年前に,初めて東京地方裁判所の労働専門部に配属され
た私自身にほかならない。筆者は,このような問題意識をもったうえで,初
版執筆当時,派遣されていた東京大学法科大学院の教え子や,東京地方裁判
所に配属された司法修習生の希望により労働法の初心者を対象にした勉強会
を実施し,労働専門部に係属していた労働関係訴訟の事件をもとにして設例
を創作し,それを題材にして労働法の基本から説き起こす勉強会にしたので
ある。本書の初版は,このときの説明用のレジュメと講義ノートをもとにし
て執筆した。その執筆方針は,労働関係訴訟について初学者である法律実務
家の立場に立って,事案の中から労働法上の問題点を分析して抽出し,それ
に関する労働法の基本的知識を一から説き起こして検討の視点を提供し,あ
わせて,労働関係訴訟の現状を説明し,また,多くの裁判例の分析を通して,
その問題点に向けての考え方の一端を解説しようというものであった。
 このような執筆の考え方のもとに本書の初版を出版したところ,予想以上
に,法律家を中心として巷間に受け入れられ,刷数を重ねることとなり,私
としては,望外のことであった。そして,その後,本書の改訂版を出版する
というお話をいただいた。私としては,初版で取り上げていた事例が,全体
として労働関係訴訟の事件としては古くなりつつあると感じており,改訂版
出版の意味はあると考えていた。もっとも,筆者は,初版発刊後,東京地方
裁判所の労働専門部から転出しており,その後も民事事件担当裁判官として,
多くの民事事件の中の一部として労働事件を担当する機会も少なくなかった
ものの,おのずから労働事件に関する情報量が,労働専門部に在籍していた
当時と比較して圧倒的に小さくなっていたため,いささか逡巡していた。と
ころが,東京地方裁判所立川支部在籍当時,修習していた司法修習生有志の
希望もあって,労働事件の素材を使用した勉強会を行うこととなり,その席
には,当時の同僚裁判官の有志も参加してもらい,多角的に意見交換をする
ことができた。その意味で,初版を刊行した当時と同様のきっかけが生じた
のである。
 以上のように,この改訂版は,上記の司法修習生有志による勉強会をきっ
かけにして成立した。感謝の意を込めて,勉強会参加者を以下に掲げること
とする。現在は,判事補,検察官及び弁護士となって活躍しておられる諸氏
のご協力をいただいて,本書の内容が形づくられているからである。 

内野真,沖佑里乃,木村航晟,小貫雄太郎,末永太郎,永井美羽,中島麻子,
深澤俊,本多浩史,水村優太 (五十音順)
 以上のように,この改訂版は,初版と同様のきっかけに始まり,基本的な
執筆の方針はまったく変更はない。それでも,執筆当時の筆者の置かれた状
況から,初版とはいささか変化した面がある。
 第1には,取り上げた事例についてである。本書は,具体的な事例を取り
上げて,その事例に含まれた労働法上の問題点を指摘し,労働法の基本に立
ち帰って説明をするというスタイルを採っている。筆者が初版を執筆した当
時は,東京地方裁判所の労働専門部で,周りには様々な類型の労働関係事件
が,数限りなく存在していた。そこで,どのような論点であれ,周りの事件
を題材にして,論点を組み合わせて事例を創作することができた。ところが
,労働専門部を離れると,事件の絶対数も少なくなり,係属する事件類型も
限られたものになった。そこで,筆者としては,次善の策として,説明する
労働法上の論点に応じて,その頃に判例雑誌に掲載されていた労働関係訴訟
の裁判例を題材に選び,その事例を適宜簡略化して設例を創作し,論点を付
加するために創作した部分も交えて題材を作成した。そして,可能な限り裁
判例の事例を簡略化したものの,取り上げた事例の処理のあり方に議論が及
ぶ場合が多かったことから,事例の簡略化に難渋した。そして,その分析結
果を文献として公刊することを意識すると,どうしても事案に沿った考え方
に筆が進みがちになる(判例評釈のような側面をもってしまう。)ため,あ
る程度,事案の内容を詳しく紹介する必要が生じた。そのため,設例の記載
が全体に長いものになった。
 第2に,以上の点と関係するが,このように執筆した改訂版の解説部分を
見れば,初版の記載に比較して,一つ一つの記載が,事案の解析という観点
からやや突っ込んだ内容が多くなっていると思われる。そして,初版以来の
本書の基本的方針から,労働法の基本知識から解き起こし,どの点を押さえ
ておけばよいのかを粘り強く説明するという側面は,まったく変更がない。
そのため,この改訂版は,全体として大部となってしまい,上下巻の 2 分
冊となってしまった。ご不便をおかけするかもしれないが,この点は,切に
ご容赦願いたい。
 毎度のことながら,改訂版の出版が遅れたのは,筆者の怠慢な性格による。
労働専門部を離れてからは,改訂版の出版を断念せざるを得ないと何度考え
たか分からないほどである。そして,その間に,平成29年法律第44号民
法の一部を改正する法律が成立し(原則的な施行日は,令和2年4月1日),
本書の基本となる民法の改正があったうえ,平成30年法律第71号働き方
改革を推進するための関係法律の整備に関する法律が成立し,やはり本書の
基本となる労働基準法等が改正され(労働基準法の原則的な施行日は,平成
31年4月1日),大幅な加筆が必要となった。これらの法律については,若手
の裁判官や同僚から,様々な刺激を受けながら,自分なりに勉強することが
でき,今となっては大変に助かったと考えている。そして,いささか負け惜
しみのようであるが,これらの新しい法律をこの改訂版に盛り込むことがで
きて,かえってよかったと思う。さらに,少なくとも第一稿は裁判官在職中
に執筆したのであるが,この間,筆者自身が裁判官を退職したこともあって
,諸般の事情から,出版がさらに遅れてしまった。それでも,筆者としては
,この改訂版が,文字どおりの「幻の本」にならなかったことをせめてもの
救いと考えている。
 本書が成立するにつけて,引き続き,青林書院編集部の長島晴美氏には,
文字どおり粘り強いご協力をいただいた。改めて,感謝申し上げる次第であ
る。また,現在,東京地方裁判所判事の池上裕康氏からは,最新の労働関係
の法律をめぐる情報の提供を受け,さらに最近の労働関係訴訟の経験を踏ま
えた助言をいただく等,ひとかたならないご協力を受けた。重ねてお礼を申
し上げたい。
 現在は,労働契約関係を中心に,大きな変革のときであると思われる。そ
うすると,今後,裁判所に持ち込まれる事件にも,大きな変化が表れる可能
性が高いのではないかと考えられる。本書が,これらの労働事件の紛争解決
に,わずかでも寄与するものになれば,筆者としては,この上ない幸せであ
る。
  令和3年10月
  渡辺 弘


執筆者
渡辺 弘:東京法務局所属 公証人(勤務地 向島公証役場)



■書籍内容
第 1 章
●労働契約の終了(その1)
●普通解雇
飢鮓曚陵効性をめぐる法律関係
   1.民法上の解雇自由の原則
   2.強行法規違反 (民法の原則に対する例外)
   3.解雇権濫用法理
   4.解雇権濫用法理において主張可能な事情
   5.就業規則による解雇制限
恐鮓柩醜陲された場合の法律関係,解雇が無効である場合の法律効果
   1.解雇予告がなされた期間の労働契約の内容
   2.解雇無効の場合の法律効果
群鮓枳妓訴訟の攻撃防御方法
   1.請求の趣旨
   2.地位確認請求の請求原因事実
   3.地位確認請求の抗弁以下の攻撃防御方法
   4.解雇後の未払賃金請求の請求原因事実
庫槎篁例に即した分析
   1.解雇権濫用の成否について
   2.男女雇用機会均等法違反の事実について
   3.認められる未払賃金について
コラム1解雇権濫用法理について

第 2 章
●労働契約の終了(その2)
●試用期間中の解雇
飢鮓曚陵効性をめぐる法律関係
   1.本件労働契約の性質
   2.試用期間中の解雇が無効になった場合の法律関係
   3.本問事例への当てはめ
恐鮓柩醜雉遡外稟
   1.解雇予告義務の内容
   2.解雇予告義務違反の解雇の効力
   3.本問事例における解雇予告手当額の試算
軍篩賃金(時間外手当)
   1.時間外手当請求の考え方
   2.時間外手当(割増賃金)計算の基本的な考え方
基本的な計算方法
時間外労働時間について
顕鮓曚傍因する不法行為の成立
   1.解雇と不法行為
   2.復職をしない労働者の得べかりし利益の損害賠償
コラム2傷口の浅いうちの解決

第 3 章
●労働契約の終了(その3)
●有期労働契約の更新の可否,無期労働契約への転換
鬼間の定めのある労働契約の位置づけ
   1.概  観
   2.有期労働契約の中途の解雇
   3.有期労働契約の雇止め
   4.不更新合意,更新限度条項
桂槎篁例に即した雇用継続の期待の合理性,雇止めの客観的合理性・社会的相当性
   1.労働契約法 19 条1号の適用の可能性
   2.雇用継続の期待の合理性
   3.雇止めの客観的合理性・社会的相当性
   4.雇止めが無効となった場合の労働契約の効力
   5.本問事例の本件予備的雇止め1の効力
庫槎篁例において, X・Y間の労働契約が無期労働契約となったとの見解
   1.神戸弘陵学園事件の最高裁判例(試用期間と解する余地)
   2.有期労働契約者の無期労働契約への転換権
   3.本問事例における最終的な解決方法
コラム3和解条項

第 4 章
●労働契約の終了(その4)
●懲戒解雇
議┣解雇をめぐる法律問題について
   1.懲戒解雇と普通解雇との異同
仰┣解雇の法律効果
慶┣解雇の要件
   1.懲戒解雇の根拠
   2.懲戒解雇の要件
懲戒事由該当性
懲戒解雇と諭旨解雇
懲戒解雇の相当性
   3.懲戒解雇の意思表示と普通解雇の意思表示との関係
   4.懲戒解雇の普通解雇への転換
献札シュアルハラスメント
   1.セクシュアルハラスメント行為をめぐる法律状況
   2.セクシュアルハラスメントの成否に関する検討要素
   3.セクシュアルハラスメントを理由とする懲戒処分
好僖錙璽魯薀好瓮鵐
   1.パワーハラスメントをめぐる問題状況
   2.パワーハラスメントをめぐる裁判例の状況
   3.パワーハラスメントを理由とする懲戒処分
宰槎笋了例への当てはめ
   1.請求の趣旨
   2.請求原因と抗弁
コラム4「ハラスメントゲーム」

第 5 章
●労働契約の終了 その5)
●休職後の労働契約終了,就業規則の不利益変更
欺病休職制度について
教擔Υ間の解消
圭業規則一般論
現業規則の実質的周知
構業規則の不利益変更
魂鮓杆紊虜峠⊃
史槎篁例の分析
   1.問題の所在
   2.中間収入の控除
   3.再就職後の元の職場への復職の意思
史槎篁例の分析
   1.就業規則の不利益変更
   2.職種限定契約について
   3.職場復帰の可否の認定について
   4.Xの再就職の取扱い
 復職の意思の有無
 中間収入の控除
コラム5労働事件での「正解」

第 6 章 降級,給与減額,配転
疑融制度(職位,職能等)の基本的な構造
   1.給与制度の変遷
   2.職能資格制度と職務(役割)等級制
   3.職位という評価軸についての降格
暁枌崚彰
   1.配転命令をめぐる基本的な考え方
   2.労働契約による限定契約
   3.配転命令権についての権利濫用法理
桂槎篁例に沿った具体的な攻撃防御方法
   1.請求の趣旨
降格を争点とする訴訟事件における請求の趣旨
配転の無効確認を求める請求の趣旨
   2.降格処分に関する攻撃防御方法
   3.本問事例における降格の適法性
   4.労働者による減額の同意
   5.本件配転をめぐる攻撃防御方法
   6.職種限定契約について
   7.配転命令権の濫用
コラム6 日本式経営
    事項索引・判例索引

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