青林書院



現代型民事紛争の実務


現代型民事紛争の実務
 
編・著者河村 浩 編著
判 型A5判
ページ数336頁
税込価格4,400円(本体価格:4,000円)
発行年月2020年4月
ISBN978-4-417-01789-9
在庫有り
  
在庫があります

■解説
現実の複雑な民事紛争に,どのように対処したらよいか?

■総論では適正・迅速な紛争解決のための基礎理論を概説
■各論では紛争の実情を紹介,実務を下支えする基礎理論に忠実に紛争への対処方法を詳解
●紛争解決のための基礎理論に基づく思考のトレーニングができる
●実際の実務における基礎理論の実践方法を学べる


本書は,現実の複雑な民事紛争の実情の一端を具体的設例を通じて紹介すると
ともに,一貫性をもった適正・迅速な民事紛争の解決のためには,基礎理論に基
理論分析が何よりも重要であることを提唱する書である。もう少し,この点を具
体的にいうと,「民事紛争の一生」(保全→訴え提起→争点整理→事実認定→判
決・和解→執行(登記)。手続途中で,債務者の破産手続開始決定がなされるこ
とがある。)という力動的な視点から,その局面ごとのミクロな分析に加えて,
全体的視点からのマクロな分析との総合的理論分析(これらの複眼的視点のフィ
ードバック)が重要であることを強調し,実務におけるこのような総合的な理論
の実践を提案する書である。
 もとより,本書は,今般成立した,「民法の一部を改正する法律」(平成29年
法律第44号。いわゆる債権法の改正法)及び「民法及び家事事件手続法の一部を
改正する法律」(平成30年法律第72号。いわゆる相続法の改正法)にも対応して
いる(ただし,本書では,民法4条の成年年齢を18歳と改める等の内容の「民法
の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号)には,特に触れていない。)。
 本書は,平成20年から平成23年までの3年間,河村が東京地方裁判所から上智
大学法科大学院(民事裁判科目担当)に派遣されていた時期に,河村の授業を受
講してくれた秋山経生,岩井佑介及び齋藤国雄の3氏(現在弁護士)と,約5年間
にわたり,多数回の協議を重ね,あたかも合議事件の判決を起案するかのように
細かい点まで打ち合わせて検討し,3氏におかれては,弁護士としてのそれぞれ
の専門分野の知識・経験を生かして,執筆されたものである。
 本書のメッセージが,上記のとおり,現代型民事紛争の実情紹介及び適正・迅
速な民事紛争の解決のための理論分析の実践にあることに照らすと,本書は,司
法修習生及び経験の浅い法曹(若手弁護士,新任判事補,任官後間がない簡裁判
事)の方々のみならず,中堅・ベテラン法曹の方々にも,知識の再確認・リフレ
ッシュのために活用していただけるものと考える。
 また,本書は,現代型民事紛争の実情の一端を紹介するという意味も有するの
で,この点では,民事法の研究者のみならず,法曹を志望する人(法科大学院生)
,法的知識を活用して法的事務に携わりたいと考える全ての人(司法書士,行政
書士などの専門職の方々のほか,官公庁・民間企業で働く方々)にお薦めするこ
とができるものと考える。
 近年,民事紛争の中心は,従来の大量に訴訟提起された過払金返還請求訴訟か
ら,より多様で複雑化した民事紛争(不動産,契約,非定型的な損害賠償をめぐ
る紛争,親族間の複雑な紛争等)へと移行しつつある。このような現代型民事紛
争を適切・迅速に解決し,紛争解決の説得性・納得性を高めるためには,自己の
経験や直感のみに頼るのではなく,体系化された理論に基づく論理的な分析(実
務的処理の正当化根拠の探求)が必要不可欠であると考える。そして,理論分析
を重視するといっても,それが民事紛争が展開する局面ごとのミクロな分析にと
どまっているのでは不十分であろう。なぜならば,現実の民事裁判は,民法等の
実体法と民事訴訟法等の訴訟法のみならず,民事紛争が展開する局面ごとに民事
保全法,民事執行法,破産法及び不動産登記法などの多くの関係法令と密接に連
動しながら力動的に営まれているから,手続の発展段階及び関係法令との連動性
を視野に入れた総合的・多角的な検討をするものでなければ,民事紛争の適正・
迅速な解決に真に資するものとはいえないからである。
 そこで,本書の構成としては,まず,総論として,民事紛争解決のための基礎
理論として,民事裁判の基礎理論(訴訟物理論,要件事実論),事実認定論,争
点整理理論,判決書理論及び和解理論,並びに民事保全,民事執行,破産及び登
記の各基礎理論について概説した上で,次に,各論として,第1審裁判所で実際
に取り扱うことが多い訴訟事件(いわゆる単独事件を念頭に置く。)を機能的に
分類し,その訴訟類型ごとに基礎理論を適用し,その基礎理論とのフィードバッ
クを意識しなから,「民事紛争の一生」という力動的な視点から掘り下げた理論
分析を加えることとした(なお,本書第1章以下で取り上げている事案は,いず
れも架空の事例であることをお断りしておく。)。
 その際,できる限り,法律の趣旨(制度趣旨)を重視するようにした。法律が
どのような趣旨で成立したのかという法律の成り立ちは,古くは,ローマ法に淵
源を持つものであり,本書の各章の扉絵では,ローマ法諺を掲げ,各章を読み解
くためのイントロダクションとし,各章の内容では,類書では,通り一遍の理由
しか付されていない論点や全く論じられていないと思われる論点についても,で
きる限り,法律の趣旨に遡った丁寧な理由付けを付するよう試みた(この制度の
成り立ちという点について,歴史的資料を渉猟し詳細に分析を加えた,園尾隆司
『民事訴訟・執行・破産の近現代史』(弘文堂,2009年)が極めて有益である。
)。
 さらに,実務的に重要な訴額算定,管轄,送達,移送,訴訟救助,執行停止,
調停前置等のやや細目にわたる手続的事項及び時機に後れた攻撃防御方法の却下
,補助参加の申出,文書提出命令申立ての判断等の付随的事項についても,でき
る限り,言及し,その論理的手順をフローチャート(移送申立て・文書提出命令
申立ての判断手順)等で視覚化し,その規範構造を分析するよう努めた。という
のも,このような細目にわたる手続的事項や付随的事項にも,民事裁判の基礎理
論に係るフィロソフィーが現れていると考えられるからである。
 民事紛争を総合的・多角的に,かつ,基礎理論に基づき理論的に分析しようと
する本書の試みが,どの程度成功しているのかは,読者諸氏のご判断にお任せす
るほかないが,今後も,われわれの日々の実務経験を通じてよりよい内容に改め
ていきたいと考えている。
 念のため,申し添えるが,本書は,著者らが個人の立場で執筆したものであり
,各著者の所属する組織の公的見解と無関係である。
 最後に,園尾隆司弁護士(元東京高裁部総括判事)から過分な推薦の辞を賜っ
た。この場をお借りして厚くお礼を申し上げたい。
 また,本書の出版には,青林書院編集部・長島晴美氏に種々のご支援・ご尽力
を賜った。執筆者一同,厚くお礼申し上げる。

令和2年3月
執筆者を代表して  河村 浩


編著者
河村 浩:東京高裁判事を経て,現在,横浜地裁部総括判事

執筆者
齋藤 国雄:一般民事系法律事務所,通信事業会社のインハウスを経て,現在,LINE株式
      会社法務室に所属。
秋山 経生:日蓮宗僧侶
      長谷川法律事務所勤務,立正大学非常勤講師,宗教法人制度の
      運用等に関する調査研究協力者
岩井 佑介:約4年間の企業法務を主とする法律事務所勤務を経て,現在,株式会社
      LIXIL Legal部門コンプライアンス部に所属






■書籍内容
第3章 損害賠償請求訴訟
11 自転車交通事故による損害賠償請求訴訟
─高次脳機能障害
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
  12 契約締結上の過失に基づく損害賠償請求訴訟 
    ─黙示の契約締結,契約準備段階の過失
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定・法的評価
(1)争  点(2)法的評価の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  13 安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求訴訟
    ─ヘリコプターの墜落事故,訴訟上の救助の申立て
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄(3)訴訟救助
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
5 保全と執行
  14 労働者引き抜きによる損害賠償請求訴訟 
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  15 妻が不貞相手を訴える不貞行為に基づく損害賠償請求訴訟
    ─民事訴訟法16条・17条に基づく移送
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  16 共同不法行為に基づく損害賠償請求訴訟,会社法429条1項に基づく
    取締役に対する損害賠償請求訴訟
 1 訴訟物等……364
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
   Column4 裁判実務と確率論その2─統計学における区間推定

第4章 消費者契約・インターネット関係訴訟
  17自動車の引渡請求訴訟
    ─消費者契約法に基づく取消しと二重譲渡,契約の解釈,主物と従物
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解 
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  18 インターネットによる商品取引訴訟
    ─電子消費者契約と事業者の表示の錯誤,移送と自庁処理
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  19 発信者情報開示請求訴訟
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄(3)発信者情報開示請求の手順
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係(5)「権利の侵害に係る発信者情報」
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  IT用語の解説
  Column5 電子署名と二段の推定

第5章 宗教関係訴訟
  20 遺骨埋蔵妨害排除請求訴訟
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  21 宗教法人法に基づく書類の閲覧請求訴訟
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点 (2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  Column6 寺檀紛争
  Column7 ビル型納骨堂

第6章 親族・相続関係訴訟 
  22 夫婦関係・離婚請求訴訟
    ─有責配偶者からの離婚請求,養育費支払の予備的附帯処分の申立て
1 訴訟物等
(1)訴訟物及び申立て(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  23 親子関係・人身保護法に基づく子の引渡請求─対非監護権者型
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管轄,移送申立て,決定に対する不服申立て等
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  24 相続関係・預金払戻請求訴訟
    ─被相続人死亡前後の払戻し,不当利得構成,不法行為構成
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  25遺言・遺言無効確認訴訟
    ─自筆証書遺言,意思無能力(遺言無能力)
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  26遺産分割
    ─遺産分割協議書の証書真否確認の訴え
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行

第7章 責任財産の保全・執行関係訴訟
  27 請求異議の訴え─意思無能力
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  28第三者異議の訴えと詐害行為取消訴訟
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  29執行判決訴訟 
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
   Column8 不祥事の防止

Copyright © SEIRIN SHOIN All Rights Reserved.