青林書院



現代型民事紛争の実務


現代型民事紛争の実務
 
編・著者河村 浩 編著
判 型A5判
ページ数330頁
税込価格4,400円(本体価格:4,000円)
発行年月2020年4月
ISBN978-4-417-01788-2
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■解説
現実の複雑な民事紛争に,どのように対処したらよいか?
■総論では適正・迅速な紛争解決のための基礎理論を概説
■各論では紛争の実情を紹介,実務を下支えする基礎理論に忠実に紛争への対処方法を詳解
●紛争解決のための基礎理論に基づく思考のトレーニングができる
●実際の実務における基礎理論の実践方法を学べる


本書は,現実の複雑な民事紛争の実情の一端を具体的設例を通じて紹介すると
ともに,一貫性をもった適正・迅速な民事紛争の解決のためには,基礎理論に基
理論分析が何よりも重要であることを提唱する書である。もう少し,この点を具
体的にいうと,「民事紛争の一生」(保全→訴え提起→争点整理→事実認定→判
決・和解→執行(登記)。手続途中で,債務者の破産手続開始決定がなされるこ
とがある。)という力動的な視点から,その局面ごとのミクロな分析に加えて,
全体的視点からのマクロな分析との総合的理論分析(これらの複眼的視点のフィ
ードバック)が重要であることを強調し,実務におけるこのような総合的な理論
の実践を提案する書である。
 もとより,本書は,今般成立した,「民法の一部を改正する法律」(平成29年
法律第44号。いわゆる債権法の改正法)及び「民法及び家事事件手続法の一部を
改正する法律」(平成30年法律第72号。いわゆる相続法の改正法)にも対応して
いる(ただし,本書では,民法4条の成年年齢を18歳と改める等の内容の「民法
の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号)には,特に触れていない。)。
 本書は,平成20年から平成23年までの3年間,河村が東京地方裁判所から上智
大学法科大学院(民事裁判科目担当)に派遣されていた時期に,河村の授業を受
講してくれた秋山経生,岩井佑介及び齋藤国雄の3氏(現在弁護士)と,約5年間
にわたり,多数回の協議を重ね,あたかも合議事件の判決を起案するかのように
細かい点まで打ち合わせて検討し,3氏におかれては,弁護士としてのそれぞれ
の専門分野の知識・経験を生かして,執筆されたものである。
 本書のメッセージが,上記のとおり,現代型民事紛争の実情紹介及び適正・迅
速な民事紛争の解決のための理論分析の実践にあることに照らすと,本書は,司
法修習生及び経験の浅い法曹(若手弁護士,新任判事補,任官後間がない簡裁判
事)の方々のみならず,中堅・ベテラン法曹の方々にも,知識の再確認・リフレ
ッシュのために活用していただけるものと考える。
 また,本書は,現代型民事紛争の実情の一端を紹介するという意味も有するの
で,この点では,民事法の研究者のみならず,法曹を志望する人(法科大学院生)
,法的知識を活用して法的事務に携わりたいと考える全ての人(司法書士,行政
書士などの専門職の方々のほか,官公庁・民間企業で働く方々)にお薦めするこ
とができるものと考える。
 近年,民事紛争の中心は,従来の大量に訴訟提起された過払金返還請求訴訟か
ら,より多様で複雑化した民事紛争(不動産,契約,非定型的な損害賠償をめぐ
る紛争,親族間の複雑な紛争等)へと移行しつつある。このような現代型民事紛
争を適切・迅速に解決し,紛争解決の説得性・納得性を高めるためには,自己の
経験や直感のみに頼るのではなく,体系化された理論に基づく論理的な分析(実
務的処理の正当化根拠の探求)が必要不可欠であると考える。そして,理論分析
を重視するといっても,それが民事紛争が展開する局面ごとのミクロな分析にと
どまっているのでは不十分であろう。なぜならば,現実の民事裁判は,民法等の
実体法と民事訴訟法等の訴訟法のみならず,民事紛争が展開する局面ごとに民事
保全法,民事執行法,破産法及び不動産登記法などの多くの関係法令と密接に連
動しながら力動的に営まれているから,手続の発展段階及び関係法令との連動性
を視野に入れた総合的・多角的な検討をするものでなければ,民事紛争の適正・
迅速な解決に真に資するものとはいえないからである。
 そこで,本書の構成としては,まず,総論として,民事紛争解決のための基礎
理論として,民事裁判の基礎理論(訴訟物理論,要件事実論),事実認定論,争
点整理理論,判決書理論及び和解理論,並びに民事保全,民事執行,破産及び登
記の各基礎理論について概説した上で,次に,各論として,第1審裁判所で実際
に取り扱うことが多い訴訟事件(いわゆる単独事件を念頭に置く。)を機能的に
分類し,その訴訟類型ごとに基礎理論を適用し,その基礎理論とのフィードバッ
クを意識しなから,「民事紛争の一生」という力動的な視点から掘り下げた理論
分析を加えることとした(なお,本書第1章以下で取り上げている事案は,いず
れも架空の事例であることをお断りしておく。)。
 その際,できる限り,法律の趣旨(制度趣旨)を重視するようにした。法律が
どのような趣旨で成立したのかという法律の成り立ちは,古くは,ローマ法に淵
源を持つものであり,本書の各章の扉絵では,ローマ法諺を掲げ,各章を読み解
くためのイントロダクションとし,各章の内容では,類書では,通り一遍の理由
しか付されていない論点や全く論じられていないと思われる論点についても,で
きる限り,法律の趣旨に遡った丁寧な理由付けを付するよう試みた(この制度の
成り立ちという点について,歴史的資料を渉猟し詳細に分析を加えた,園尾隆司
『民事訴訟・執行・破産の近現代史』(弘文堂,2009年)が極めて有益である。
)。
 さらに,実務的に重要な訴額算定,管轄,送達,移送,訴訟救助,執行停止,
調停前置等のやや細目にわたる手続的事項及び時機に後れた攻撃防御方法の却下
,補助参加の申出,文書提出命令申立ての判断等の付随的事項についても,でき
る限り,言及し,その論理的手順をフローチャート(移送申立て・文書提出命令
申立ての判断手順)等で視覚化し,その規範構造を分析するよう努めた。という
のも,このような細目にわたる手続的事項や付随的事項にも,民事裁判の基礎理
論に係るフィロソフィーが現れていると考えられるからである。
 民事紛争を総合的・多角的に,かつ,基礎理論に基づき理論的に分析しようと
する本書の試みが,どの程度成功しているのかは,読者諸氏のご判断にお任せす
るほかないが,今後も,われわれの日々の実務経験を通じてよりよい内容に改め
ていきたいと考えている。
 念のため,申し添えるが,本書は,著者らが個人の立場で執筆したものであり
,各著者の所属する組織の公的見解と無関係である。
 最後に,園尾隆司弁護士(元東京高裁部総括判事)から過分な推薦の辞を賜っ
た。この場をお借りして厚くお礼を申し上げたい。
 また,本書の出版には,青林書院編集部・長島晴美氏に種々のご支援・ご尽力
を賜った。執筆者一同,厚くお礼申し上げる。

令和2年3月
執筆者を代表して  河村 浩


編著者
河村 浩:東京高裁判事を経て,現在,横浜地裁部総括判事

執筆者
齋藤 国雄:一般民事系法律事務所,通信事業会社のインハウスを経て,現在,LINE株式
      会社法務室に所属。
秋山 経生:日蓮宗僧侶
      長谷川法律事務所勤務,立正大学非常勤講師,宗教法人制度の
      運用等に関する調査研究協力者
岩井 佑介:約4年間の企業法務を主とする法律事務所勤務を経て,現在,株式会社
      LIXIL Legal部門コンプライアンス部に所属

■書籍内容
序 章 民事紛争解決のための基礎理論
─いかに民事紛争の本質を見抜き,人に事実を認識させ,
    人を説得するのか?
第1 基礎理論概説
1 意義と目的
2 基礎理論相互の各目的の違い─基礎理論の適用(守備)範囲
3 基礎理論の修正(基準時点の修正及び内容の修正)
4 基礎理論とマクロな全体的視点・フィードバック
5 まとめ
第2 民事裁判の基礎理論 
1 要件事実
(1)意義と目的─立証責任(2)評価的要件の要件事実─評価根拠事実と評価
   障害事実(3)要件事実の時的要素(4)請求原因,抗弁,再抗弁(5)ブ
   ロック・ダイアグラム(6)要件事実の機能と事案の解明
2 訴訟物理論
(1)意義と目的(2)訴訟物と請求の趣旨(判決主文)(3)訴訟物の表記方法
   ・訴訟物について検討すべき事項(4)訴訟物の内容(5)訴訟物の異同・
   個数─訴訟物の可分・不可分(6)訴訟物の併合形態(7)訴訟物の価額等
3 要件事実論
(1)意義と目的(2)主張責任(3)主張責任と立証責任との関係─主張責任の
   所在と立証責任の所在の一致原則(4)訴訟物の判断と立証責任との関係
   ─権利存続の原則(5)立証責任の分配基準─民法の解釈による規範構造分
   析(裁判規範としての民法説)(6)制度趣旨の確定と一般的・類型的な観
   点からの立証の困難性の考慮等(7)規範構造・攻撃防御の構造の分析その1
   ─要件事実の可分・不可分(8)規範構造・攻撃防御の構造の分析その2─評
   価的要件等の構造分析(9)規範構造・攻撃防御の構造の分析その3─明文又
   は解釈による立証責任対象事実の変更(10)規範構造・攻撃防御の構造の分
   析その4─要件事実の訴訟機能の可分・不可分(せり上がり,a+b・予備的
   主張)
4 事実認定論
(1)意義と目的(2)事実認定の本質と事実認定の構造(事実認定のゴールとプ
   ロセス)(3)事実認定のゴール(到達点)の構造─事実認定をなし得る必
   要十分条件(4)事実認定のプロセスのミクロな構造その1─証拠構造(5)
   事実認定のプロセスのミクロな構造その2─証明構造(6)事実認定のプロセ
   スのマクロな構造─事件のスジとスワリ(7)事実認定の構造全体に適用さ
   れるルール─経験則
5 争点整理理論
(1)意義と目的・機能(2)争点整理理論の前提となる主張責任の所在と立証責
   任の所在の一致原則(3)争点の意義,争点に関する釈明権行使・心証開示
   の程度(4)釈明権行使その1─訴訟物に関する釈明権行使(5)釈明権行使
   その2─要件事実に関する釈明権行   使(6)釈明権行使その3─立証勧
   告・立証計画の策定(7)争点整理における他の方策その1─時機に後れた
   攻撃防御方法の却下(8)争点整理における他の方策その2─中間判決(9)
   争点整理と和解協議との関係(10)
6 判決書理論
(1)意義と目的(2)判決主文・訴訟物の摘示・事案の概要(新様式判決書)の
   記載(3)争点・要件事実の摘示(4)事実認定の説示(5)中間判決書(6)
   まとめ
7 和解理論
(1)意義と目的(2)和解を規律するルールその1─判決規範と和解規範(法の内
   的視点)(3)和解を規律するルールその2─当事者の和解成立へのインセン
   ティブ(誘因)(法の外的視点)(4)まとめ
第3 民事保全の基礎理論
1 意義と目的
2 手続の内容
3 基礎理論の適用と修正
(1)民事保全の訴訟物(保全物)と要件事実論の修正(2)事実認定論の修正─
   疎明主義(証明度及び解明度の軽減)(3)争点整理理論,判決書理論及び
和解理論の修正
第4 民事執行の基礎理論
1 意義と目的
2 基礎理論の適用と修正
(1)総  説(2)執行処分についての要件事実論(3)執行抗告・執行異議に
   ついての要件事実論(4)民事執行手続と事実認定論(5)執行関係訴訟
第5 破産の基礎理論
1 意義と目的
2 基礎理論の適用と修正
(1)総  説(2)破産関係訴訟等
第6 登記の基礎理論
1 意義と目的
2 基礎理論の内容
(1)訴訟物・請求の趣旨(2)要件事実論・事実認定論(3)判決・和解
(4)民事保全・民事執行(5)破  産 (6)まとめ
   Column1 裁判実務と確率論その1─ゲーム理論における混合戦略  

第1章 不動産関係訴訟
  1 所有権に基づく土地明渡請求訴訟
    ─背信的悪意者による対抗ルール,時機に後れた攻撃防御方法の却下
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム(4)民法改
   正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  2 土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求訴訟
    ─相続放棄,地上建物の所有権移転,解除権不可分の原則
1 訴訟物
(1)訴訟物等(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)民法改正との関係(4)ブロック・ダイ
   アグラム
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  3 自動車撤去土地明渡請求・使用料相当金(不当利得金)返還請求訴訟
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム(4)民法改正と
   の関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  4 破産管財人が提起した根抵当権設定登記抹消登記手続請求訴訟 
    ─将来請求,文書提出命令の申立て
1 訴訟物等
(1)訴訟物・請求の趣旨(2)管轄等
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム(4)民法改正と
   の関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  5 境界確定訴訟,鉄杭撤去土地明渡請求訴訟
1 訴訟物等
(1)請求の類型(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム(4)民法改正と
   の関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
   Column2■コンプライアンスとは

第2章 契約関係訴訟

  6 消費貸借契約に基づく貸金返還請求訴訟 
    ─貸借型理論,相殺,相殺充当
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム(4)民法改正と
   の関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  7 保証債務履行請求訴訟
    ─破産法の非免責債権
(1) 訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  8 リース料支払請求訴訟 
    ─信義則違反,補助参加,会社分割による訴訟引受
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄(3)訴訟告知・補助参加の申立て(4)会社分割と訴訟
   物の承継
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  9 既払代金返還請求訴訟
    ─動機の錯誤,製作物供給契約の解釈,履行遅滞解除と口頭の提供
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
(1)保  全(2)執  行
  10 債務不存在確認請求訴訟
    ─損害保険契約,移送と回付
1 訴訟物等
(1)訴訟物(2)管  轄
2 要件事実
(1)制度趣旨(2)要件事実の分析(3)ブロック・ダイアグラム
(4)民法改正との関係
3 事実認定
(1)争  点(2)事実認定の構造
4 判決と和解
(1)判  決(2)和  解
5 保全と執行
  Column3 民事裁判のIT化をめぐる動向

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