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最新裁判実務大系第9巻 労働関係訴訟


最新裁判実務大系


最新裁判実務大系第9巻 労働関係訴訟
 
編・著者山川隆一・渡辺弘 編著
判 型A5判
ページ数536頁
税込価格6,696円(本体価格:6,200円)
発行年月2018年06月
ISBN978-4-417-01740-0
在庫有り
  
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■解説
●多くの裁判官が参集して実務家からの視点を提示することを目指し
 て刊行されたもので,裁判手続に関わり労働紛争の解決や予防を担
 当する弁護士にとって,信頼性の高い最良の実務書!
●全国で活躍している労働関係訴訟に通暁する裁判官らによる執筆!
●集団的労働関係に関わる18項目も含めた全86項目。労働関係訴訟に
 通暁している裁判官を中心にして,労働関係訴訟に関する主要な論
 点を取り上げて,それに関する判例,裁判例を理論的に考察し,ま
 た事例に応じた実践的な検討を加えることで,裁判手続に関わる方
 々はもとより,労働紛争の解決や予防を担当する多くの方々の参考
 に供し,さらに,労働法学を学ぶ方々に対して,実務家からの視点
 を提示!


編著者・執筆者紹介
編 著 者
山 川 隆 一 中央労働委員会会長
       前東京大学大学院法学政治学研究科教授
渡 辺   弘 東京地裁立川支部判事

執 筆 者
小 松 秀 大 横浜地裁判事
島 根 里 織 盛岡地家裁判事
内 藤 寿 彦 広島地家裁福山支部判事
宇 野 直 紀 法務省民事局付
和 久 田 斉 神戸地裁判事
本 多 幸 嗣 仙台地家裁大河原支部判事
日 野 周 子 宇都宮地家裁判事
中嶋 万紀子 札幌家地裁判事
見 原 涼 介 静岡地家裁判事補
田 公 輝 最高裁秘書課参事官
藤 永 祐 介 京都家地裁判事補
武 智 舞 子 鹿児島地家裁判事
剱 持   亮 名古屋高裁判事
知 野   明 東京地裁判事
上 田   瞳 京都地裁判事
草 野 克 也 最高裁事務総局家庭局付
光 本   洋 さいたま地家裁判事
嶋   諒 福岡地家裁判事補
渡 辺   弘 上掲
峯 金 容 子 京都地裁判事
内 藤 裕 之 大阪地裁判事
中垣内 健治 大阪地家裁堺支部長判事
池 田   稔 中央労働委員会事務局
村 田 一 広 最高裁調査官
丹 下 将 克 静岡地家裁判事
別 所 卓 郎 釧路地家裁帯広支部判事
秋 武 郁 代 大阪家地裁堺支部判事

(執筆順。編著者・執筆者の肩書は平成30年3月現在)


はしがき
 現在の労働関係訴訟を巡る状況を概観すると,国の労働政策が大きく変化する中,
様々な立法や制度改革が行われ,さらなる立法の動きもみられるところである。社会
全体としても,労働契約の形態は,年を追って多様となっており,これまでの労働法
上の枠組みでは把握できない事例も増加している。そして,労働紛争を解決する方法
も,従前からの裁判所や労働委員会の手続による紛争解決手段のほかに,労働審判制
度,都道府県労働局の個別労働紛争解決促進制度等による多様な紛争解決手段が用意
されるに至っている。従前から,労働法制に関しては,最高裁判例を中心とした判例
法理が大きな影響を与えてきたと指摘されているが,上記のような労働法制や労働契
約の大きな変化に応じて,多くの分野で新たな枠組みを用いる裁判例が登場し,また
,新たな立法や枠組みを,様々な内容の事例に適用する裁判例が出されているという
のが現状であろう。
 本書の企画が始まったのは,平成23年(2011年)のことであり,全国で活躍してい
る労働関係訴訟に通暁している裁判官を中心にして,労働関係訴訟に関する主要な論
点を取り上げて、それに関する判例,裁判例を理論的に考察し,また事例に応じた実
践的な検討を加えることで,裁判手続に関わる方々はもとより,労働紛争の解決や予
防を担当する多くの方々の参考に供し,さらに,労働法学を学ぶ方々に対して,実務
家からの視点を提示することができないものかという思いによるものであった。
 この企画によって実務家を中心とする執筆者から寄せられた論稿は、集団的労働関
係に関わる18項目も含めて86項目に及び,その水準といい分析の精緻さといい,上述
の目的を達した内容であると自負するものである。もっとも同時に、これだけ多数の
論稿を掲載するには,多くの時間を要することとなった。そのため,当初予定してい
た項目や論稿の中には,冒頭で述べた大きな変化の中でその意味合いが変化したこと
から,執筆者に大幅な手直しをお願いするなどの対応をせざるを得なくなったものも
ある。また,ごく最近の裁判例の状況や論点、例えば労働契約法20条を巡る裁判例の
増加についても,これを突っ込んで分析するだけの時間的余裕はなかった。ご迷惑を
おかけした各位には,深くお詫び申し上げるところである。
 ともあれ,このたび,上述の86項目の力作を3分冊に収めた本書を世に送り出すは
こびとなり,企画から携わったわれわれとしては,胸をなでおろしているところであ
る。これらの論稿が,労働関係訴訟の手続に携わる方々,多様な労働関係の紛争解決
や予防に関与する方々、労働法を学び,研究する方々の参考に供されるところとなれ
ば,われわれの大きな喜びとするところである。
 最後に,本書の刊行に粘り強くご尽力いただいた青林書院編集部の長島晴美さんに
は,深く謝意をあらわすものである。
  平成30年3月
山川隆一 渡辺弘


■書籍内容
第2章 集団的労働関係
勝]働組合
60 労働組合法上の労働者
 労働組合法の「労働者」の解釈は,法解釈上どのような意義を有するか。
労働組合法の「労働者」とはどのような者か。
〔1〕問題の所在
〔2〕沿 革 等
〔3〕解釈上の問題点及び学説の推移
〔4〕最高裁における3つの判決とその理解
〔5〕今後の課題とまとめ
61 チェック・オフ
 チェック・オフ条項を定めた労使協定が労働協約の形式により締結されて
 いる労働組合の組合員から,使用者に対し,チェック・オフの中止の申入
 れがされた場合,使用者はこれに応じなければならないか。
〔1〕問題の所在
〔2〕チェック・オフと労働基準法24条1項との関係
〔3〕個々の組合員からのチェック・オフの中止の申入れとこれに対する使用者の対応
〔4〕チェック・オフに関するその他の問題
〔5〕まとめ
62 労働組合の統制
 社員の大多数が加入している労働組合とユニオン・ショップ協定を締結している企業
 において,当該労働組合が組合員の組合資格を剥奪する除名処分を行った場合,企業
 は当該組合員を解雇しなければならないか。ユニオン・ショップ協定に基づいて企業
 が当該労働者を解雇し,後になって除名処分が無効とされた場合,解雇の効力はどう
 なるか。
〔1〕統制処分
〔2〕ユニオン・ショップ
〔3〕統制処分をめぐる紛争
〔4〕本設問について

XI 労働協約
63 労働協約の成立
 労働組合と使用者との間で労働条件その他に関する合意が成立したにもかかわらず,
 それが書面に作成されず,又は,書面に作成されたがこれに両当事者の署名・記名
 押印がなされなかった場合,当該合意はどのような効力をもつか。
〔1〕問題の所在
〔2〕本判決の検討
〔3〕残された問題等
〔4〕まとめ
64 労働協約の規範的効力と労働条件不利益変更
 T県T市にのみ事業所を有するA社は,経営破綻するおそれがあったため,T県T
 市のほか,隣接する複数の都道府県にも事業所を有するB社に吸収合併された。
 A社においては,従業員(20名)によって構成され産業別労働組合(ナショナルセ
 ンター)に属しないα労働組合との間で締結した労働協約に基づき,定年が65歳と
 定められていた。B社においては,従業員の定年が60歳と定められ,従業員(60名)
 は産業別労働組合であるRの傘下にあったβ労働組合に加盟していた。合併後,α
 労働組合に加盟していた従業員は,β労働組合に加盟した。B社においては,合併
 前から60歳で定年を迎える従業員の処遇についての労使協議が続いており,β労働
 組合は定年延長を求めていたが,B社は嘱託社員として65歳まで継続雇用(給与は
 4割削減)する方法によることを検討していた。そのため,合併後は,。措劼僚
 業員であった者に対して適用されていた定年制を維持したうえ,B社の従業員であ
 った者についても定年を65歳とするのか,■措劼僚抄醗であった者の定年を60歳
 に変更したうえ,全従業員について定年後は嘱託社員として65歳まで継続雇用(給
 与は4割削減)する方法によるものとするのかについて,労使協議が続いていた。
 ところが,その後,急激な経済状況の変化に伴い,B社の業績が著しく悪化し,経
 営破綻が懸念される状態に至ったため,経費節減の観点や,B社の従業員であった
 者の多数から,A社の経営破綻によって失業していたはずの従業員に65歳定年によ
 る恩恵を与え続けるのは不公平である旨の指摘があったことから,β労働組合の議
 決機関である組合大会において,多数決により,△諒法によることを内容とする
 労働協約を締結することになった。
 A社の従業員であったPは,満60歳に達したことに伴い,B社から嘱託社員として
 の労働契約書への署名捺印を求められたが,署名捺印を拒否し,B社に対し,β労
 働組合が締結した労働協約は,A社の従業員であった者の既存の労働条件を不利益
 に変更するものであるからβ労働組合が締結した労働協約の効力がPに及ぶことは
 ない旨主張し,削減された給与相当額の支払を求める訴えを提起した。Pの請求は
 認容できるか。
〔1〕問題の所在
〔2〕有利原則について
〔3〕協約自治の限界について
〔4〕労働組合法16条による規範的効力と同法17条による一般的効力の場合とで規範
   的効力の例外が認められる範囲が異なるかについて
〔5〕設問に対する回答
65 労働協約の拡張適用
 定年年齢の引下げ,退職金支給率の引下げ等を内容とする労働協約が多数組合との
 間で締結された場合,労働協約の一般的拘束力により,非組織労働者の労働条件は
 当然に不利益に変更されるか。変更されるとして,少数組合に所属する労働者につ
 いても,同様に労働条件が不利益に変更されるか。
〔1〕問題の所在
〔2〕労働組合法17条の趣旨
〔3〕労働協約に一般的拘束力が認められるか(非組織労働者の場合)
〔4〕少数組合加入者への拡張適用の可否
〔5〕まとめ
66 労働協約終了後の労働契約関係
 就業規則の水準を上回る退職金を定めた労働協約が期間満了又は解約により失効し,
 使用者と組合の間で退職金に関する新たな合意は成立していない。経営状況が芳し
 くないことから,使用者は,就業規則を変更して,従前の就業規則の水準を下回る
 退職金規定を設けた。これに不満な組合員はいかなる法的手段をとり得るか。
〔1〕問題の所在
〔2〕労働協約の「余後効」に関する学説の状況
〔3〕労働協約の「余後効」に関する裁判例の状況
〔4〕労働協約に反する就業規則の効力について
〔5〕労働協約失効後の就業規則の変更について
〔6〕本設例における主張立証構造について
〔7〕最後に

XII 団体行動
67 バッジ着用・情宣活動の正当性
 労働組合の組合員たる従業員が次の組合活動を行った場合,使用者が当該従業員
 に対して,懲戒その他の不利益な処分を行うことは許されるか。
  ―業時間中に組合バッジを着用して就労した場合
 ◆―業時間外に出向先企業の門前でビラ配布,拡声器を用いた演説等を行った
   場合
〔1〕
はじめに
〔2〕リボン,プレート等の着用と職務専念義務
〔3〕組合バッジ着用の正当性
〔4〕労働組合による情宣活動の正当性
〔5〕ま と め
68 ロックアウトの正当性
 ロックアウトの正当性の判断基準をどのように考えるべきか。
〔1〕「ロックアウト」の意義
〔2〕問題となる場面
〔3〕ロックアウトに係る判例理論(リーディングケース:〔丸島水門事件〕)
〔4〕〔安威川生コンクリート事件〕最高裁判決
〔5〕最後に

XIII 不当労働行為
69 不当労働行為の司法救済
 労働組合と使用者との間で義務的団交事項に当たるか否かが争われているため,
 使用者が団体交渉を拒否した場合,労働組合は使用者に対し,民事訴訟において,
 いかなる請求をすることができるか。
〔1〕問題の所在
〔2〕法律行為の無効
〔3〕団体交渉を求め得る地位の確認
〔4〕不法行為に基づく損害賠償
〔5〕まとめ
70 不当労働行為における使用者
(1) 下請会社に雇用されている労働者が,請負契約に基づいて元請会社に派遣さ
   れて就労している場合において,元請会社がその労働者との関係において労
   働組合法7条にいう「使用者」に当たるか。
(2) その労働者が下請会社の倒産・営業譲渡により解雇された場合,元請会社を
   労働組合法7条の「使用者」として,就労確保のための団体交渉を求めるこ
   とができるか。
〔1〕問題の所在
〔2〕労働法における「使用者」の解釈
〔3〕従前の学説と判例
〔4〕〔朝日放送事件〕判決の枠組みとその後の展開
〔5〕まとめ
71 「不利益な取扱い」の意義
 事業譲渡契約において,譲渡会社がその従業員を全員解雇し,上記従業員を譲受
 会社が採用するか否かは,譲受会社が自由に決定できる旨合意した場合において,
 譲受会社が,譲渡会社における労働組合活動を理由に,譲渡会社の従業員の一部
 の採用を拒否することは,労働組合法7条1号本文の「不利益な取扱い」に該当
 するとして,労働委員会が,譲渡会社に対し,上記従業員の採用を命じることは
 可能か。
〔1〕問題の所在
〔2〕採用拒否と不利益な取扱いに関する従前の裁判例・学説
〔3〕事業譲渡時の譲受会社による採用拒否について
〔4〕まとめ
72 不当労働行為意思の立証と認定(大量観察方式)
 不当労働行為意思の立証と認定はどのように行われるか。
 多数の組合員に対する査定差別等が不当労働行為と主張される事件において,
 当該組合員集団の査定結果等が非組合員や別組合員などの別の従業員集団のそれ
 と比較して全体的に低位にあることを立証することにより,個々の組合員に対す
 る査定差別等及び不当労働行為意思を認定することができるか。
〔1〕はじめに
〔2〕不当労働行為意思の立証と認定
〔3〕大量観察方式による立証の可否
〔4〕終わりに
73 団体交渉の主体・対象事項
 使用者は,いかなる者との間で,いかなる事項について団体交渉に応ずる義務を
 負うか。
〔1〕問題の所在
〔2〕団体交渉の主体
〔3〕団体交渉の対象事頂
〔4〕団体交渉と労使協議制・苦情処理制度との関係
〔5〕まとめ
74 誠実交渉義務
 誠実交渉義務の内容及び雇用者が誠実交渉義務を履行したといえるのはどのよう
 な場合か。また,組合併存下における少数組合に対する場合はどうか。
〔1〕問題の所在
〔2〕誠実交渉義務とは
〔3〕誠実交渉義務に関する裁判例
〔4〕複数組合が存在する場合の誠実交渉義務
〔5〕まとめ
75 支配介入の成否と使用者への帰責
 X鉄道事業会社では,労使協調路線を採っているY労働組合と,Y組合から脱退
 した者らによって結成され,X社と対立することの多いZ労働組合の2つの労働
 組合が存在する。X社の新幹線運転所(以下「運転所」という。)における以下
 の 銑の各行為は,労働組合法7条3号前段の支配介入として,X社のZ組合
 に対する不当労働行為に該当するか。なお,以下でいう助役とは,運転所の所長
 を補佐する現場管理者であり,総務科,営業科,運転科及び指導科のいずれかに
 属し,各科の助役の中の1名が科長に指定されている。助役は,運転所の人事に
 関与する権限は有しておらず,運転所では,所長のみが労働組合の組合員資格を
 有しないものとされている。
 。拜塙腓料塙膂であるA指導科長が,運転所に勤務するZ組合の組合員甲に対
  し,勤務時間外に電話をかけて労使協調でX社がよくなってきているのでZ組
  合がそれを駄目にするようなことは残念であるなどとしたうえ,「これからは
  若くて優秀な人に職場で頑張ってほしい。」,「脱退したとしても,1人では
  ありません。皆が付いています。」「1週間後までに返事がほしい。」「科長,
  助役はみんなそうですので,よい返事を待っています。」などと述べた行為。
 ■拜塙腓料塙膂であるB総務科長が,C所長の指示を受けて,X社からZ組合
  に貸与されていた掲示板に掲示されていたZ組合作成の掲示物で,A指導科長
  が甲とも親しい元上司Dと飲食した際,甲の脱退を促す方策について相談した
  と記載するとともに,「まさに,自己保身であり,なんとも汚いやり方ではな
  いか」,「A指導科長は,甲をZ組合から脱退させるために,退職したD氏を
  利用しようとしたのか? と更に疑うばかりである?!」等の記載をしたもの
  を撤去した行為。ただし,A指導科長がDと飲食した事実は当事者間に争いが
  ないが,その場で甲の脱退を促す方策について相談したとの事実を認めるに足
  りる証拠はないものとする。
   なお,X社とZ組合の間には,組合が,会社の許可を得た場合に,指定され
  た掲示場所において,組合活動に必要な宣伝,報道,告知を行うことができる
  旨を定めた基本協約が締結されており,上記掲示板は,同基本協約に基づき,
  X社の許可を得て,従業員のみが出入り可能な運転所庁舎内廊下に設置された
  掲示板がZ組合に貸与されていたものである。同基本協約及び掲示板設置許可
  には,「会社の信用を傷つけ,政治活動を目的とし,個人を誹謗し,事実に反
  し,又は職場規律を乱す」掲示類を撤去することができる旨が定められている。
 Y組合の組合員であるE助役が,C所長の指示を受けて,上記掲示板に掲示さ
  れていたZ組合作成の掲示物で,ホーム検査担当乗務員である乙に対し,E助
  役が居眠りをでっち上げたうえ,始末書及び顛末書の作成を強要したとして,
  「E助役……無実の者を『寝ていた』とでっち上げる,始末書を書けと管理者
  が暴力的に恫喝。テロリストと同じではないか。」と記載したものを撤去した
  行為。ただし,E助役が乙に対して勤務時間中に居眠りをしていたのではない
  かと尋ねたこと,始末書及び顛末書の作成を求めたことは証拠上認められるが,
  E助役が乙に対し暴力をふるったり,脅したりした事実を認めるに足りる証拠
  はないものとする。
〔1〕問題の所在
〔2〕使用者への帰責
〔3〕掲示物の撤去と支配介入の成否
76 使用者の言論と支配介入
 会社が,組合との賃上げに関する団体交渉の継続中に,組合に対して賃上げの
 回答をしたものの,これが最終回答であるとの態度を示し,組合も会社に対し
 て交渉決裂を宣言した。すると,会社は,代表者たる社長名で声明文を出し,
 その中で,組合が行おうとしているストライキは「ストのためのスト」である
 と記載し,また,会社としては現在以上の回答を出すことは不可能であり,組
 合がストライキを行うのであれば重大な決意をせざるを得ないなどとも記載し
 て,この声明文を全事業所に一斉に掲示した。その後,組合が,ストライキを
 実施したところ,組合員の相当数がストライキへの参加を拒否し,組合はスト
 ライキの続行を断念して,賃上げについて会社と妥結した。会社が前記声明文
 を掲示した行為は,支配介入に当たるか。
〔1〕問題の所在
〔2〕使用者の言論の自由の限度に関する議論及び重要判例
〔3〕実務上の判断基準
〔4〕支配介入該当性の判断の前提となる考慮要素について
〔5〕まとめ
77 複数組合と不当労働行為──中立保持義務・差違え条件
(1)使用者が,労働条件をめぐる団体交渉において,複数の労働組合に対して同一
  の条件を提示したが,これに対する諾否が組合ごとに分かれ,その結果,組合
  員の労働条件に組合間で差異が生じた場合に,不当労働行為が成立するか。
(2)使用者が,組合への便宜供与や団体交渉の手続の履践に関して,複数の労働組
  合に対して異なる措置をとった場合に,不当労働行為が成立するか。
〔1〕使用者の中立保持義務
〔2〕労働条件をめぐる団体交渉における中立保持義務
〔3〕労働条件以外の点に関する中立保持義務

第3章 労働紛争の解決手続
XIV 裁判所における手続
78 紛争解決手続の選択
 使用者から解雇された労働者が,解雇には不満を有している。また,在職中に,
 未払の残業代があるといっている。このような場合に,どのような手続によって
 労働関係紛争を解決するのが適切か。
〔1〕はじめに
〔2〕行政機関による手続
〔3〕裁判所における手続
79 労働関係における文書提出命令──賃金台帳・考課表等の取扱い
 労働関係訴訟において,賃金台帳や考課表等につき文書提出命令の申立てがな
 された場合の取扱いはどのようなものか。
 ]働者名簿,賃金台帳
 ⊃融考課についての評価等に関する文書(人事評価マニュアル,人事考課表等)
 その他の文書
〔1〕 問題の所在
〔2〕 自己利用文書該当性の判断基準
〔3〕 労働者名簿,賃金台帳について
〔4〕 人事考課についての評価等に関する文書(人事評価マニュアル,人事考課
    表等)
〔5〕 その他の文書
〔6〕 まとめ
80 労働仮処分──地位保全,賃金仮払い・使用者側の仮処分
 労働紛争に係る仮処分申立事件手続の概要及び同手続の審理等において留意すべき
 点は何か。
〔1〕はじめに
〔2〕労働者側申立てに係る仮処分
〔3〕使用者側申立てに係る仮処分
〔4〕労働仮処分事件の審理(労働審判手続との関係)
〔5〕おわりに
81 労働審判
 労働審判手続とはどのような手続か。その運用状況はどうか。また,当該手続の
 選択やこの手続を遂行するにあたって留意すべき点は何か。
〔1〕はじめに──労働審判制度が創設された経緯
〔2〕労働審判制度の概要
〔3〕手続上,又は訴訟移行後のその他の問題点

XV 行政機関における手続
82 物件提出命令・証人等出頭命令
 不当労働行為事件審査における物件提出命令及び証人等出頭命令は,どのような
 ときに発せられるのか。これら命令に対する不服申立ては可能か。
〔1〕 概  説
〔2〕 物件提出命令
〔3〕 証人等出頭命令
〔4〕 不服申立て
83 救済利益(救済の必要性)
 労働組合A及び労働者Bは,使用者Cが組合活動を理由とする賃金カットを実施し
 たとして,労働委員会に対し,不当労働行為の救済を申し立てた。労働委員会は,
 ]働者Bが労働組合Aの組合員資格を喪失した場合,また,∀働者Bが賃金カ
  ットに同意した場合において,救済命令を発することができるか。
〔1〕問題の所在
〔2〕救済利益の意義等
〔3〕救済利益と立証責任等
〔4〕各不当労働行為における救済利益の存否
〔5〕まとめ
84 救済命令における裁量権の限界
 労働委員会の不当労働行為救済命令における裁量権の限界についてどのように
 考えるか。
 (1)労働委員会が,不当労働行為(不利益取扱い)として解雇が行われた場合の
   救済として,現職復帰とともにバック・ペイを命ずるにあたり,被解雇者が
   解雇から原職復帰までの間に他に就職して得た収入(中間収入)をバック・
   ペイの額から控除しなければならないか。
 (2)使用者が労働組合(申立人組合)の組合員からチェック・オフを行ってこれ
   を併存する別組合に交付したことが不当労働行為(支配介入)に当たる場合
   において,申立人組合と使用者との間にチェック・オフ協定が締結されてお
   らず,申立人組合所属の組合員が使用者に対し賃金から控除した組合費相当
   額を申立人組合に支払うことを委任していないとの事情の下で,労働委員会
   が,使用者に対し,既に控除した組合費相当額等を,組合員個人に対してで
   はなく,所属する申立人組合へ支払うことを命ずる救済命令を発することは
   許されるか。
 (3)労働組合の組合員の職能資格格付け及び職位が他の社員に比べ低位におかれ
   ていることが不当労働行為(不利益取扱い,支配介入)に当たる場合におい
   て,労働委員会が,会社に対し,組合員各人の職能資格格付け及び職位につ
   いて,同年同期入社者に遅れないように取り扱うことを命ずる救済命令を発
   することは許されるか。
〔1〕問題の所在
〔2〕バック・ペイ命令と中間収入控除の要否(設例(1))
〔3〕私法上の法律関係と一致しない内容の救済命令(設例(2))
〔4〕昇格・昇進命令(設例(3))
85 救済命令等の取消訴訟
(1) 労働委員会の救済手続と,裁判所の救済命令等取消訴訟手続との関係は,
   どのようになっているか。
(2) 救済命令等の発令後の事情変更により,取消訴訟における訴えの利益が失
   われる場合として,どのようなものが考えられるか。
(3) 不当労働行為の成立に関する主張立証責任の分配をどのように考えるべきか。
(4) 救済方法の違法を理由とする救済命令の取消判決において,どのような点に
   留意すべきか。
〔1〕はじめに
〔2〕取消訴訟と再審査手続の関係
〔3〕救済命令等発令後の事情変更と取消訴訟における訴えの利益
〔4〕不当労働行為の成否についての主張立証責任
〔5〕救済方法の違法を理由とする救済命令の取消判決
86 緊急命令
 緊急命令が申し立てられた場合に裁判所が審査すべき事項の範囲及び判断基準は
 いかなるものか。
〔1〕緊急命令の意義及び制度趣旨
〔2〕問題の所在
〔3〕緊急命令申立ての許否を決定するにあたって裁判所はいかなる事項につき,
   いかなる判断基準で審査すべきか
〔4〕学説,判例紹介

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