青林書院



租税訴訟における要件事実論の展開 


租税訴訟における要件事実論の展開 
 
編・著者伊藤滋夫・岩政明 編集
判 型A5判
ページ数538頁
税込価格6,264円(本体価格:5,800円)
発行年月2016年08月
ISBN978-4-417-01693-9
在庫有り
  
在庫があります

■解説
■民事訴訟における要件事実論の根源から説き起こした,租税訴訟における
 要件事実論の比類なき実践的研究書!
■租税訴訟における要件事実論の展開を論じるにふさわしい一級の研究者,
 実務家が編集・執筆し理論と実務の真の融合を成し遂げた渾身の一巻!

はしがき  
周知のように,今日のように社会経済情勢の変動の著しいときには,租税制度
もまたその例外ではなく,ほとんど毎年のように改正されている。近くは,
政府の経済政策・社会政策・災害復興政策等に資するため各種税目に係る税率
や課税ベースの見直しが頻繁に行われ,また,経済や人の移動のグローバル化
に対応した国外財産調書制度・過大支払利子税制の導入,法人課税に係る総合
所得課税主義から帰属所得課税主義への転換,外国子会社配当益金不算入制度
の見直し,国境を越えた役務の提供に係る消費税課税制度の導入,国外移転を
する場合の譲渡所得課税の特例の創設,BEPSプロジェクトに対応した多国籍企
業情報の報告制度,さらには租税回避行為に対する個別的否認規定の整備,
そして質問検査手続や納税環境整備に係る法整備等の租税手続法の改正や行政
不服審査法の改正に伴う国税通則法の改正などもその重要な適例であろう。
▼続きを読む


しかし,そのような改正がされた場合において,租税法に関する基本的考え
方がいつも変わってしまうものであろうか。万が一にも「租税法律主義」とい
った租税法における根本原則が変わるようなことがあれば(およそそのような
ことは考えられないが)ともかく,通常の場合には,租税法に関する基本的考
え方は不変であって,その具体的問題への適用に関する部分が変わってくると
いうことであろう。したがって,常に税制の変更の性質を注意深く考察して,
適切に対応することが必要である。  税制の変更があっても,不変といっても
よい租税訴訟(この場合,租税法というよりも租税訴訟といったほうがより適
切である)に関する基本的考え方の一つが,本書の対象とする要件事実論である。
民事訴訟においては,以前から,要件事実論は,その基本理論の一つとして不可
欠のものとされ,ときに法曹における共通言語といわれることもあるくらいで
あるが,特に,2014年の法科大学院制度発足以来,実務法曹や民事訴訟法学者
のみならず,民法学者の関心も高くなり,今日では,ますますその研究が盛んに
なって,要件事実論に関する文献も,以前と比べて激増しているといってよい
現状にある(要件事実論は,理論上は,訴訟における主張立証責任論よりは広い
意義を有するものであるが,とりあえず実際上は,訴訟における主張立証責任論
として非常に重要な意義を有するものである)。これに比べて,租税訴訟におい
ては,従来,要件事実論の重要性がほとんど認識されず,租税訴訟に於ける要件
事実論に関する現状は,上記のような民事訴訟におけるそれと比べて,著しく
異なるもののように思われる。確かに,租税訴訟における立証責任を各論的に
論じた文献はあるが,租税訴訟における要件事実論の根本的意義についてまで
理論的に掘り下げて,租税訴訟における要件事実論を検討したものは,非常に
少ないと考えられる(『租税法の要件事実』法科大学院要件事実教育研究所報
第9号〔日本評論社,2011〕は,その少ない例の一つではなかろうか。
同書は,2010年11月27日に開催された法科大学院要件事実教育研究所主催の
「租税法要件事実研究会」の成果を一冊に纏めたものである)。例えば,租税
訴訟における主張立証責任の分配に関する学説として,個別具体妥当説ないし
個別検討説といった名称の説が存在すること自体,編者(その一人としての伊藤)
にとっては,不思議なことのようにも思われる。たしかに,租税法の条文は全体
としてきわめて複雑で,その性質も多様であり,その上,その適用対象となる
具体的事案も複雑多様である。しかし,そうだからといって,租税法の適用を,
ただ具体的事案ごとに個別的に妥当なように考えて対応するというのでは不十
分ではあるまいか(特に,租税制度の法的安定性・予測可能性の保持のために
不十分である)。非常に困難なことであっても,そこに,租税法の制度趣旨
を踏まえて,何らかの原則・例外の規範の構造を見出して,それを具体的事案
の実態に応じて柔軟に適用するといった考え方が必要であるし,可能でもある
のではないかと思うのである。  租税法の条文は,基礎になる多様な政策を
背景にもちながら,多くの原則・例外の規定を設けているが,民法の条文と
同じく,要件事実の面からの思考を経て関係条文が意識的に制定されたと考え
ることはできない(稀な例外があるとしても)。したがって,条文の構造
(本文・ただし書などの条文の形式)を基準にして,いわば機械的に主張立証
責任の所在を決定するわけにはいかず,どうしても,そうした多様な条文を通
じて適用が可能な何らかの理論を必要とすると考える。  もとより,租税訴訟
は通常の民事訴訟とは異なる行政訴訟ではあるが,要件事実論の根本は,それ
ぞれの実体法の制度趣旨を立証ということが問題となる訴訟の場において最も
適切に実現することにあって,そのことは,通常の民事訴訟と行政訴訟とで相
違はないと考えられる。租税訴訟における議論の中には,ときに,一方的に納
税者の権利のみを強調したり,一方的に徴税権の円滑な行使のみを強調したり
する議論もなくはないように思われるが,納税者の権利と徴税権の確保の調整
を適切に図った的確な租税訴訟における要件事実論が構築されることが望まし
いと考えられる。多様な意見がありうるところであるが,租税実体法の制度趣
旨(その的確な把握は,きわめて困難であり,個別の法律の制度趣旨が変更に
なることにも十分な留意を要するが,にもかかわらず,常にそうした変容の基
礎にある租税実体法の制度趣旨)を立証ということが問題となる訴訟の場にお
いて最も適切に実現することを基本に据えた適切な要件事実論の構築とその具
体的な展開が望まれている,と考える。租税法における「租税法律主義」,ひ
いては「課税要件明確主義」が租税法における極めて重要な基本原則であり,
その重視されるべきことはいうをまたない。租税訴訟における要件事実論は,
そうした制度趣旨の基本を踏まえて,構築されるべきであるし,そうすること
は十分に可能である。  本書における執筆者各位のお考えは,もとより多様で
あり編者の以上のような見解と同じであるとはいえないであろうが,租税訴訟
における要件事実論の研究が深まり,それによって租税訴訟における攻撃防御
の実態がいっそう充実したものとなることを期待することについては,執筆者
各位も編者と想いを共にされておられると考える。  実際,このたびの各位
の執筆された素晴らしい玉稿は,いずれも,その基本において,編者らの想い
と通底するところの多い,今後の租税訴訟の充実発展のために極めて有益なも
のばかりであると考える。この機会に,ご多忙のところ,本企画の趣旨にご賛
同賜り,このような玉稿を賜った各位に対して,心からの深甚なる謝意を表す
る次第である。本書がこのようにして世に出るに至るまでには,青林書院編集
部の方々にも大変にお世話になった。当初は,大塚和光氏,その後同氏が定年
で退社されて以後は,長島晴美氏に,それこそ誠実かつ精力的に,ご尽力を
いただいた。厚く御礼を申し上げたい。
本書は,租税法,行政訴訟に関する研究者,弁護士・税理士・租税行政庁や
企業の職員などの実務家に限らず,司法修習生,法科大学院生など,広く租税
訴訟における要件事実論に関心を持つ方々にとって有益なものであると考えて
いる。そうした各位が,研究に,実務に,学習に大いに本書を活用されること
を期待してやまない。

2016年7月
編者 伊藤 滋夫
   岩 政明


編集者
伊藤 滋夫:弁護士,創価大学名誉教授,
   法科大学院要件事実教育研究所顧問
岩 政明:横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授

執筆者
(執筆順)
伊藤 滋夫:前掲
河村  浩:東京高等裁判所判事
増田 英敏:専修大学法学部教授,弁護士
品川 芳宣:筑波大学名誉教授,弁護士,税理士
岩 政明:前掲
井上 康一:弁護士
大塚 一郎:弁護士
山本 守之:税理士
河野 良介:弁護士
今村  隆:日本大学大学院法務研究科教授
高野 幸大:東洋大学法学部教授
谷口 勢津夫:大阪大学大学院高等司法研究科教授
田中 治:同志社大学法学部教授
酒井 克彦:中央大学商学部教授
山田 二郎:弁護士
西山 由美:明治学院大学経済学部教授
谷口 智紀:島根大学法文学部准教授
宮崎 裕子:弁護士
▲たたむ



■書籍内容
第1部 要件事実の基礎理論
第1章 民事訴訟における要件事実論の概要  
第1裁判官による法的判断の構造  
第2要件事実はどのようにして決定されるか   
 1はじめに   
 2不法行為に基づく損害賠償請求事件と債務不履行に基づく損害賠償請求事件  
 を題材とした各要件事実の比較検討
第3 最近の要件事実論における若干の重要な問題  
 1評価的要件の重要性   
  ・はじめに   
  ・事実と評価を区別する意味─事実的要件と評価的要件   
  ・評価的要件における要件事実  
 2要件事実論の機能と事案の解明

第2章 租税訴訟における要件事実論のあるべき姿
第1民事訴訟における要件事実論と租税訴訟における要件事実論の比較
第2租税訴訟における要件事実はどのようにして決定されるか
 1要件事実(立証責任対象事実)の決定基準(骨子)
 2条文の構造(形式)は基準となるか
 3立証責任対象事実の具体的決定基準
 4課税処分取消訴訟の例
  ・一般経費
  ・特別経費
第3 最近の要件事実論における若干の重要な問題─租税訴訟の場合
 1評価的要件の重要性
 2要件事実論の機能と事案の解明
第4 租税訴訟における具体的課題を通観して検討する要件事実の考え方
 1はじめに
 2所得税法27条,消費税法30条,所得税法156条,固定資産の価格  
  ・所得税法27条における必要経費と消費税法30条における仕入税額  
  ・所得税法156条における推計と固定資産の価格に関する推定  
  ・所得税法156条における推計  
  ・固定資産の価格に関する推定  
  ・所得税法156条における推計と固定資産の価格に関する推定との比較  
  ・所得税法156条と消費税法30条
 3 租税法以外の分野での参考法条例  
  ・変則的評価的要件─民法108条,民法770条1項,会社法356条,商標法4条1項など

第2部 租税訴訟における要件事実論の視点からの総論的課題
第1章 要件事実論における法律の制度趣旨把握の方法論
   ─租税特別措置法35条1項の「居住の用に供している家屋」
   (譲渡所得に関する特別控除)の要件事実の分析を題材として
第1はじめに
第2法律の制度趣旨の考慮と要件事実論  
 1要件事実論の基礎をなす裁判規範としての民法説  
 2租税訴訟における要件事実論─侵害処分説
第3 法律の制度趣旨の考慮と法律の解釈  
 1法律の解釈の意義と解釈の主体  
 2法律の解釈の「目的」と解釈方法論   
  ・条文で示される立法者意思の実現─形式的文理の尊重・文理解釈重視説
  ・条文に必ずしも現れるとは限らない立法者意思・制度趣旨の実現
   ─具体的妥当性の重視・実質的解釈重視説
  ・立法者意思説
  ・目的論的解釈説
  ・本稿の立場(目的論的解釈説)
第4 法律の文理(文理解釈)とその実質的正当化
  (実質的解釈・目的論的解釈)との関係
 1法律の解釈の許容範囲に関する一般理論  
  ・法律の解釈における富士山理論  
  ・文理解釈と実質的解釈との間のフィードバック
 2租税法規の解釈の場合の特殊性の検討  
  ・租税法律主義との関係─罪刑法定主義との対比において  
  ・租税法規の解釈と他の法律の解釈との関係
第5 文理解釈と実質的解釈(目的論的解釈)の具体的解釈手法の検討
 1文理解釈の具体的解釈手法  
  ・国語辞典ルール  
  ・法律用語辞典ルール
 2実質的解釈(目的論的解釈)の具体的解釈手法
   ─法律の制度趣旨把握の方法論
  ・立法者意思の事実としての性質─立法事実
  ・立法者意思認定の資料
  ・法律の目的規定の内容等
  ・国会及び委員会の会議録等
  ・制度の沿革
  ・変遷
  ・最高裁判例
  ・文献の記述
  ・下級審判例の実証的分析
  ・あるべき制度趣旨の確定
  ・あるべき制度趣旨を達成するための必要十分な内容の解釈
第6 各論的検討─措置法35条1項の「居住の用に供している家屋」
  (譲渡所得に関する特別控除)の要件事実
 1特別控除制度の概要
 2特別控除制度の制度趣旨
  ・立法当時の立法者意思の認定
  ・法律の目的規定の内容等
  ・国会及び委員会の会議録等
  ・制度の沿革
  ・変遷
  ・最高裁判例
  ・文献の記述
  ・下級審判例の実証的分析
  ・特別控除制度の立法者意思の認定
  ・あるべき制度趣旨の確定
  ・特別控除制度に対する国民の法意識等
  ・特別控除制度のあるべき制度趣旨
 3立証責任対象事実の決定─規範構造の分析
 4「居住の用に供している家屋」の文理解釈
 5「居住の用に供している家屋」の実質的解釈(目的論的解釈)
 6措置法35条1項の文理(文理解釈)とその実質的正当化
 (実質的解釈・目的論的解釈)との関係
  ・文理解釈重視説─A説の検討
  ・実質的解釈重視説その1─C説の検討
  ・実質的解釈重視説その2─B説の検討
  ・実質的解釈重視説その3─B′説(評価的概念説)の検討
 7結論─「居住の用に供している家屋」の要件事実の分析
第7 おわりに
第2章 課税要件明確主義と要件事実の明確
第1 はじめに
第2 要件事実と要件事実論
第3 要件事実論と課税要件明確主義  
 1租税法律主義と課税要件明確主義  
 2租税法における要件事実論の有用性  
 3裁判規範としての租税法と課税要件明確主義
第4 租税訴訟における要件事実
第5 租税訴訟における主張立証責任の考え方  
 1租税訴訟における主張立証責任の帰属と法律要件分類説   
  ・法律要件分類説   
  ・個別検討説   
  ・憲法秩序機能説  
 2 租税法律主義と法律要件分類説  
 3 『裁判規範としての民法説』と法律要件分類説  
 4 具体的裁判事例と要件事実の立証責任
第6 む す び
第3章 租税手続法(国税通則法・国税徴収法)における要件事実
第1 租税手続法における要件事実論の特質
第2 納税義務の成立と税額の確定手続  
 1納税義務の成立と税額の確定方式  
 2自動確定方式  
 3申告納税方式  
 4賦課課税方式
第3 納付・徴収の手続  
 1納付・徴収の法的効果  
 2国税の納付手続  
 3国税の徴収手続   
  ・納税の告知   
  ・督促   
  ・繰上請求   
  ・具体的な滞納処分   
  ・詐害行為取消・第二次納税義務
第4 更正決定等の処分と調査手続  
 1更正決定等と調査の関係   
  ・更正決定等の前提としての調査   
  ・調査の違法性と処分の効力   
  ・「調査」の意義   
  ・「調査」の程度等  
 2税務調査の主要手続   
  ・納税者に対する調査の事前通知   
  ・事前通知を要する事項   
  ・事前通知事項の変更   
  ・事前通知を要しない場合  
 3調査の終了の際の手続   
  ・調査終了の通知   
  ・修正申告等の勧奨   
  ・再調査の制限
 4更正決定等の理由附記  
 5更正決定等の期間制限
第5 不服審査の手続  
 1総  則   
  ・不服申立ての区分   
  ・不服申立てができる処分(処分性)   
  ・「処分」の意義   
  ・不服申立ての利益   
  ・不服申立てができない処分   
  ・不服申立期間  
 2再調査の請求  
 3審査請求
第4章 租税訴訟における訴訟物の考え方
第1 問題の所在  
 1抗告訴訟における訴訟物の特性  
 2租税訴訟における訴訟物と立証責任の帰属
第2 処分取消訴訟の訴訟物と立証責任  
 1取消訴訟の性質と訴訟物  
 2課税標準等又は税額等に係る処分取消訴訟の訴訟物
   ─違法性一般の意義   
  ・国税に関する法律に基づく処分の分類   
  ・総額主義と争点主義との異同   
  ・実額課税と推計課税との異同
第3 課税標準等又は税額等以外の違法を争う処分取消訴訟の訴訟物
第4 総 括
第5章 租税法における「推定」の諸相 ─推計課税に関する議論の整理を中心として
第1 はじめに
第2 要件事実論における「推定」
 1「推定」の意義と種類
 2「推定」と立証責任
第3 租税法における「推定」の諸相
 1はじめに
 2租税法規における法律上の推定規定の具体例  
  ・法律上の事実推定の具体例─国税通則法12条(送達の推定)  
  ・法律上の評価推定の具体例  
  ・所得税法施行令14条及び15条(住所の推定)  
  ・所得税法158条(事業所の所得の帰属の推定)
第4 租税訴訟における事実上の推定とその機能
 1はじめに
 2事実上の推定の意義と機能
 3租税訴訟における事実上の推定  
  ・課税処分の取消訴訟における立証責任の所在
  ・課税処分の取消訴訟における事実上の推定
  ・東京地判平6・6・24(税務訴訟資料201号542頁)
  ・熊本地判平15・6・26(税務訴訟資料253号順号9378)
第5 推計課税に関する考え方の整理
 1問題の所在
 2所得税法156条の推計課税に関する通説的な考え方
  ・推計課税の本質
  ・事実上の推定説
  ・補充的代替手段説
  ・推計の必要性と合理性
  ・実額反証
  ・ま と め
 3租税逋脱事案における推計
  ・問題の所在
  ・租税逋脱事案における推計と所得税法156条の推計課税の対比
  ・ま と め
 4消費税における推計課税  
  ・問題の所在  
  ・消費税課税事案における推計と所得税法156条の推計課税の対比  
  ・ま と め
 5通説的な見解のまとめ
第6 要件事実論の観点からの通説的な見解の検討と私見
 1問題の所在
 2検  討  
  ・所得税法156条の推計課税の検討  
  ・事実上の推定説の矛盾  
  ・法律上の事実推定説に基づく私見  
  ・私見に基づく実額反証の整理  
  ・移転価格税制における推定課税との対比  
  ・ま と め  
  ・租税逋脱事案における推計の検討  
  ・消費税における推計課税の検討  
  ・私見のまとめ
第7 おわりに
第6章 租税法における要件事実論の課題 ─弁護士の視点から
第1 はじめに
第2 要件事実論の定義
第3 租税法における要件事実
第4 租税法に要件事実論が必要か
第5 租税訴訟及び租税法に要件事実論を適用した場合の問題点
 1立証責任の分配における問題点
 2租税法の解釈における問題点
第6 最後に─弁護士にとって租税訴訟における要件事実論を論じる
   意味があるか 第7章 租税法における要件事実論の課題 ─税理士の視点から
第1 はじめに
第2 租税法律主義を考える  
 1租税法律主義の意義と状態  
 2租税法律主義の内容  
 3課税要件法定主義
第3 課税要件法定主義に反すると判定された事例  
 1事例の内容  
 2〔事例1〕の法文への当てはめ  
 3国側の更正処分と国税不服審判所の裁決の考え方  
 4通達による退職給与の損金算入時期及び分掌変更による退職給与と
  課税要件法定主義
 5一般に公正妥当と認められる会計処理の基準について
 6租税法の要件
第4 寄附金課税における課税要件
 1寄附金課税がなぜ納得できないのか
 2損金不算入とする理由
 3課税要件を具備しない親子会社取引
 4課税要件を明示した判決
 5国立大学に対する寄附金と取得価額との関係
第8章 租税法における要件事実論の課題
    ─国税局調査審理課における任期付職員経験者の視点から
第1 はじめに
第2 租税訴訟における要件事実論
 1租税訴訟における主要事実の捉え方
 2租税訴訟における立証責任の分配
 3規範的要件に関する考察
第3 税務調査段階において要件事実論を用いる意義
 1課税当局による争点整理表の活用が意味するところ
 2課税要件事実の意義
 3要件事実論への接続を意識した税務調査ないし税務調査対応の有用性
 4理由の差替えの可否と課税要件事実
第4 事例検討
 1タックスヘイブン対策税制の適用除外要件に係る主張立証責任の所在が
  問題となった事例・事案の概要と争点・争点に係る判示内容・分析
 (税務調査に対する示唆)
 2移転価格税制(残余利益分割法)の適用にあたり差異調整の有無が基本
  的課税要件事実の同一性に影響を与えるか否かが問題となった事例
  ・事案の概要と争点
  ・予備的主張に対する判示内容
  ・分析(税務調査に対する示唆)
第5 おわりに

第3部 租税訴訟における要件事実論の視点からの各論的課題            第1章 不確定概念に係る要件事実論  
第1不確定概念の意義と規範的要件   
 1不確定概念の意義   
 2不確定概念と規範的要件    
  ・規範的要件と評価的要件    
  ・租税法における規範的要件の意義    
  ・不確定概念と要件裁量    
  ・本稿における検討課題  
第2 法人税法34条2項の「不相当に高額」   
 1役員給与及び役員退職給与の意義   
 2役員給与の要件事実   
 3役員退職給与の要件事実  
第3 法人税法132条の2の「不当」   
 1組織再編成に係る行為計算否認の意義と要件   
 2「不当」の意義    
  ・ヤフー事件判決の事案と判旨    
  ・事案の概要    
  ・判旨    
  ・検討   
 3「不当」の判断方法
  ・法人税法132条の2の適用順序
  ・「不当」の具体的な判断方法  
第4 相続税法7条の「著しく低い価額」   
 1みなし贈与の意義と要件   
 2「著しく低い価額」の意義
  ・相続税法7条の「著しく低い価額」
  ・国税徴収法39条の「著しく低い額」
第5 国税通則法65条4項の「正当な理由」
 1過少申告加算税の意義と要件
 2「正当な理由」の意義
 3評価障害事実の有無  
  ・申告を依頼した税理士の言動を信じた場合  
  ・通達による従来の見解の変更がなされた場合  
  ・最判平18・10・24  
  ・最判平27・6・12  
  ・小括 4 相続財産の帰属に争いがある場合の申告と「正当な理由」の有無
第6 結  び
第2章 借用概念と固有概念に係る要件事実論
第1 はじめに
第2 租税法律主義と租税要件(理)論に関する議論の確認  
 1租税法における法解釈  
 2租税法における事実認定  
 3租税法における事実認定と「疑わしきは納税者の利益に」という命題との関係
第3 借用概念と固有概念に係る要件事実論  
 1借用概念と要件事実論   
  ・借用概念の意義   
  ・借用概念と事実認定   
  ・要件事実論と租税法  
 2固有概念と要件事実論
第4 借用概念等をめぐる個別裁判例と要件事実論  
 1前掲最判昭63・7・19  
 2前掲最判昭36・10・27  
 3最判平23・2・18
 (裁判集民事236号71頁・判タ1345号115頁・判時2111号3頁・裁時1526号2頁)
 (「住所」の意義が争われた事例。いわゆる「武富士事件」)
 4最判平9・9・9(訟月44巻6号1009頁)
 (「配偶者」の意義が争われた事例。私法上の形式と実質にずれがある事例)
第5 おわりに
第3章 租税回避否認規定に係る要件事実論  
第1 はじめに  
第2 租税回避の意義及び租税回避事案における要件事実論の適用可能性
 1租税回避の意義
 2租税回避事案における要件事実論の適用可能性
第3 要件事実論に基づく「裁判規範としての一般的否認規定」の創造の許容性
 1私法上の法律構成による否認論の意義
 2私法上の法律構成による否認論の法創造機能
第4 租税回避否認規定における規範的要件に関する要件事実論のあり方
 1規範的要件の主要事実
 2IBM事件における不当性要件の要件事実論的解釈の整理
 3IBM事件における不当性要件の要件事実論的解釈の検討
第5 おわりに
第4章 所得税法における要件事実論
第1 はじめに
第2 課税対象  
 1損害賠償金の非課税所得該当性  
 2弁護士会役員の活動費等の必要経費該当性  
 3外れ馬券の必要経費該当性
第3 納税義務者
 1個人単位主義と所得税法56条
 2源泉徴収義務者と本来の納税義務者
第4 人的帰属
 1人的帰属の判断基準
 2親族の共同事業性
第5 時間的帰属
 1権利確定主義と管理支配基準
 2期間税の論理と年度帰属
第6 おわりに
第5章 法人税法における要件事実論
第1 はじめに──所得税法と法人税法との違い
第2 収益事業の範囲─法人税法施行令5条1項10号にいう「請負業」
   該当性を中心に
第3 益金に係る要件事実論  
 1規範的要件としての「権利の確定」  
 2管理支配基準  
 3無条件請求権説
第4 損金に係る要件事実論  
 1債務確定基準   
  ・費用限定説と非限定説   
  ・規範的要件としての債務確定基準   
  ・債務確定三要件説   
  ・債務確定二要件説   
  ・違法支出の排除効への疑問  
 2 寄 附 金   
  ・非対価説
  ・評価根拠事実
  ・評価障害事実としての経済的合理性の事実
 3 交際費等
  ・二要件説(旧二要件説・修正二要件説)
  ・旧二要件説
  ・修正二要件説
  ・三要件説(三要件説・修正三要件説)
  ・三要件説 ・修正三要件説
  ・五要件説(高額+支出効果説,高額+冗費該当性説)
  ・高額+支出効果説 ・高額+冗費該当性説
第5 公正処理基準
第6 結びに代えて
第6章 相続税法における要件事実論
第1 問題の提起  
 1相続税法と相続税・贈与税  
 2相続税の要件事実と特殊性
第2 相続税制の沿革と仕組み
第3 相続税の納税義務の発生と確定  
 1相続税の納税義務の発生  
 2相続税の申告と確定
第4 相続税の納税義務者  
 1制限納税義務者と無制限納税義務者  
 2相続税の納税義務と「住所」の意義  
 3相続税の連帯納付の義務   
  ・連帯納付の義務の範囲   
  ・連帯納付の義務と決定の要否
第5 相続税の課税財産の範囲  
 1相続税の本来の課税財産  
 2みなし相続財産
 3相続税の非課税財産
第6遺言と遺産分割協議  
 1遺  言  
 2遺産分割協議の諸相   
  ・遺産分割協議と家庭裁判所の調停・審判   
  ・遺産分割協議による遺産の分割方法と再遺産分割協議   
  ・遺留分減殺請求権の行使と承継する納付義務の範囲
第7 相続財産の評価  
 1評価の原則と財産評価基本通達の位置づけ  
 2評価通達と節税
第8 相続税の租税回避の防止  
 1同族会社等を利用した行為又は計算の否認  
 2法人組織の再編成・信託を利用した行為又は計算の否認  
 3特別の法人から受ける利益に対する課税  
 4人格のない社団又は財団に対する課税
第9 相続税と所得税の二重課税の排除  
 1二重課税排除の規定とその立法趣旨  
 2最判平22・7・6
 (民集64巻5号1277頁・判タ1324号78頁・判時2079号20頁)
 (長崎年金事件)(破棄自判)
  ・事案の概要
  ・判決の要旨
  ・検討
 3東京地判平25・6・20
 (〔平成24年(行ウ)第243号〕裁判所ホームページ)(請求棄却)
第10 総  括
第7章 消費税法における要件事実論
第1 消費税法の課題──要件事実論の観点から
第2 課税対象としての「資産の譲渡」  
 1「資産の譲渡」に関する関係法令・通達  
 2「立退料事件」の概要  
 3消費課税における「立退料」の機能   
  ・立退料の諸機能   
  ・補償金・賠償金に関するEU域内の共通ルール   
  ・日本における補償金・賠償金  
 4消費課税における「権利の消滅」  
 5所得税法と消費税法との整合  
 6小  括
第3 仕入税額控除の適用要件  
 1仕入税額控除の性質と立証責任の考え方  
 2積極要件による仕入税額控除
 3消極要件による仕入税額控除  
 4帳簿の保存に関する最高裁判決  
 5「20日判決」の反対意見  
 6帳簿及び請求書等の記載不備の場合  
 7小  括
第4 消費税法における要件事実論の意義
第8章 租税特別措置法における要件事実論
第1 はじめに
第2 租税訴訟における要件事実論──立証責任の分配の問題
第3 租税特別措置法をめぐる問題──要件事実論の視点から  
 1租税特別措置法の定義  
 2一般法と租税特別措置法の関係  
 3租税特別措置法をめぐる問題─規定の解釈の問題と立証責任の帰属の問題
第4 立法趣旨の発見・認識と所得税における譲渡所得課税の特例  
 1租税特別措置法35条の適用の可否をめぐる争い  
 2譲渡所得課税の特例の意義と立法趣旨の発見・認識  
 3譲渡所得課税における租税特別措置法35条の位置づけ  
 4租税特別措置法35条3項にいう「やむを得ない事情」の意義と立証責任
第5 立法趣旨の変化と法人税における交際費等課税  
 1交際費等課税の意義  
 2交際費等の該当性と萬有製薬事件  
 3立法趣旨の変化と交際費等課税の規定の解釈への影響
第6 結  論
第9章 国際租税法における要件事実論
    ─租税条約における立証責任の転換という手法の採用について
第1 国際課税の特徴
 1国際課税の法源
 2国家間における立法管轄権の抵触と租税条約による課税権の配分
 3租税条約による国内法に定められた課税要件の変更
 4外国には執行管轄権が及ばないこと
 5源泉徴収の方法による課税がわが国による最終課税になる場合があること
第2 国際課税事案における立証責任の分配の考え方
 1国内課税事案との比較
 2租税条約に固有の問題と租税条約における立証責任の転換規定の採用
第3 PPT条項の内容
 1新日独租税条約前文と21条8項
 2PPT条項の意味とその射程  
  ・PPT条項の目的  
  ・PPT条項の特徴  
  ・PPT条項の目的  
  ・PPT条項の適用対象となる取引等の種類  
  ・PPT条項の適用対象となる取引等の範囲  
  ・PPT条項にいう「主たる目的の一つ」の意味  
  ・「判断が妥当である」の意味  
  ・立証責任の転換  
  ・「租税条約の関連する条文の目的」の意味  
  ・PPT条項の特徴のまとめ
第4 わが国の源泉徴収制度とPPT条項  
 1はじめに  
 2問題の所在  
 3わが国の源泉徴収による所得税が自動確定の税とされていることと
  PPT条項の関係
 4納税告知取消訴訟の当事者とPPT条項の関係
 5還付方式の採用は解決策になるか
 6ま と め
第10章 地方税法における要件事実論
第1 問題の所在  
 1地方税法の特色と要件事実論  
 2要件事実論に関する視座の設定
第2 住民税に係る取消訴訟における要件事実論
 1住民税に係る課税要件及び賦課徴収の特色と主張立証責任の帰属の原則
 2個人住民税に係る取消訴訟における要件事実・均等割・所得割・都道府
  県民税利子割 ・都道府県民税配当割・都道府県民税株式譲渡所得割
 3法人住民税に係る取消訴訟における要件事実・均等割・法人税割・道府県
  民税配当割及び道府県民税株式譲渡所得割
第3 事業税に係る取消訴訟における要件事実論
 1事業税に係る課税要件及び賦課徴収の特色と主張立証責任の帰属の原則
 2個人事業税に係る取消訴訟における要件事実
 3法人事業税に係る取消訴訟における要件事実
第4 固定資産税に係る取消訴訟における要件事実論
 1固定資産税に係る課税要件及び賦課徴収の特色と主張立証責任の帰属の原則
 2課税要件(財産評価を除く)の認定判断の違法を争う取消訴訟における
  要件事実・納税義務者の認定判断の過誤・課税客体の認定判断の過誤
 3財産評価の違法を争う取消訴訟における要件事実
第5 おわりに

Copyright © SEIRIN SHOIN All Rights Reserved.