青林書院



プラクティス 民事保全法


プラクティス 民事保全法
 
訴訟代理人のための法律シリーズ
編・著者梶村太市・西村博一・井手良彦 編
判 型A5判
ページ数876頁
税込価格8,640円(本体価格:8,000円)
発行年月2014年09月
ISBN978-4-417-01632-8
在庫有り
  
在庫があります

■解説
■「概説」と「Q&A」で裁判直結の知識・ノウハウを伝授!!

家事事件の「審判前の保全処分」等を含む「民事保全」実務に不可欠の法律知識を総括。
総論(概説計4章)と各論(Q&A計80問)の2つのステージに分けて、保全実務の
“真に使える”情報を提供する!!

■編集者
梶村 太市:常葉大学法学部教授・弁護士
西村 博一:宇治簡易裁判所判事
井手 良彦:東京簡易裁判所判事

執筆者(執筆順)
梶村 太市:上掲
井手 良彦:上掲
西村 博一:上掲
増田 輝夫:明石簡易裁判所判事
辰已  晃:大阪簡易裁判所判事
笹本  昇:東京簡易裁判所判事
桐  忠裕:札幌簡易裁判所判事
餅井 亨一:札幌地方裁判所刑事訟廷庶務係長兼記録係長
西村  彬:弁護士・弁理士
堀田  隆:立川簡易裁判所判事
上坂 俊二:大阪高等裁判所主任書記官
丸尾 敏也:東京簡易裁判所判事
中内  篤:大阪簡易裁判所判事
立脇 一美:大阪簡易裁判所判事
貴島慶四郎:元横浜家庭裁判所家事調停委員
平本美枝子:元横浜家庭裁判所家事調停委員
石井久美子:横浜家庭裁判所小田原支部家事調停委員



   
−お奨めの関連する書籍−

プラクティス 金銭消費貸借訴訟
「概説」と「Q&A」で裁判直結の知識・ノウハウを伝授
編・著者:梶村太市・西村博一・井手良彦 編
発行年月:2015年08月
税込価格:6,480
在庫:有り


プラクティス交通事故訴訟
「概説」と「Q&A」で裁判直結の知識・ノウハウを伝授
編・著者:梶村太市・西村博一・井手良彦 編
発行年月:2016年12月
税込価格:5,940
在庫:有り



■書籍内容
目 次

第1編 民事保全法の基礎知識

第1章 総 則
〔1〕民事保全の範囲
(1)狭義の民事保全 (2)広義の民事保全
〔2〕民事保全の機関及び保全執行裁判所
〔3〕審理手続――決定主義の徹底
〔4〕担保の提供
〔5〕事件記録の閲覧等
〔6〕専属管轄
〔7〕民事訴訟法規の準用(民保7条)
〔8〕釈明処分の特例(民保9条)

第2章 保全命令に関する手続
第1節 通則の概要 
〔1〕管 轄
(1)保全命令事件の国際的裁判管轄権(民保11条)
(2)保全命令事件の国内的裁判管轄権(民保12条)
〔2〕申立て及び疎明(民保13条)
(1)申立ての趣旨等(1項)
(2)被保全権利と保全の必要性の疎明(2項)
(3)口頭弁論期日又は審尋期日の呼出し(民保規3条)
(4)期日調書の作成・省略
(民保規7条・8条)
(5)主張書面の提出の方法等(民保規14条)
(6)主張書面等の直送(民保規15条)
〔3〕保全命令の担保
(1)立担保等の裁判等 
(2)供託場所
〔4〕裁判長の権限(民保15条) 
〔5〕決定の理由(民保16条)と決定書の作成(民保規9条)
〔6〕送 達(民保17条)
〔7〕保全命令の申立ての取下げ(民保18条)
〔8〕却下の裁判に対する即時抗告(民保19条)

第2節 仮差押命令の概要
〔1〕仮差押命令の必要性――被保全権利と保全の必要性
(1)仮差押えの被保全権利 
(2)保全の必要性
〔2〕仮差押命令の対象
(1)仮差押命令
(2)仮差押命令の対象
〔3〕仮差押解放金
(1)仮差押解放金の意義,制度趣旨
(2)仮差押解放金の供託による効果等

第3節 仮処分命令の概要
〔1〕仮処分命令の必要性――被保全権利と仮処分の必要性
(1)係争物に関する仮処分 
(2)仮の地位を定める仮処分(仮地位仮処分)
〔2〕仮処分の方法
(1)仮処分の方法 
(2)仮処分の典型例
〔3〕仮処分解放金
(1)仮処分解放金の法的性質
(2)仮処分解放金の算定  
(3)仮処分解放金の供託の効果
〔4〕債務者を特定しないで発する占有移転禁止の仮処分命令
(1)債務者を特定しないで発する占有移転禁止の仮処分の制度趣旨 
(2)「執行前に債務者を特定することを困難とする特別の事情」という要件
について
(3)発令,送達,執行

第4節 保全異議の概要
〔1〕保全異議の申立て
(1)意 義
(2)管轄裁判所
(3)申立ての方式
〔2〕保全執行の停止の裁判等
〔3〕事件の移送
〔4〕保全異議の審理及び終結
(1) 債権者の主張疎明
(2)債務者の主張疎明
(3)審理方法
(4)審理の終結
〔5〕保全異議の申立てについての決定
〔6〕原状回復の裁判
〔7〕保全命令を取り消す決定の効力
〔8〕保全異議の申立ての取下げ

第5節 保全取消しの概要
〔1〕保全取消しの制度
〔2〕本案の訴えの不提起等による保全取消し
(1)意 義
(2)起訴命令の申立て
(3)審理・裁判 
(4)提起すべき本案の訴え
(5)保全命令の取消しの申立て
(6)審理・裁判
〔3〕事情の変更による保全取消し
(1)意 義
(2)事情変更にあたる事由
(3)保全取消しの申立て 
(4)審理・裁判
〔4〕特別の事情による保全取消し
(1)意 義
(2)特別の事情にあたる事由
(3)保全取消しの申立て 
(4)審理・裁判

第6節 保全抗告の概要
〔1〕保全抗告
(1)保全抗告をすることのできる裁判
(2)再度の考案の禁止
(3)再抗告の禁止
〔2〕保全命令を取り消す決定の効力の停止の裁判

第3章 保全執行に関する手続・仮処分の効力
第1節 総 則
〔1〕保全執行の要件
(1)保全命令と保全執行
(2)執行期間
(3)保全命令の債務者への送達
〔2〕追加担保を提供しないことによる保全執行の取消し
(1)追加担保の提供を条件とする裁判
(2)保全執行の取消し 
(3)事情変更による保全命令の取消しとの関係
〔3〕第三者異議の訴えの管轄裁判所の特例
(1)保全執行に対する第三者異議の訴えの管轄裁判所
(2)保全執行裁判所が高等裁判所である場合の第三者異議の訴えの
  管轄裁判所の特例

第2節 仮差押執行の概要
〔1〕不動産に対する仮差押えの執行
(1)不動産に対する仮差押えの執行手続
(2)仮差押えの登記をする方法による不動産に対する仮差押えの執行
(3)強制管理の方法による不動産に対する仮差押えの執行
〔2〕船舶に対する仮差押えの執行
(1)船舶に対する仮差押えの執行手続
(2)仮差押えの登記をする方法による船舶に対する仮差押えの執行
(3)執行官に対し船舶国籍証書等を取り上げて保全裁判所に提出すべき
  ことを命じる方法による船舶に対する仮差押えの執行
〔3〕動産に対する仮差押えの執行
(1)仮差押えの執行の対象物
(2)仮差押えの執行の申立て
(3)執行手続 
(4)仮差押目的動産の保管等
(5)仮差押目的動産の換価
(6)金銭及び手形等に対する仮差押えの執行
(7)仮差押えの執行の効力
〔4〕債権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行
(1)債権に対する仮差押えの執行
(2)その他の財産権に対する仮差押えの執行
〔5〕航空機,自動車及び建設機械又は小型船舶に対する仮差押えの執行
(1)航空機に対する仮差押えの執行
(2)自動車に対する仮差押えの執行
(3)建設機械又は小型船舶に対する仮差押えの執行
〔6〕仮差押解放金の供託による仮差押えの執行の取消し
(1)仮差押解放金
(2)仮差押解放金の供託による仮差押えの執行の取消し
(3)仮差押解放金に対する仮差押債権者,仮差押債務者の権利関係

第3節 仮処分の執行の概要
〔1〕仮処分の執行
(1)仮差押えの執行又は強制執行の例による仮処分の執行
(2)仮処分命令への債務名義性の付与
(3)各種仮処分の執行の方法
〔2〕不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行
(1)処分禁止の仮処分と当事者恒定効
(2)不動産に関する権利についての登記請求権を保全するための処分禁止
  の仮処分命令
(3)不動産に関する権利についての登記請求権を保全するための処分禁止
  の仮処分命令の執行
(4)不動産に関する権利についての登記請求権を保全するための処分禁止
  の仮処分命令の効力
(5)第三者に対する登記の抹消の通知
〔3〕不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登記請求権を保全
   するための処分禁止の仮処分の執行
(1)不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登記請求権を保全
  するための処分禁止の仮処分命令の執行
(2)不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登記請求権を保全
  するための処分禁止の仮処分命令の効力
〔4〕債務者を特定しないで発された占有移転禁止の仮処分命令の執行
(1)仮処分債務者を特定しないで発令する占有移転禁止の仮処分命令
(2)仮処分債務者を特定しないで発令する占有移転禁止の仮処分命令のための要件
(3)仮処分債務者を特定しないで発令する占有移転禁止の仮処分命令の発令と執行
〔5〕建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行
(1)建物の処分禁止の仮処分命令と当事者恒定効 
(2)建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分命令の発令と執行
(3)建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分命令の効力
〔6〕法人の代表者の職務執行停止の仮処分等の登記の嘱託
(1)法人の代表者その他法人の役員の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分命令の意義
(2)法人の代表者その他法人の役員の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分命令の発令
(3)法人の代表者その他法人の役員の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分命令の
  執行及び効力
〔7〕仮処分解放金の供託による仮処分の執行の取消し
(1)仮処分命令における仮処分解放金の定め
(2)仮処分解放金の供託による仮処分の執行の取消し
(3)仮処分解放金に対する権利関係

第4節 仮処分の効力の概要
〔1〕不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力
(1)概 説
(2)類 型
(3)効 力
〔2〕不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための
   処分禁止の仮処分の効力
〔3〕占有移転禁止の仮処分命令の効力
(1)意 義
(2)類 型
(3)客観的現状変更に対する効力
(4)主観的現状変更に対する効力
〔4〕建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の効力

第4章 審判前の保全処分
〔1〕沿革と目的
〔2〕保全処分の4類型
(1)第1類型――財産の管理者の選任等の処分
(2)第2類型――後見命令等の処分
(3)第3類型――職務執行停止等の処分
(4)第4類型――仮差押え・仮処分その他の保全処分
〔3〕申立ての手続と効力
(1)保全処分の付随性
(2)保全処分の開始
(3)申立ての趣旨と事由
(4)疎明義務
(5)取下げの特則
(6)陳述の聴取
(7)調書の省略
(8)記録閲覧の制限
(9)処分の告知
(10)保全処分の効力
〔4〕保全処分に対する不服申立てと取消し
(1)即時抗告
(2)事情変更による取消し

第2編 保全命令・保全執行・仮処分の効力に関するQ&A

第1章 仮差押命令に関するQ&A
Q1|仮差押命令申立ての留意点
 X会社は,Y会社に対して500万円の売掛金債権を有しているが,
 Y会社が約束手形の不渡りを出したとの情報を得たことから,
 調査してみると,Y会社は,X会社以外にも多額の債務を負っており,
 倒産寸前であることが判明した。
(1)X会社がY会社所有の不動産について仮差押命令の申立てをする際に
  留意すべき点は何か。
(2)Y会社の代表取締役Zの自宅の居間には,Zがバブル最盛期に購入した
  モネの名画が掛けられている。この絵画について仮差押命令の申立てを
  することができるか。
Q2|保全の必要性
 Xは,Yに対し,貸金500万円の返還を求める訴えを提起し,
 その勝訴判決を得たことから,Y所有の土地・建物について判決主文の
 仮執行宣言に基づいて強制競売を申し立て,これに基づく強制競売開始
 決定がされた。しかし,その後,無剰余を理由として,上記強制競売開
始決定は取り消された。そこで,Xは,上記判決の確定後,上記無剰余
取消しによって保全の必要性が生じていると主張して,Yを債務者,
 上記判決の主文に表示された債権を被保全権利として,Y所有の上記土地・
 建物について仮差押命令の申立てをした。この申立ては認められるか。
Q3|特定動産の仮差押え
 Xは,Yに対して500万円の貸金債権を有しているが,支払期日が経過した
 のにその弁済がないため,調査してみると,Yは,X以外にも多額の借金
 を負っており,その支払を遅滞していることや,著名画家の絵画2点を処分
 しようとしていることが判明した。
(1) Xが上記絵画2点のみについて仮差押命令の申立てをすることは認めら
   れるか。認められるとした場合,
   上記絵画の特定はどのようにすべきか。
(2) 上記絵画2点の時価額は,1点が600万円で,もう1点が800万円である。
   2点とも仮差押えをすることができるか。
(3) 保全裁判所は,上記絵画2点について仮差押命令を発令したが,
   執行官がその執行に際して超過仮差押えになると判断した場合はどうなるか。
(4) 上記(3)の超過仮差押執行がされた場合,Yは,どのような不服申立てを
   することができるか。
Q4|立担保額に対する不服申立て
 立担保額の決定に対し,これを告知された債権者は,不服申立てをすることが
 できるか。
Q5|別個の目的物に対する後行仮差押えの可否
 Xは,Yの連帯保証の下,Aに対し,300万円を貸し付けた。しかし,支払期日
 が経過したのにその弁済がないため,Yを債務者,上記連帯保証債務履行請求権
 を被保全権利として,Y所有の甲土地について仮差押命令を申し立て,これに
 基づく仮差押命令が発令されるとともに,甲土地について保全裁判所の嘱託に
 よる仮差押えの登記がされた。ところが,Xは,一部が保全されていないため
 完全な弁済が受けられないとして,上記仮差押命令と同一の請求権を被保全債権
 として,さらにY所有の乙土地について仮差押命令の申立てをした。
 この申立ては認められるか。
Q6|未登記不動産の仮差押えにおいて当該不動産が債務者の所有に属することの
 立証の程度未登記不動産に対する仮差押命令の申立てをする場合,当該不動産が
 債務者の所有に属することの立証の程度はどうなるか。
Q7|自動車の仮差押え
 X会社は,Y会社に対し,800万円を貸し付けたが,Y会社は,支払期日に
 15万円を支払ったのみで残額を返済しようとしない。X会社が調査してみると,
 Y会社は,多額の不渡手形を出したためA銀行から取引停止処分を受け,事実上
 倒産状態にあり,自動車以外にはめぼしい財産はないことが判明した。そこで,
 X会社は,上記自動車について仮差押命令の申立てをした。これを前提に,
 下記事項について説明しなさい。
(1)自動車仮差押命令の申立て
(2)対象となる自動車
(3)自動車に対する仮差押えの執行手続
(4)仮差押執行済み自動車の売却申立て
Q8|工場に備え付けられた機械・器具の仮差押え
 工場に属する土地又は建物に備え付けられた機械・器具その他工場の用に
 供する物について仮差押命令の申立てをすることができるか。
Q9|権利能力なき社団の不動産の仮差押え
 Xは,権利能力なき社団Yに対して,300万円の貸金債権を有しているが,
 これを保全するため,社団Yの構成員全員に総有的に帰属する甲土地
 (社団Yのために第三者Aがその登記名義人になっている)について
 仮差押命令の申立てをすべく準備中である。なお,Xは,権利能力なき
 社団Y及びAを被告として,甲土地が社団Yの構成員全員の総有に属する
 ことの確認を求める訴えを提起しているが,審理中であって,その判決は
 まだ出ていない。この場合,Xが甲土地について仮差押命令の申立てを
 するには,どのようにすればよいか。
Q10|滞納処分による差押えのある不動産の仮差押え
 X工務店は,Yに対して1000万円の工事代金債権を有しているが,
 その支払がないため,Yを債務者,上記工事代金のうち500万円を被保全権利
 として,Y所有の甲土地(時価800万円)について仮差押命令の申立てをした。
(1)被保全権利の額を超過する甲土地に対する仮差押命令の申立ては認められるか。
(2)債権の一部を被保全権利とする仮差押命令の申立ては認められるか。
(3)甲土地について滞納処分による差押えがされていた場合,保全裁判所は
  どのように処理すべきか。
Q11|預金・退職金の仮差押え
 X(妻)は,別居中のY(夫)を相手方として離婚調停の申立てをしたが,
 その調停期日で,Yは,離婚することに合意してもよいが財産分与には
 応じられないと頑強に主張したため,調停は不成立となった。そこで,Xは,
 Yに対し,離婚を求める訴えを提起すべく準備中であるが,Yの上記言動
 から推し量ると,離婚の訴えを提起した場合には,Xへの財産分与を免れ
 ようとして財産が隠匿されるおそれがある。
 そこで,Xは,Yの銀行預金について仮差押えをしようと考えている。
(1)Xが債権仮差押命令の申立てをする際に留意すべき点は何か。また,
 C銀行とD銀行にY名義の預金があることは判明しているが,その預金の
 種類・金額が不明である場合,Xは,どのような手段をとることができるか。
(2)Xは,Yが勤務会社に辞表を提出したとの情報を得たことから,Yの退職金
 全額について仮差押命令の申立てをした。この申立ては認められるか。
(3)仮差押命令の送達を受けたC銀行が,裁判所に対し,仮差押命令事件記録
 の閲覧を申請してきた。この申請は認められるか。
Q12|預貯金債権の特定方法
 X会社は,Y会社に対して5000万円の貸金債権を有しているが,
 これを保全するため,いわゆる三大メガバンク及びゆうちょ銀行に対する
 預貯金債権の仮差押命令の申立てをするにあたり,
 〇安腑瓮バンクに対する預金債権については,それぞれの取扱店を一切限定
 せずに,「複数の店舗に預金債権があるときは,支店番号の若い順序による」
 という順位をつける方式によって,△罎Δ舛膓箙圓紡个垢訝金債権について
 は,全国の貯金事務センターを全部列挙して,「複数の貯金事務センターの
 貯金債権があるときは,別紙貯金事務センター一覧表(省略)の番号の若い順
 による」という順位付けをする方式によって,それぞれ仮差押債権の表示をした。
 このような,全店一括順位付け方式によって預貯金債権について仮差押命令の
 申立てをすることは認められるか。
Q13|他人名義預金の仮差押え
 Xは,いわゆる振り込め詐欺の被害に遭い,指定された銀行預金口座に500万円を
 振り込んでしまった。後日,その詐欺グループの一人であるYが逮捕され,
 警察の取調べによると,Xの振り込んだ銀行口座は,Yら名義ではなく他人名義
 になっていることが判明した。そこで,Xは,Yを債務者,騙し取られた金額と
 同等の損害賠償500万円及び慰謝料30万円の合計530万円を被保全権利として,
 上記他人名義の銀行預金について仮差押命令の申立てをした。
 この申立ては認められるか。
Q14|仮差押解放金――第三者による供託の可否
 X工務店は,Y会社から事務所の改修工事を代金1500万円で請け負い,
 その工事を完成させた。しかし,上記代金の支払がなかったので,Y会社を債務者,
 上記請負代金債権を被保全権利として,Y会社所有の甲土地について仮差押命令を
 申し立て,これに基づく仮差押命令が発令されるとともに,甲土地について保全
 裁判所の嘱託による仮差押えの登記がされた。ところが,ZがY会社から甲土地を
 買い受け,Zへの所有権移転登記手続をしてしまった。その上,Zは,上記仮差押
 命令において定められた仮差押解放金を供託して,上記仮差押命令の取消しの申立
 てをした。この場合,Zによる仮差押解放金の供託は認められるか。
Q15|本案訴訟から派生する民事保全手続
 魚の養殖業者Y会社は,平成24年3月31日,X会社に対し,○○沖漁場内で養殖
 されているブリ及びブリヒラ(以下「本件原魚」という)を売り,占有改定の
 方法によって引渡しをするが,本件原魚はそのままの状態でY会社が飼育管理
 を委託され,一定期間内にY会社が買い戻す旨の内容の契約を締結した。
 ところが,同年7月30日,Y会社が民事再生を申し立てた(同年8月4日に開始決定)。
 そこで,X会社は,同年8月21日,本件原魚について占有移転禁止の仮処分命令
 (債権者による保管を許す執行官保管)の申立てをし,これが認容されてX会社
 が本件原魚の保管を委託されることになった。X会社は,民事再生手続開始決定
 の前後を通じて本件原魚の飼育等(その経費は9600万円)をしていた。
 これを前提に,以後派生する民事保全法上の問題点について,想定される本案の
 訴えに対応させつつ説明しなさい。
Q16|担保取消し(1)――総論
 A銀行は,X保証会社の連帯保証の下,Y会社に対し,500万円を貸し付けた。
 支払期日が経過したのにY会社からの弁済がなかったので,X保証会社が
 その弁済を履行した。その後,X保証会社は,Y会社を債務者,上記代位弁済
 による求償債権を被保全権利として,Y会社のZ会社に対する売掛代金債権に
 ついて仮差押命令を申し立てたところ,75万円の担保を提供して,その仮差押
 命令が発令された。次の場合,X保証会社は,上記担保を取り戻すことができるか。
(1)本案の訴えにおいてX保証会社が全部勝訴し,その判決が確定した場合
(2)本案の訴えにおいてX保証会社・Y会社間に訴訟上の和解が成立した場合
(3)本案の訴えにおいてX保証会社が敗訴し,その判決が確定したのに,Y会社が
  上記担保について権利を行使しようとしない場合
(4)第三債務者Z会社に対し,仮差押命令及び陳述催告が送達されたが,Z会社から
 「仮差押えにかかる売掛債権は,すでに弁済したので存在しない」との回答が
  あったため,X保証会社が上記仮差押命令の申立てを取り下げた場合
Q17|担保取消し(2)――和解条項と担保取消し
 X電器店は,Yに対して70万円の売買代金債権を有しているが,Yはその代金を
 支払わないため,Yを債務者,上記売掛金代金を被保全権利として,Y所有の
 普通乗用自動車について仮差押命令を申し立てたところ,10万円の担保を提供
 して,その仮差押命令が発令された。その後,X電器店は,Yに対して上記売
 買代金債権の支払を求める本案の訴えを提起し,第2回口頭弁論期日において,
 X電器店とYとの間に,次の和解条項による裁判上の和解が成立した。
 そこで,X電器店は,上記10万円の担保について担保事由が消滅したとして,
 担保取消しの申立てをした。この申立ては認められるか。
【和解条項】
1 Yは,X電器店に対し,70万円の支払義務があることを認める。
2 Yは,X電器店に対し,前項の金員のうち,60万円を平成○○年4月から
  同年9月まで毎月末日限り,10万円ずつに分割して,X電器店が指定する口座
  に振り込む方法により支払う。
3 Yが,前項の分割金の支払を1回でも怠ったときは,当然に同項の期限の利益を
  失い,Yは,X電器店に対し,第1項の金員から既払額を控除した残金を直ちに
  支払う。
4 Yが前項により期限の利益を失うことなく,第2項の分割金を支払ったときは,
  X電器店は,Yに対し,Yのその余の支払義務を免除する。
5 X電器店は,その余の請求を放棄する。
6 X電器店とYは,X電器店とYとの間には,本件に関し,この和解条項に定める
  もののほかに,何らの債権債務がないことを相互に確認する。
7 訴訟費用は各自の負担とする。

第2章 仮処分命令に関するQ&A
Q18|保全の必要性(1)――仮の地位を定める仮処分
 X信託銀行は,平成22年5月21日,Yらとの間で,Y信託銀行の一定の営業等
 (以下「本件対象営業等」という )の移転等からなる事業再編及び事業提携
 (以下「本件協働事業化」という)に関して基本合意(以下「本件基本合意」
  という)をし,その書面(以下「本件基本合意書」という)を作成した。
 本件基本合意書には,各当事者は,第三者との間で本件基本合意の目的と抵触
 する取引等に係る情報提供や協議を行わないものとする旨の条項
 (以下「本件条項」という)が設けられていた。X信託銀行とYらは,
 本件基本合意に基づいて,本件協働事業化の詳細条件を定める基本契約の締結を
 目指して交渉していた。しかし,Yらは,Yらグループの窮状を乗り切るため
 には,本件基本合意を白紙撤回し,Y信託銀行を含めてAグループと統合する
 以外に方策はないとの経営判断をするに至り,平成22年7月14日,X信託銀行に
 対し,本件基本合意の解約を通告するとともに,A信託銀行に対し,Y信託銀行
 の本件対象営業等の移転を含む経営統合の申入れをした。そこで,X信託銀行は,
 平成22年7月16日,YらがAグループとの間で,経営統合に関する協議を開始
 したことが本件条項で定められたX信託銀行の独占交渉権を侵害するものである
 と主張して,本件基本合意に基づいて,Yらが第三者との間で,平成24年3月末日
 までの間,Y信託銀行の本件対象営業等の第三者への移転等に関する情報提供
 又は協議を行うことの差止めを求める仮処分命令の申立てをした。この場合,
 X信託銀行に,保全の必要性は認められるか。
Q19|保全の必要性(2)――子の引渡し
 X(妻)は,Y(夫)の両親宅において婚姻生活を始めたが,次第にY及び
 その母親との仲が円満を欠くようになり,生後3ヵ月の子を連れてXの実家に
 戻った。その数ヵ月後,Yは,Xの実家で,子と面接するに際し,Xとその両親
 の隙をねらって子を連れ去り,1週間後に離婚の訴えを提起した。これに対して,
 Xは,Yを債務者,子の引渡請求権を被保全権利として,子の引渡しを求める
 仮処分命令の申立てをした。この仮処分命令が発令されるためには,最高裁平成
 5年10月19日判決(民集47巻8号5099頁)にいう「明白性の要件」が必要となるか。
Q20|仮処分の被保全権利
 Aが死亡し,その妻B及び子C・D・Eの4人が,亡A所有の甲土地を共同相続
 した。ところが,Eは,甲土地が未登記であることを奇貨として,勝手にE単独
 名義による表示の登記をした上,これを不動産業者に売却しようとしている。
 そこで,B・C・Dは,Eに対し,共有持分権確認及び更正登記手続を求める
 訴えを提起すべく準備しているが,この請求権を保全するため,甲土地全部に
 ついて処分禁止の仮処分命令の申立てをした。この申立ては認められるか。
Q21|所有権の一部についての仮処分
 Yは,Xに対し,Y所有の一筆の土地の一部のみを贈与したが,同部分について
 Xへの所有権移転登記手続をせず,かえって,同部分を含む一筆の土地を第三者
 に譲渡しようとしている。この場合,Xは,Yを債務者,Xへの所有権移転登記
 手続請求権を被保全権利として,上記一筆の土地の一部について処分禁止の仮処
 分命令の申立てをすることができるか。
Q22|債権者取消権保全の仮処分
 Xは,Yに対して140万円の貸金債権を有している。しかし,Yは,X以外にも
 多額の債務を負っているのに,Y所有の土地・建物をYの妻Zに贈与して,
 Zへの所有権移転登記手続をしてしまった。
(1)Xは,受益者Zに対し,処分禁止の仮処分命令の申立てをすることができるか。
(2)保全裁判所は,処分禁止の仮処分命令を発令する際に仮処分解放金を定めること
  ができるか。
(3)Zが仮処分解放金を供託した場合,これに対するXの権利行使は,どのように
  行われるか。
Q23|抵当権設定登記手続請求権保全の仮処分
 Xは,衣料品販売店を経営するYに対し,Y所有の土地・建物に抵当権を設定
 することを条件に500万円を貸し付けることになっていたが,Yから「手形決済
 の日が3日後に差し迫っている。後日,抵当権設定登記申請に必要な登記識別
 情報や委任状など関係書類一式を交付するので,先に100万円を融資してくれ
 ないか」と懇願された。これを信用したXは,Yに対してまず100万円を交付した。
 しかし,Yが上記約束を果たさないことから,調査してみると,Yは,X以外にも
 多数の負債を負っており,上記土地・建物を他に売却したり,担保権を設定したり
 するおそれがあることが判明した。
(1)Xは,どのような保全命令の申立てをすることができるか。
(2)保全命令の発令後,Xは,どのような本案の訴えを提起すればよいか。
(3)上記(1)の保全命令の主文はどのようになるか。
Q24|占有移転禁止の仮処分
 Xは,Yに対し,X所有のビルの1室を事務所として賃貸したが,素性の悪そうな
 輩が頻繁に出入りするようになったため,調査してみると,Yはすでに所在不明
 となっており,その代わりに第三者Zが上記事務所を占有
 していることが判明した。
(1)XがZに対し,占有移転禁止の仮処分命令の申立てをする場合,どのような
  申立ての趣旨を掲記したらよいか。
(2)占有移転禁止の仮処分命令の執行後,Zが上記事務所の内装を全面的に変更
  しようとしていることが判明した場合,Xは,どのような手段をとることが
  できるか。
(3)占有移転禁止の仮処分命令の執行後,ZがAに占有を移転した場合,先行する
  仮処分令の効力はAにも及ぶか。
(4)上記事務所に対する明渡断行の仮処分命令の申立ては認められるか。
Q25|自動車引渡しの断行の仮処分
 ー動車販売会社Aは,平成22年4月1日,Yに対して,以下の約定の下,自動車
  を500万円(諸費用・消費税込)で販売するという契約を結んだ(以下「本件
  売買契約」という)。約定代金500万円から頭金100万円を控除した400万円に
  分割払手数料40万円を加えた合計440万円につき,YはA社に平成22年4月から
  同25年11月まで毎月末日限り10万円ずつ支払う(44回分割)。
 ■悄癖歉擴饉辧砲蓮ち案影,Yとの間で,本件売買契約に基づくYのA社
  に対する分割払債務につき連帯保証をする旨の合意をし,後記颪量鹹蠅
  基づき,本件自動車の所有権を取得した(以下「本件保証委託契約」という)。
 K楫鑁簀齋戚鵑繁楫鑛歉攬兮契約には,以下の共通条項がある。
  駛楫鐚動車の所有権は,これらの本契約の効力発生と同時にA社からXへ
   移転するが,所有名義人はA社とする。
  鬘戮分割金の支払を怠り,怠った金額が20万円になったときには,期限の利益
   を失う。
  鶸限の利益を失ったときは,Yは,直ちに弁済のため,本件自動車をXに
   引き渡す。
 ぃ措劼蓮な神22年4月1日,Yに対して,本件売買契約に基づき本件自動車を
  引き渡した。
 ィ戮蓮な神23年12月までの分割金合計210万円(21回分)を支払ったが,
  同24年1月分と2月分の合計20万円の支払を怠り,期限の利益を失った
  (同年3月以降も支払はない)。そして,Xの本件自動車の引渡請求に対して,
  Yは,使用の必要性があるとして引渡しを拒んでいる。
 Γ悗錬措劼吠歉攤通海鰺行し,他方,Yに求償金債務の履行と本件自動車の
  引渡しを求めて提訴する予定であるとして,裁判所に本件自動車の引渡しを
  求める断行の仮処分を申し立てた。このような申立ては認められるか。
Q26|不作為を命ずる仮処分(1)――無断増改築
 Xは,Yに対し,X所有の甲土地を,普通建物所有目的の約定で賃貸した
 (普通借地契約)。その後,Xは,Yが甲土地上の普通建物を取り壊し,
 その跡に鉄筋コンクリート造り5階建てアパートを建築しようとしているとの
 情報を得たことから,調査してみると,Yは,A工務店に上記アパートの
 建築工事を発注していることが判明した。
(1)Xは,どのような仮処分命令の申立てをすることができるか。その被保全権利
  は何か。
(2)Yが発令された仮処分命令に違反して上記建築工事を続けている場合,
  Xは,どのような手段をとることができるか。
Q27|不作為を命ずる仮処分(2)――日照妨害等
 Xら4名は,別紙物件目録記載の土地を各所有するとともに,その土地上に木亜鉛
 メッキ鋼板葺平家建の居宅を各所有し,居住している。不動産業者Yは,
 Xら4名の上記土地の南側隣接地を買収し,その土地上に東西40m・南北8mに
 わたる鉄筋コンクリート造り6階建ての賃貸マンションを建築することを計画し,
 A工務店がその工事を請け負って建築に着工した。上記マンションが完成すると,
 地上22mの高さとなるため,冬至になるとXら4名の居宅には正午の日光が
 まったく入らなくなり,夏になると上記マンションが障壁となって南風を遮断
 することになり,冬になると北風が上記マンションに沿って降下することになる。
 これらによって,Xら4名は,各居宅の照明費及び冷暖房費について経済的損失
 を被るほか,その精神的苦痛は極めて大きいものとなる。
 そこで,Xら4名は,Yの上記建築行為は,Xら4名の各土地・居宅を安く買収
 することを目的とした悪意ある行為であり,しかも,Xら4名の日照・通風等
 の利益が侵害されると主張して,Y及びA工務店を債務者,日照権等を被保全
 権利として,上記建築工事禁止の仮処分命令の申立てをした。
(1)日照・通風妨害を理由とする建築工事禁止の仮処分命令の申立てにおける
  被保全権利は何か。
(2)保全の必要性は認められるか。
(3)建築工事禁止請求権の成否を判断する基準としての「受忍限度」とは何か。
(4)「受忍限度」に関する主張と立証責任はどうなるか。
(5)建築工事禁止の仮処分命令の執行はどのように行われるか。
Q28|パブリシティの権利を被保全権利とする仮処分
 パブリシティの権利に基づいて,その氏名・肖像を表示した商品の製造販売等
 を差し止める仮処分命令の申立ては認められるか。
Q29|抵当権実行禁止等の仮処分
 Y会社は,物上保証人X所有の土地・建物について抵当権を設定した上,
 Zに対し,800万円を貸し付けたが,支払期日にその弁済がなかったため,
 上記土地・建物について担保権実行としての競売の申立てをし,その開始決定
 を得た。これに対して,Xは,ZのY会社に対する上記貸金債務について物上
 保証したことはないし,Xが仕事の関係で長期にわたって外国に滞在している
 間,妻Aに預けておいた実印をAの兄Zが無断で持ち出し,Xの知らない間に
 抵当権が設定されたと主張して,Y会社に対し,所有権に基づいて,抵当権
 設定登記抹消登記手続を求める訴えを提起すべく準備中である。
(1)Xは,上記土地・建物について不動産競売手続を停止する旨の仮処分命令の
  発令を得ることができるか。
(2)Y会社が第三者に上記抵当権を譲渡するおそれがある場合,Xは,
  どのような仮処分命令の申立てをすることができるか。
Q30|仮処分の競合
 Xは,係争山林(甲山林)について,Yを債務者とする下記の仮処分命令の
 発令を得,その命令がYに送達されてその効力が生じた(第1次仮処分)。
1 Yは,甲山林に立ち入り,かつ,立木を伐採してはならない。
2 Yは,甲山林の立木について,Xのする伐採,搬出等を阻止又は妨害して
  はならない。これに対して,Yは,甲山林について,Xを債務者とする
  下記の仮処分命令の発令を得,この命令の執行がされた(第2次仮処分)。
1 甲山林に対するXの占有を解き,○○地方裁判所執行官の保管に付する。
2 Xは,甲山林に立ち入り,立木を伐採又は搬出してはならない。
3 執行官は,上記執行を公示するため適当な措置をとらなければならない。
 そこで,Xは,第2次仮処分命令に対し,保全異議の申立てをするとともに,
 保全執行停止の申立てをした。この場合,上記仮処分の競合・抵触は
 どのように帰結するか。
Q31|手形の取立て・支払停止の仮処分
 手形を騙し取られた場合,その手形の支払を受けることを禁止する
 (支払銀行に対して手形金を支払ってはならないという命令を付加した)
 仮処分命令の申立てをすることができるか。
Q32|仮処分の流用
 Aは,YからY所有の甲土地を買い受けたものの,Yがその所有権移転登記
 手続をしない。そこで,Aは,Yを債務者,甲土地の所有者移転登記手続請求
 権を被保全権利として,処分禁止の仮処分命令を申し立て,これに基づく仮処
 分命令が発令されるとともに,甲土地について保全裁判所の嘱託による処分
 禁止の登記がされた。ところが,Aへの所有権移転登記手続が未了であること
 を奇貨として,ZがYから甲土地を買い受け,Zへの所有権移転登記手続を
 してしまった。Aが死亡し,その地位を承継したXは,本案の訴えを提起し,
 主位的請求として,Yに対しては甲土地についてA・Y間の売買を原因とする
 所有権移転登記手続を,Zに対しては甲土地について所有権移転登記抹消登記
 手続をそれぞれ求めるとともに,予備的請求として,Aが,Y・Z間の売買の
 前に,A・Y間の売買を占有取得原因として甲土地を時効取得したと主張して,
 Yに対しては甲土地について時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求め
 るとともに,Zに対しては甲土地について所有権移転登記抹消登記手続を
 それぞれ求めた。この訴訟においてA・Y間の売買契約は無効であると判断
 された場合,Xは,Zに対し,甲土地について取得時効が完成したことを
 もって上記仮処分命令の効力を主張することができるか。
Q33|仮処分の目的物の緊急換価
 係争物に関する仮処分の目的物の緊急換価について説明しなさい。

第3章 保全異議に関するQ&A
Q34|保全異議(1)――保全異議の申立て
 Xは,Yの連帯保証の下,Aに対し,100万円を貸し付けたが,その支払期日
 に弁済がなかったため,Yを債務者,上記連帯保証債務履行請求権を被保全権利
 として,Y所有の土地・建物について仮差押命令を申し立て,これに基づく仮差
 命令が発令された。これに対して,Yが保全異議の申立てをした。保全命令に対
 する異議申立て及びこれに 派生する問題について説明しなさい。
Q35|保全異議(2)――保全異議審の審理
 Aが死亡し,その共同相続人X・Yは,亡Aの遺産である土地・建物を2分の1ず
 つ相続した。ところが,Yは,無断で,上記土地建物についてY名義への所有権
 移転登記手続をしてしまった。そこで,Xは,上記土地・建物の2分の1について
 処分禁止の仮処分命令を申し立て,これに基づく仮処分命令が発令された。
 これに対して,Yは,上記土地・建物をYに遺贈するとの亡Aの遺言が存在する
 と主張して,保全異議の申立てをした。これを前提に,保全異議事件の審理の
 方法,主張や疎明の提出等について説明しなさい。また,Xから保全裁判所に
 対し,本案判決が出されるまで保全異議事件の審理の進行を見合わせてほしいと
 の意見が述べられた場合,裁判所はどのように対処すべきか。
Q36|保全異議(3)――保全異議審の終結
 Xは,Yに対し,X所有の地上・地下各1階の甲建物を賃貸した。Yは,甲建物
 を利用して中華料理店を経営していたが,甲建物地下1階部分をキャバレーに
 改造しようとしてその工事をA工務店に発注した。A工務店が上記改造工事を
 開始したことから,Xは,Yが無断増改築禁止の特約に違反したと主張して,
 上記賃貸借契約を解除した上,工事禁止並びに甲建物について占有移転禁止の
 仮処分命令を申し立て,これに基づく執行官保管,工事禁止並びに占有移転禁
 止の仮処分命令が発令された。これに対して,Yは,甲建物地下1階でキャバレ
 ーを経営したいとXに打診した際,Xは,甲建物地下1階を改造することを承諾
 してくれたと主張し,上記仮処分命令に対する異議申立てをした。これを前提
 に,保全命令に対する異議の審理の終結方法,決定,執行停止の裁判及び取下
 げ等について説明しなさい。

第4章 保全取消しに関するQ&A
Q37|保全取消し(1)――取消しの事由
 Xは,Yに対し,X所有の甲土地を,建物所有目的の約定で賃貸した
 (無断増改築禁止の特約あり)が,その後,Yが甲土地上の建物について改築
 工事を開始したため,Xは,無断増改築禁止の特約に違反したと主張して,
 上記賃貸借契約を解除した上,工事続行禁止の仮処分命令を申し立て,
 これに基づく仮処分命令が発令された。以下の事由がある場合,Yは,
 上記仮処分命令の取消しを求めることができるか。
(1)上記仮処分命令が発令された後,Xが一向に本案の訴えを提起しない場合
(2)Xが本案の訴えの一審と控訴審のいずれも敗訴したにもかかわらず,なおも
  上告して争っている場合
(3)Yは,甲土地上の建物を自宅兼店舗として使用していたが,上記仮処分命令に
  よる改築工事の中断の結果,生活上の不便はもとより,収入の途も閉ざされ
  たため重大な損害を被っている場合
Q38|保全取消し(2)――本案の訴えの成否
 Xは,衣料品販売店を経営するYに対して140万円の貸金債権を有しているが,
 支払期日にその弁済がなかったため,Yを債務者,上記貸金債権を被保全権利
 として,Y所有の建物について仮差押命令を申し立て,これに基づく仮差押
 命令が発令されるとともに,上記建物について保全裁判所の嘱託による仮差
 押えの登記がされた。これに対して,Yは起訴命令を申し立て,これに基づく
 起訴命令が発令された。そこで,Xは,上記起訴命令において定められた期間
 内に民事調停の申立てをした。この申立ては適法な起訴といえるか。
Q39|保全取消し(3)――本案の訴えの成否
 X(妻)は,Y(夫)を債務者,Xが将来提起する離婚訴訟において離婚が
 認められることに伴う慰謝料・財産分与請求権を被保全権利として,Y所有の
 土地について仮差押命令を申し立て,これに基づく仮差押命令が発令された。
 これに対して,Yの申立てに基づく起訴命令が発令され,その命令はXに送達
 された。この送達時点で,すでにYからXに対する離婚の訴えが提起されて
 いた。Xは,上記起訴命令の送達を受けた時から所定期間内に,Yが提起した
 離婚の訴えにおいて離婚が認容される場合に備えて,X自らはYに対する離婚
 の訴えを提起せずに財産分与の申立て(附帯処分)をした。その後,Xは,
 提起の離婚訴訟事件が係属したこと及び財産分与の申立て(附帯処分)をした
 ことの証明書を保全裁判所に提出した。このような事情の下,Yは,Xが起訴
 命令を遵守しなかったと主張して,保全命令取消しの申立てをした。
 この申立ては認められるか。
Q40|保全取消し(4)――事情の変更
 Xは,甲土地にされたY所有名義の登記が不実のものであり,Xが所有権者で
 あると主張して,これを保全するため,Yを債務者として,甲土地について
 処分禁止の仮処分命令を申し立てたところ,「Yは,甲土地について譲渡並び
 に質権,抵当権及び賃借権の設定その他一切の処分をしてはならない」との
 仮処分命令が発令された。その後,Xは,Yに対し,甲土地について所有権
 移転登記抹消登記手続を求める本案の訴えを提起したが,審理の結果,Xの
 甲土地に対する所有権の存在は認められないとして,請求棄却の判決が言い
 渡された。そこで,Yは,上記仮処分命令の取消しの申立てをしたが,Xから
 上記判決を不服とする控訴があったため,その訴訟は控訴審に係属中である。
 この場合,Yの上記仮処分命令取消しの申立ては認められるか。
Q41|保全取消し(5)――特別の事情
 特別の事情による仮処分命令の取消しについて説明しなさい
 (保全異議との関係についても触れること)。
Q42|保全取消し(6)――特別の事情
 Yは,X所有の甲土地について借地権を有していると主張するとともに,
 甲土地上にYの居宅兼店舗を建築しようとして,その工事をA工務店に請け負
 わせた。A工務店は,建築資材を甲土地上に運搬して,建築工事を開始した。
 このため,Xは,Y主張の上記借地権はすでに消滅していると主張して,
 建築工事禁止の仮処分命令を申し立て,これに基づく仮処分命令が発令された。
 その後,Xは,Yに対し工作物撤去・甲土地明渡しを求める本案の訴えを
 提起した。これに対して,Yは,A工務店がせっかく切込みを終えた木材が
 このままでは腐朽するおそれがあり,その費用の支払等多大な損害を被ること
 を理由として,上記仮処分命令の取消しの申立てをした。この申立ては認めら
 れるか。

第5章 保全抗告に関するQ&A
Q43|許可抗告の申立て
 X新聞販売店は,Y新聞社から新聞販売契約を解除するとの意思表示を受けた
 ことから,その無効を主張して,解除の意思表示の効力発生の停止及び新聞の
 供給継続を求める仮処分命令を申し立て,これに基づく仮処分命令が発令され
 た。これに対して,Y新聞社は,保全異議の申立てをしたところ,その審理の
 結果,上記仮処分命令は認可されず,取り消された。そこで,X新聞店は,
 高等裁判所に保全抗告の申立てをしたが,棄却されたため,抗告許可の申立て
 をした。この申立ては認められるか。

第6章 仮差押えの執行に関するQ&A
Q44|動産仮差押命令の執行
 Xは,雑貨店を経営するYに対して500万円の貸金債権を有しているが,
 YにはX以外にも多数の債務があり,また,Y振出しの約束手形が不渡りと
 なったことから,調査してみると,Yがその所有財産を第三者に売却しようと
 していることが判明した。そこで,Xは,Yを債務者,上記貸金債権を被保全
 権利として,Y所有の動産について仮差押命令を申し立て,これに基づく仮差
 押命令が発令された。その後,Xは,S地方裁判所執行官に対し,Yの動産に
 ついて仮差押執行の申立てをしたが,これを察知したYは,T地方裁判所の
 管轄区域内に転居してしまった。この場合,Xは,S地方裁判所が発令した
 仮差押命令に基づいて,T地方裁判所執行官に対し,仮差押執行の申立てを
 することができるか。
Q45|債権仮差押命令の執行
 X会社は,Y会社が振り出した額面800万円の約束手形を所持している。
 X会社は,満期に上記手形を支払場所に呈示したところ,契約不履行を理由と
 してその支払を拒絶された。他方,Y会社は,上記手形の不渡りによる銀行
 取引停止処分を免れるため,A銀行の加盟するA銀行協会(手形交換所)に
 提供させる目的で上記手形金額と同額の金員をA銀行に預託した。Y会社は,
 会社以外にも相当の手形を振り出している上,営業不振が続いているため不渡
 手形を再発しかねず,倒産のおそれがある状態となっている。X会社は,
 Y会社に対し,上記手形金の支払を求める本案の訴えを提起するため
 準備中であるが,上記預託金をY会社に取り戻されると,上記手形金の支払を
 受けることは著しく困難となることが予想されると主張して,Y会社を債務者,
 A銀行を第三債務者,上記手形金債権を被保全権利として,Y会社がA銀行に
 対して有する上記預託金返還請求権について仮差押命令を申し立てるとともに,
 第三債務者A銀行に対し,上記預託金返還請求権について民事保全法50条5項,
 民事保全規則41条2項に基づいて,民事執行法147条1項,民事執行規則135条1項
 に規定する事項について陳述を求める催告の申立てをした。保全裁判所は,
 X会社の仮差押命令の申立てを認容し,3日以内に担保を提供すべき旨の命令を
 発令したところ,X会社は,国庫債券をもって担保を立てたので,仮差押命令
 と民事執行法147条1項による催告が発せられた。これに対して,Y会社は,
 上記仮差押命令による解放金額を供託した。X会社は,上記解放供託金から
 上記手形債権の満足を受けたいが,その手続はどうなるか。
Q46|仮処分命令の執行期間の起算点
 Xは,Y会社に対して賃金債権を有するが,これを保全するため,Y会社を
 債務者として,仮処分命令を申し立てたところ,「Y会社は,Xに対し,
 平成23年4月から平成24年2月まで毎月2日限り20万円を仮に支払え」とする
 定期金の給付を命ずる仮処分命令が発令された。そこで,Xは,債務名義と
 みなされる上記仮処分命令に基づいて,うち平成23年6月2日を支払期限と
 する定期金を請求債権として,その支払期限から2週間以上を経過した
 同年7月2日,Y会社がZ銀行に対して有する
 預金債権について差押命令の申立てをした。この申立ては認められるか。
Q47|強制管理
 Xは,Y所有の土地について仮差押命令の発令を得て,その執行として強制
 管理の申立てをした。これに対して,保全執行裁判所は,強制管理開始決定を
 するとともに,その管理人として執行官Aを選任した。これを前提に,
 下記事項について説明しなさい。
(1)強制管理の方法による仮差押えの執行の申立て
(2)強制管理を求めるに適する場
(3)強制管理の対象となる財産
Q48|仮差押えによる時効中断効
 Xは,Yに対して2750万円の貸金債権を有しているが,うち1000万円を被保全
 権利として,Y所有の不動産,覆い鍬イ砲弔い堂昇慌〔仁瓩鮨修稽て,
 これに基づく仮差押命令が発令されるとともに,それらの不動産について保全
 裁判所の嘱託による仮差押えの登記がされた。その後,Xは,Yに対し,
 上記貸金の返還を求める本案の訴えを提起して勝訴判決を受け,その判決は
 確定した。そこで,Xは,仮差押えをした不動産 Ν△砲弔い洞制競売の
 申立てをし,その手続において配当を受けた。なお,不動産ないしイ
 ついては強制競売の申立てはされず,仮差押えがされたままであった。
 上記配当から約11年が経過した後に,Yは,Xに対し,上記貸金債権は10年の
 経過によって時効消滅したと主張して,債務不存在確認の訴えを提起した。
 これに対して,Xは,上記貸金債権のうち上記仮差押命令の被保全債権
 1000万円については,上記仮差押えによって時効が中断していると主張した。
 この主張は認められるか。
Q49|仮差押執行の取消しに伴う時効中断効消滅の成否
 Xは,Yの連帯保証の下,A会社に対し,500万円を貸し付けた。しかし,その
 支払期日に弁済されないまま,A会社は倒産してしまった。そこで,Xは,Yを
 債務者,上記連帯保証債務履行請求権を被保全権利として,Y所有の建物について
 仮差押命令を申し立て,これに基づく仮差押命令が発令されるとともに,上記建物に
 ついて保全執行裁判所の裁判所書記官の嘱託による仮差押えの登記がされた。
 しかし,Yが仮差押解放金を供託したため,上記仮差押命令の執行は取り消された。
 Xは,この執行取消しから5年以上を経過した後に,Yに対し,上記連帯保証債務
 の履行を求める本案の訴えを提起した。これに対して,Yは,仮差押執行が取り
 消されたことによって上記仮差押えによる時効中断効も消滅し,5年の経過によって
 上記連帯保証債債権(商事債権)の消滅時効が完成したと主張した。この主張は
 認められるか。
Q50|本執行移行後の仮差押えの取下げ
 Y宅の新築工事の下請人Xは,元請人A会社に対して500万円の請負代金債権を
 有すると主張して,A会社を債務者,Yを第三債務者,上記請負代金債権を
 被保全権利として,A会社が上記新築工事の発注者Yに対して有する2000万円
 の請負代金債権のうち請求債権額に満つるまでの債権について仮差押命令を
 申し立て,これに基づき発令された仮差押命令がYに送達された。その後,
 Xは,被保全債権の一部である300万円についてA会社に対する債務名義を得た
 ことから,これを請求債権として,上記被差押債権の一部である同金額について
 差押命令を得,その命令はY及びA会社に送達されたので,Xは,取立権を取得
 した。その後,Xは,上記仮差押命令の担保について取消決定を得るため,上記
 仮差押命令の申立て及びその執行の申立てを取り下げた。他方,Yは,中断して
 いたY宅の新築工事を続行してもらうため,上記差押命令の送達を受けるまでの
 間に,A会社の下請けとして工事を引き継いだ代理受領権者への弁済を含めて,
 A会社に対して負担していた請負代金債権をすべて弁済した。Yはこの弁済を
 もってXに対抗することができるか。
Q51|本執行への移行
 Xは,Yに対し,損害賠償請求権(交通事故)を有しているが,これを保全する
 ため,Yを債務者として,Y所有の土地・建物(以下「本件不動産」という)
 について仮差押命令を申し立て,これに基づく仮差押命令が発令されるとともに,
 本件不動産について保全裁判所の嘱託による仮差押えの登記がされた。その後,
 Xは,本案の訴えにおいて勝訴判決を得た(後に確定した)ので,
 これを債務名義として本件不動産について強制競売を申し立て,これに基づく
 強制競売手続開始決定がされたものの,その開始決定は,無剰余を理由として
 民事執行法63条2項に基づいて取り消された。他方,Yは,上記仮差押登記後
 に本件不動産をZに譲渡しており,Zへの所有権移転登記がされている。
 Xは,上記強制競売手続が取り消された後,上記仮差押登記の抹消登記が
 されていなかったことから,債務者をYとして,本件不動産について再び
 強制競売の申立てをした。この申立ては認められるか。
Q52|違法な仮差押命令による損害賠償責任
 当初から被保全権利が存在しなかったため,不動産仮差押命令の申立て及び
 その執行が違法であって債務者に対する不当行為となる場合,債権者が
 賠償すべき「損害の範囲」はどうなるか。
Q53|第三債務者の債権者に対する対抗の可否
 Z会社の従業員Yは,平成24年12月限りZ会社を退職し,退職金1500万
 円が支給されることになり,退職に先立ち,Z会社に対して上記退職金を
 A銀行のY名義の預金口座に振込みの方法で支払うことを依頼した。
 Z会社は,同月26日,B銀行○○支店に対し,オンラインシステムを通じて,
 上記退職金がYの口座に同月28日に振込入金されるよう依頼した。他方,
 Xは,Yに対して損害賠償請求権を(交通事故)を有するところ,Yを債務者,
 Z会社を第三債務者,YがZ会社から支給される給与等の債権を被保全権利
 として,仮差押命令の申立てをした。同月26日,仮差押命令が発令されその
 仮差押命令は,同月27日,Z会社に送達された。Z会社は,Yが同月31日付で
 退職となっており,Yに対する給与及び退職金は支払済みであって,
 上記仮差押命令に係る債権は存在しない旨を記載した同月27日付陳述書を
 裁判所に提出した。同月28日,Yの口座に上記退職金が振込入金された。
 Xは,YがZ会社から支給される同月31日に支払期の到来した上記退職金の
 4分の1について債権差押命令を申し立て,これに基づく債権差押命令が発令
 され,その命令は,平成25年1月8日,Z会社に送達された。そこで,Xは,
 Z会社に対し,取立権に基づいて,差押相当額375万円の支払を求める訴えを
 提起した。この場合,Z会社は,上記振込みによる弁済をもってX
 (仮差押債権者)に対抗することができるか。

第7章 仮処分の執行に関するQ&A
Q54|代替執行可能な時期
 Xは,YがX所有の乙土地上に権限なく甲建物を所有していることから,
 Yを債務者,乙土地の所有権を被保全権利として,甲建物収去・乙土地明渡し
 の断行の仮処分命令を申し立てたところ,これが認容され,「仮処分命令送
 達の日から10日以内に甲建物を収去して乙土地を仮に明け渡せ」との仮処分
 命令が発令された。これに対して,Yが保全異議の申立てをするとともに
 上記仮処分命令執行停止の申立てをしたため,保全執行裁判所は,担保を
 提供させてこれを認めた。そして,Yの保全異議の申立てについて審理した結果,
 上記仮処分命令は認可された。この場合,Xは,いつまでに代替執行に着手すべきか。
Q55|不作為を命ずる仮処分の執行
 Xは,Yに対し,X所有の甲土地を,普通建物所有目的の約定で賃貸した
 (普通借地約款)。ところが,Yは,Y所有の乙土地と借地(甲土地)上の
 木造2階建てアパートを取り壊し,その跡の甲・乙土地上に鉄筋コンクリート
 造り5階建てアパートを建築しようとしている。このため,Xは,Yに対し,
 用法違反を理由として,甲土地に係る建築工事を中止するよう申し入れたが,
 Yはこれを無視して工事を進行させている。そこで,Xは,YとZ会社
 (建築工事の請負業者)を債務者,建物収去・甲土地明渡請求権を被保全
 権利として,上記建築工事差止めの仮処分を申し立て,これに基づく仮処分
 命令が発令された。しかし,Y及びZ会社は,上記仮処分命令を無視して
 上記建築工事を進め,すでに2階部分の鉄骨組立工事の段階に至っている。
 この場合,Xは,どのように対処すべきか。
Q56|占有移転禁止の仮処分の執行
 Xは,Yに対し,X所有の甲土地を,普通建物所有目的の約定で賃貸した
 (普通借地契約)。ところが,Yは,無断で甲土地上の木造2階建て建物
 の一部を取り壊し,その跡に鉄筋コンクリート造り4階建てビルを建築する
 ための基礎工事を開始した。このため,Xは,Yに対し,用法違反を理由
 として,上記建築工事を中止するよう申し入れたが,聞き入れられなかった。
 そこで,Xは,Yを債務者,建物収去・甲土地明渡請求権を被保全権利と
 して,占有移転禁止の仮処分命令を申し立て,これに基づく仮処分命令が
 下記のとおり発令され,その執行がされた。しかし,Yは,上記建築工事を
 止めることなく継続している。この場合,Xは,執行官に対し,Yの上記
 違反行為を除去させ,原状回復をさせることができるか。
【仮処分命令(物件目録は省略)】
1 債務者は,別紙物件目録記載の土地及び建物に対する占有を他人に移転し,
  又は占有名義を変更してはならない。
2 債務者は,上記物件の占有を解いて,これを執行官に引き渡さなければならない。
3 執行官は,上記物件を保管しなければならない。
4 執行官は,債務者に上記物件の使用を許さなければならない。
5 執行官は,債務者が上記物件の占有の移転又は占有名義の変更を禁止されている
 こと及び執行官が上記物件を保管していることを公示しなければならない。
Q57|仮処分の執行と不当利得
 XとYらは,化粧品会社の代表者であった亡Aの共同相続人である。亡Aは,
 全財産をXに相続させるとの遺言を残していた。その後,XとYらは,
 Yらがそれぞれ6000万円を,Xがその余の全財産を取得するとの遺産分割協議
(以下「本件遺産分割協議」という)を成立させた。Xの取得する財産の中には
 亡Aの有していた商標権が含まれていた。その後,Yらは,本件遺産分割協議
 は錯誤によって無効であり,遺留分減殺請求によって上記商標権の持分を取得
 したと主張して,Xを債務者,上記商標権の持分権を被保全権利として,商標
 権処分禁止の仮処分命令を申し立て,これに基づく仮処分命令が発令された
 (以下「本件仮処分命令」という)。しかし,Xは,本件仮処分命令に従わず,
 第三者に上記商標権の使用を許諾したため,Yらは,本件仮処分命令の保全
 執行として間接強制決定の申立てをしたところ,Xが本件仮処分命令記載の
 義務に違反したときは,Yらに対し,間接強制金を支払えとする間接強制決定
 が発令された。しかし,Xは,なおも本件仮処分命令に従わず,その結果,
 Yらに合計1億8000万円の間接強制金が支払われた。Yらは,Xに対し,
 本件仮処分命令に係る本案の訴えを提起したが,その控訴審において,上記
 遺言分割協議は有効であり,Yらは,上記商標権について持分を有しない
 との判決が言い渡され,これが後に確定した。そこで,Xは,本件仮処分命令
 の事情変更による取消しを申し立て,その旨の取消決定を得た上で,間接強制
 決定の取消しを申し立て,その旨の取消決定を得た。その後,Xは,上記間接
 強制決定に基づいて取り立てられた間接強制金1億8000万円は法律上の原因を
 失い,不当利得にあたると主張して,Yらに対して同額の返還を求める訴えを
 提起した。Xの主張は認められるか。
Q58|満足的仮処分の執行後における目的物の滅失
 Xは,X所有の甲建物を権原なく占有するYに対し,所有権に基づく甲建物の明渡し
 を求める訴えを提起した。その訴訟の係属中,Xは,Yを債務者,甲建物の明渡請求
 権を被保全権利として,満足的仮処分命令を申し立て,これに基づく仮処分命令が
 発令されるとともに,その執行として甲建物の明渡しを受けたが,その直後に甲建物
 を取り壊し,滅失させた。Xは,上記本案の訴えにおいて,甲建物滅失の事実を斟酌
 することなく,本案請求の当否について判断されるべきであると主張した。
 Xの主張は認められるか。
Q59|承継人による仮処分執行の効力の主張
 Aは,YからY所有の甲建物を買った。ところが,YがAへの所有権移転登記手続
 を行おうとしないため,Yを債務者,上記所有権移転登記手続請求権を被保全権利
 として,処分禁止の仮処分命令を申し立て,これに基づく仮処分命令が発令される
 とともに,甲建物について保全裁判所の嘱託による処分禁止の登記がされた。その後,
 Yは,Zのために甲建物について賃借権を設定し,その登記をした。その後,
 Aから甲建物を買ったがXが,
 上記処分禁止の仮処分の効力を主張するには,承継執行文の付与を要するか。

第8章 仮処分の効力に関するQ&A
Q60|仮処分の効力(1)――当事者恒定
 Xは,Yから,Y所有の土地・建物を代金500万円で買った。その契約内容は,
 支払期日における代金支払と同時に上記土地・建物について所有権移転登記手続
 を行うというものであった。しかし,Xが支払期日に上記売買代金500万円を
 支払ったにもかかわらず,Yは,上記土地・建物について所有権移転登記手続
 を行おうとしない。そこで,Xは,Yを債務者,上記所有権移転登記手続請求権
 を被保全権利として,上記土地・建物について譲渡並びに質権,抵当権及び賃借権
 の設定その他一切の処分を禁止する旨の仮処分命令を申し立て,これに基づく
 仮処分命令が発令されるとともに,上記土地・建物について保全執行裁判所の
 裁判所書記官の嘱託による処分禁止の登記がされた。同時に,Xは,Yに対し,
 上記土地・建物の所有権移転登記手続を求める訴えを提起し,その勝訴判決を
 得た(後に確定した)。ところが,上記土地・建物について,売買を原因とする
 YからZへの所有権移転登記手続がされていることが判明した。この場合,
 上記土地・建物についてされたZ名義への所有権移転登記はどうなるか。
Q61|仮処分の効力(2)――当事者恒定
 Xは,平成23年12月1日,Aに対し,X所有の甲建物を賃貸した。以後,Aは,
 甲建物で飲食店を経営していたが,平成25年1月8日,Yに対し,飲食店の営業権
 とともに甲建物の賃借権を譲渡したことから,Yが甲建物を占有するに至った。
 これに対して,Xは,上記賃借権譲渡について承諾していないと主張して,
 Aに対し,無断譲渡を理由に,X・A間の賃貸借契約を解除するとの意思表示を
 するとともに,Yに対し,甲建物の明渡しを求める訴えを提起した。そして,
 Xは,この訴訟係属中,Yを債務者,甲建物の明渡請求権を被保全権利として,
 Yに使用を許す執行官保管の占有移転禁止の仮処分命令を申し立て,
 これに基づく仮処分命令が発令されるとともに,その執行がされた。
 ところが,Yは,Y・A間の賃借権譲渡契約を解除するとの意思表示をした
 上でAに甲建物を引き渡し,以降,甲建物の現実の占有をしていない。
 この場合,Yは,甲建物の占有喪失を主張することができるか。
Q62|仮処分の効力(3)――禁止行為の範囲
 所有権移転登記手続請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分命令の発令後
(保全裁判所の嘱託による処分禁止の登記済み)に,同仮処分以前において
 設定されていた根抵当権を譲渡することは,上記仮処分命令に違反する処分行為に
 あたるか。

第9章 書記官事務に関するQ&A
Q63|保全命令・保全執行における書記官事務(1)
 下記事項における書記官事務について説明しなさい。
(1)受付
(2)審理(期日呼出し,調書等)
(3)裁判(担保,解放金,決定書の作成)
Q64|保全命令・保全執行における書記官事務(2)
 下記事項における書記官事務について説明しなさい。
(1)執行(保全仮登記の更正手続)
(2)付随申立て(保全執行の取消し,起訴命令,担保の変換・取戻し)
(3)保全異議・保全取消し


第3編 審判前の保全処分に関するQ&A

Q65|財産管理者選任等の保全処分
 Aは高齢者であり,現在は認知症により入院・退院を繰り返している。
 Aは過去に貯蓄から不必要な大金を
 下したりしたことがある。このような場合,Aの財産を確保するために,
 どのような措置をとったらよいか。
(1)誰がどのような審判を申し立てたらよいか。高齢者の判断能力に応じて,
  どのような審判類型があるか。後見開始・保佐開始・補助開始の審判の
  それぞれについて,判断能力の程度,申立権者等の要件について説明せよ。
(2)どのような保全処分を申し立てたらよいか。財産管理者の候補者としては,
  どのような者が望ましいか。
(3) 財産管理者にはどのような権限があるか。
Q66|財産管理者の後見等を受けるべきことを命ずる保全処分
 Aが振り込め詐欺や悪徳商法に騙されて所有財産の放出に係る契約を締結する
 おそれがあるような場合には,どのような措置をとったらよいか。
(1)後見命令の保全処分はどのような場合に発令することができるか。
  保佐命令・補助命令はどうか。
(2)後見(保佐・補助)命令の保全処分の審理手続はどのようになされるか。
(3)財産管理者の後見等を受けるべきことを命ずる保全処分によって
  どのような効力が認められるか。
Q67|任意後見人の職務執行停止の保全処分
   信頼して選任したはずの任意後見人Bが被後見人の預金を使い込むなどの
   不正が発覚した場合はどうか。また,Bに積極的な不正行為はないものの,
   任意後見監督人の財産状況の調査等に協力しない場合はどうか。
(1)本案事件としてどのような審判を申し立てることができるか。
(2)任意後見人の職務執行停止の保全処分を申立てることができるか。
(3)職務代行者選任の保全処分はどうか。
Q68|任意後見監督人の職務執行停止と職務代行者の選任の保全処分
   裁判所から選任された任意後見監督人が,被後見人の財産を任意後見人
   が使い込んでいる不正行為の事実
   を知りながら,それについて何らの監督措置を講じない。
(1)本案事件としてどのような審判を申し立てることができるか。
(2)任意後見監督人の職務執行停止の保全処分はどうか。
(3)職務代行者選任の保全処分はどうか。
Q69|人事訴訟の保全処分と民事保全処分
(1)離婚訴訟の前に,離婚で認められる親権者指定や子の監護に関する処分
 (子の引渡し・養育費など)あるいは財産分与請求権を本案として民事保全処
 分の申立てをすることができるか。
(2)それは通常仮処分か特殊仮処分か。
(3)人事訴訟の保全処分の「本案」は何か。
(4)できるとすれば管轄裁判所はどこか。
(5)離婚訴訟等の附帯処分等とは何か。
(6)審判前の保全処分の申立てはどうか。
(7)人事訴訟法上の保全処分と審判前の保全処分とのすみわけ。
Q70|債権仮差押えの保全処分
 家事審判事件には,金銭や金銭債権の支払を命ずる本案審判が少なからず存在する。
 そこで,債権仮差押えの必要が生ずる場合がある。
(1)金銭の支払が命じられる本案審判にはどのような類型のものがあるか。
(2)離婚に伴う財産分与審判を本案とする場合,仮差押えの方法を選択すべき事案
  としてはどのような場合があるか。
(3)仮差押えの保全処分の要件と手続を説明せよ。
(4)債権に対する仮差押えの執行はどのように行われるか。
Q71|係争物に関する仮処分
 家事審判事件には,不動産や物の所有権移転などの給付命令を伴う本案事件が
少なからず存在する。これに伴い必要となるのが係争物に関する仮処分であるが,
 これには処分禁止の仮処分と占有移転の仮処分の2類型がある。
(1)係争物に関する仮処分が必要となりうる審判事件にはどのようなものがあるか。
(2)係争物関係事件において,不動産の処分禁止を求める方法を選択すべき事案
  としてはどのような場合があるか。
(3)係争物に関する仮処分の要件と手続を述べよ。
(4)係争物に関する仮処分の執行について説明せよ。
Q72|仮の地位を定める仮処分
 現在別居中の相手が離婚に応じないので,離婚調停を申し立て,それでも離婚が
 成立しなければ離婚訴訟を提起したいが,
 その前に下記の点について当面の課題を確保しておきたい。
(1)毎月の婚姻費用あるいは養育費の仮払いを求める仮処分を申し立てることができるか。
(2)結婚の際の持参物である家財道具や衣類等の引渡しに応じないので,
  それらの引渡しを求める仮処分を申し立てることができるか。
(3)子の引渡しを求める仮処分を求めることができるか。人身保護請求との関係はどうか。
Q73|審判前の保全処分等の執行停止・執行処分取消し
 審判前の保全処分に対し即時抗告が提起された。
(1)執行は当然に停止されるか。執行停止の裁判が必要か。
  保全処分の執行の停止が必要なのはどのような場合か。また,その要件は何か。
(2) 執行処分の取消しはどうか。
Q74|審判前の保全処分の取消し
 保全処分の審判が確定した。
(1)審判前の保全処分の取消しはどのような場合に行うのか。
(2)審判前の保全処分を取り消す審判の効力について説明せよ。
Q75|財産の管理者の権限外行為許可
 審判前の保全処分として財産の管理者が選任された。
(1)財産の管理者の権限外行為としてはどのようなものがあるか。
(2)その手続について説明せよ。
Q76|財産の管理者に対する報酬付与
 審判前の保全処分によって選任された財産の管理者が財産管理の職務を執行した。
(1)報酬を求めたい場合,どのような申立てをすればよいか。
(2)その手続はどうか。
Q77|保全処分取消審判の原状回復処分
 仮の地位を定める仮処分である金銭支払や物の引渡し等の執行が完了したが,
 その後仮処分が事情変更により取り消された。
(1)その場合の原状回復の方法としてどのようなものがあるか。
(2)その手続はどうか。
Q78|特別養子縁組成立審判の際の養子監護者選任処分
 特別養子縁組成立審判があり,現在試験養育期間中である。
(1)どのような場合に養子となるべき者の監護者選任の保全処分をすることができるか。
(2)その申立手続・審理手続はどうか。
(3)その効力はどうか。
Q79|職務執行停止・職務代行者選任の保全処分
(1)審判前の保全処分の第3類型である職務執行停止・職務代行者選任の
  保全処分ができる審判類型のはどのようなものがあるか。
(2) その申立手続・審理手続・事後手続について説明せよ。
Q80|児童つきまとい等禁止命令
 保護者による虐待があるとして,一時保護が加えられている。
(1)どのような要件の下に保護者に対し児童へのつきまとい等を禁止する保全処
  分をすることができるか。
(2)その申立手続・審理手続はどうか。
(3)その効力はどうか。

事項索引



Copyright © SEIRIN SHOIN All Rights Reserved.